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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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医療物資緊急輸送

「大臣、緊急輸送の要請が入りました」


 その時レイが報告をもたらした。


「大アルプス山脈の街で疫病が発生。軍が出動し封鎖には成功しましたが治療のための機材が足りません。早急に病院列車の派遣を要請してきました」


 鉄道網の充実と共に、医療体制をよくするため必要な機材を積み込み医療品のw乗せた貨車を増結出来る病院列車が厚生省の所有で国鉄が運用する形で配備されていた。


「すぐに移動できないのか?」

「この混乱で、回復ダイヤの為に運転士の手配が付きません」


 テレポーターが使用不能になり、再び鉄道を復活させようとしたが、運転士が不足していた。

 配置転換されていた運転士を呼び戻しているが、増発に次ぐ増発で復帰する運転士を片っ端から投入しているため、予備の運転士が足りなかった。

 突発的な緊急列車に送り出せる運転士が少ない。


「仕方ない、僕が運転しよう」

「テルが!」

「本免許は取れなかったけど、一応運転できるよ」


 営業列車では無く、練習を兼ねて業務用などで運転できる免許がリグニアでは設定されており、テルはそれを持っていた。

 お客を乗せない臨時列車や非常事態ならば運転できる。


「では、運転に向かう」

「大臣の仕事があるでしょう」

「それならガンツェンミュラーに任せる」

「大臣の仕事を放棄するのですか」

「大臣の仕事なんて人事を行うだけだよ。適切な人材を配置したらそれで終わり。後hあお飾りさ」

「だけど」

「それに、大臣の椅子に座っているよりマスコンとブレーキ握っている方が性に合っている」


 爽やかな笑顔でテルはレイに言う。

 これまでテレポーターへの移行で鉄道を廃止する陰鬱な作業を行ってきたテル。

 日々の仕事でやつれていっていた。

 それが、嘘のように明るい笑顔を見せている。

 こんなに明るい顔を見せられては、止めることなどレイには出来なかった。


「……あまり危険な真似はしないでくれよ」

「分かっている」

「それと、僕も行くからね」

「いや、必要ないだろう」

「テルが何をするか分からないからね」

「敵の襲撃に備えるとかじゃないのか」

「一人で十分撃退できるだろう。いろんな事をやり過ぎないように見張るんだよ」

「信用されてないな」

「これまでの事を考えるとね」

「そこまで信用が無いとは」


 テルは肩を落とした。


「まあいいよ。その代わりいろいろ手伝って貰う事になるけど」

「勿論です。オスカーも手伝ってくれます」

「俺もか!」


 突然振られたオスカーは驚愕の声を上げる。


「テルの御付武官でしょう。側にいるのは当然」

「いや、これ御付武官の職務超えてない?」

「じゃあ、テルを一人で行かせるのかい? 友人としてどうなんだ?」

「う」

「それとも怖いのか?」

「怖くねえよ」


 子供っぽいところのあるオスカーはレイの術中にはまり、行くことを承諾してしまった。




「まさか、旧式の客車タイプだとは思わなかった」


 操車場に着いたテルは用意されている列車を知らされて驚いていた。

 鉄道が出来てからその輸送力と容量、機動力から様々なサービス車両が出来た。

 病院列車もその一つで、定期的に巡回し、沿線に医療提供を行ってきた。


「新幹線タイプは、テレポーターの事故の対処のために全て出払っておりまして残っているのはこれぐらいです」


 近年は新幹線の開通に伴い、新幹線型の病院列車が主流だったが、昨今の疫病騒ぎで全力稼働しているため、余分な車両が無く、すぐに用意できるのが、旧式の列車タイプだった。


「牽引用の機関車は?」

「ディーゼル機関車を用意しています。非電化区間なので迅速に乗り入れるために用意しました」


 帝都に比較的近いが、列車の運転本数が少ない路線だと電化されていない事が多い。

 バッテリー搭載の列車を導入しようかという話もあるが、大容量バッテリーの開発が進んでいないので、まだ先の話だ。


「列車の発電用ディーゼルエンジンは大丈夫か?」

「はい、荷物車の前半分に強力なディーゼルエンジンを搭載し、各車両に電力を供給出来ます」


 全て電化されているわけではないので、昔のブルートレインのように電力供給の為に列車は発電機を搭載していた。

 直流、交流の区間でも電気の変換が面倒だし万が一の架線事故に備えて、各列車の電源は基本的にディーゼル発電から取っていたのだ。


「医療スタッフは全員乗ったのかい?」

「はい、皆さん待機しています」

「路線や天候に問題は?」

「ありません。海上に低気圧が発生していますが、低気圧の到来は到着前です」

「よし、出発する」


 テルは、運転席に乗り込んだ。

 キーを差し込み主電源を入れる。


「電圧、電流よし、予熱開始」


 ディーゼルは大出力だが燃料系がデリケートだ。

 粘性の高い燃料を使うと詰まってしまう。だから予め燃料を温めておいて、滑らかにして送り出す必要がある。

 予熱を忘れて、エンジンを壊してしまう事故が結構多い。


「予熱よし。エンジン始動」


 セルを回して運転開始。

 初爆が起こり、ディーゼルエンジンは勢いよく回り始める。


「時機よし! 出発進行!」


 キーを後退に入れて、後進開始。

 牽引する列車の元へ向かう。

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