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プロローグ

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「じゃあ、お先に失礼しまーす」


 17時30分、今日も定時に退勤する。


「あれ? 吉原さんご機嫌ですねー。今日は誰かさんとデートですか?」


 受付の伊織さんがいつもの調子でからかってくる。

 伊織さんは26歳独身女性。

 ふくよかな胸が特徴の、可愛らしい女の子だ。


「またまたー、伊織さん分かってるくせにぃー。家に帰るんですよ! じゃあ!」


 僕は手を振って市役所を後にする。

 僕は吉原健太、19歳。彼女なし。

 高校卒業後、地方公務員試験を何とかパスし、市役所勤務の2年目。


 市役所内でも様々な部署があるが、僕の割り当ては誰にでもできそうな軽作業。

 つまりは出世コースから外れたポジションに収まっているということだ。


 出世したいかどうかと問われると…… 


 ……僕は「定時に帰ることができるならばぜひ!」と言うだろう。


 まあ、こんな僕に『出世したい?』と訊いてくるような上司は皆無だから安心してくれ。

 僕がそれほどまでに定時に帰りたい理由は―― 


 ――猫の待つ家に早く帰りたいから――


 ただそれだけの理由だ。


 笑いたい奴は笑え。

 呆れたい奴は呆れろ。

 あっ、でも(さげす)まないで!

 僕は世界中の誰よりも猫を愛しているのだから!


 仕事帰りにいつも立ち寄るドラッグストアにて、黄金の皿おかか味の小分けパックを購入。

 家には3匹の猫たちが僕の帰りをしっぽを長くして待っているだろう。

 あっ、これね。僕なりのユーモア。

 『首を長くして』の『首』をしっぽに置き換えているんだ。ははは……


 自宅のある片側2車線の国道は、交通量が多くてトラックや乗用車がひっきりなしに走っている。

 だからうちの猫たちは完全室内飼いだ。

 時々、猫の死体が道路脇に放置してあるけれど、ドライバーをのろい殺したくなるぞ。

 そんなことを考えながら歩いていると……


「にゃ――――」


 猫の鳴き声が道路脇の方から聞こえてきた。

 いやな予感がする。

 歩道と車道を分ける背の低い街路樹を掻き分けて中を覗くと……


「にゃーん!」


 いた!

 しかも2匹の猫が…… どちらも光の加減だろうが銀色の毛並みだ。

 1匹はかなり小さな仔猫だ。親子だろうか?

 仔猫が大型トラックの音や振動でパニックになっている。

 親猫が何とか街路樹の茂みに引き込もうとしているのだが、仔猫は車道に出てしまっていてなかなかタイミングが合わないようだ。


「くそったれ!」


 僕は後先考えずに身を乗り出し、仔猫を両手に収める。

 そのとき、右車線の軽自動車が右折のために停車し、

 後続車が左車線にグイッと膨らみ、

 左車線を走っていたトラックが路側帯に避ける。


 そして――――


 トラックが僕らに向かって突っ込んできた。


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