市場
――もふもふの町で迎えた最初の朝
木を組んだ台に布団を敷いただけのベッドの寝心地は悪くはなかったけど……
「ふあぁぁ、あまり眠れなかった……」
夜中、元飼い猫のチョコとミーコが入れ替わり立ち替わり僕の部屋を覗きに来た。
その度に彼女らが僕の布団に潜り込んで来るのではという淡い期待と、本当に入ってくらどうしようというドキドキ感で眠れなかったのだ。
12歳のチョコと一緒の布団とか、やばいでしょう!
16歳のミーコとは…… どうなっちゃうか分かりません!
「おはようケンちゃん! 今日はいい朝だね!」
ダイニングテーブルにチョコが座っていた。
ミーコは……
相変わらず物陰から僕の様子を見ている。
「腹減ったな…… 朝飯どうする?」
「それでは市場へご案内しましょうか?」
ナビゲーターのイオリさんがいつの間にか来ていた。
彼女は『現世とこちらの世界の間』に存在しているらしい。
天国の門番みたいな感じだろうか?
――市場に来た。
色とりどりの野菜や果物、肉や魚が所狭しと並べられている。
「やあやあ、新しい勇者様。もふもふの町へようこそ!」
魚屋の店主が声をかけてきた。
彼は30代後半ぐらいの茶髪の男性。もちろん猫耳。
「どうです? 活きの良いのが入っていますよ!」
「あー、おじさん。悪いけど私たち誰も料理できないんだよねー、あはは……」
チョコが耳を掻きながら言った。
そうなのか…… チョコはともかくミーコも料理下手とは……
まあ仕方がない。
現世では上げ膳据え膳で僕が準備していたものな。
「やあやあいらっしゃいませ、新しい勇者様。今朝絞めたばかりの鶏肉がありますよ!」
ブルーな目をした肉屋の店主が声をかけてきた。
「ごめん。この娘たち料理ができないんだ―― 痛っ!」
チョコとミーコに足を蹴られてしまった。




