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はじまり はじまり
三十路で処女だと、世の中に対してひどく居心地が悪い。
だれかに迷惑をかけましたか?
私が処女であることであなたに生じるデメリットは何ですか?
それはもう声高に問いたい。知り合いにも、知らない人にも。
でもできない。できません。おそろしいもの。私が処女だとバレた時の、彼らの反応を想像すると。
そのおそろしさ、いやおそろしさに似た気まずさは、一生消せないだろう。私も、相手も。
四半世紀をとっくに過ぎてなお、男性経験のない女。
これは私の由々しき事態で、誰にも迷惑をかけていないはずなんだけれど、強いて言うなら国に迷惑かけてるか。出生率に響くか、このままだったら。
ああ。誰かに操を捧げたい。が、今さら感がその願望をさいなむ。
嘘。ごまかしてみたけれど、結局は、抱いてくれようとしている人に「わたし、はじめてなの。この年で」って言うのが恥ずかしいだけ。
だから私は、私の肉体は、未だ戦い知らずの神秘の楽園なのだ。
有刺鉄線でがんじがらめの鄙びた楽園。急募、男性スタッフ。けっして雇いません。
不戦勝、三十年。
もうすぐ、三十一年。