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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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鉄道復旧

「といっても大変なんだよな」


 鉄道省に戻ったテルは地下の指揮所――非常事態が起きたとき鉄道に関連する情報を集め指示を出す場所に移って愚痴を吐いた。


「改善案が出来るまでどれだけ年月がかかるか」


 テレポーターの技術は確立している。

 問題なのは悪用防止の為のシステムが無い事だ。

 しかも発明者の一人であるジャネットが無効化するアイテムを開発しかねないことも頭が痛い。

 一通りセキュリティシステムが出来上がるまで一年かかるか十年かかるか予想不能だった。

 そして上手くいったとしてもまた破られて、テレポーターが使用不能になりかねない。


「それまでの間、やはり鉄道を初めとする交通手段で代替するしか無いんだよな」


 結局のところ、既存のシステムを使うが一番だった。


「テレポーターの使用は全面中止。安全策が出来るまでは既存の交通インフラを使用する」


 何時また、同じ事故が起きるか分からない。

 全面導入は避けて、小規模な実験を繰り返して安全を確認してから導入する。

 それまでは鉄道など既存の交通インフラを使う事にしていた。

 既に、用意されているし使用されなくなってから時間も経っていないため、再使用は比較的簡単だ。


「とはいうものの鉄道のテレポーターによる被害も大きいんだよね」


 テレポーターが設置されていたのは帝国の主要駅だった。

 洪水騒ぎのために、主要駅は水浸しになり使用不能になっている。

 全力の排水および復旧作業が行われているが、最短でも一日はかかる。

 だが旅客はまだ良い方だ。

 一番力を発揮していた貨物駅の被害が大きいのが問題だった。

 貨物駅で扱うのが自力で動ける人間ではなく、動けない貨物のため、大勢の人手が必要だし何万トンという貨物を一日で扱う。

 しかも生活必需品や電力用の燃料など生活に直結する物品を輸送しているため止まると餓死者が出かねない。


「どうするんだい?」


 被害報告を纏めていたレイが尋ねた。

 テルは被害状況を見て計画を練る。


「テレポーターの被害が出たのは中心部にある主要駅だ。そこの復旧を大車輪で行う。それまでは別の駅で行う。幸い、主要駅以外は無事だ。だから迂回線を使って主要駅をスルーするして無事な周辺の駅に旅客を降ろす。貨物も被害のあった貨物ターミナル駅とは別の貨物駅を使って荷さばきをする」

「大変じゃないのか? 能力が足りるのかい?」


 被害に遭っていたのはいずれも旅客及び貨物の取扱量が上位に当たる駅ばかりだ。

 それもランキングを付けたら、下位に一桁上の大差を付けるような駅ばかりだ。


「緊急事態対応マニュアルがあるし、非常時にどのように動くかは、予め決めてある」


 緊急事態が起きた時、何をすべきか、予め各部署で決められてる。

 鉄道は国の重要なインフラであり、滞りなく動くことを求められている。

 機能不全にならないようにしているが、緊急事態、鉄道が動かなくなってもバックパッププランや早期復旧の計画や手順が決められている。

 しかも帝国は広大な領土を持っているため、どこかで必ず事故や事件が起き、遅延が発生する。

 遅延を最小限に抑えるために長年培われてきた。

 これは昭弥の時代から行われていたことであり、鉄道が確固としたインフラとして機能していた


「けど、全国規模で同時多発なんて想定していないだろう」

「仕方ないさ、混乱で物流も止まっている、少しでも動かす必要がある。優先順位を決めて、生活必需品から輸送させる。私鉄の路線を使ったりトラックやバスで代行させる」

「泥縄だな」

「仕方ない。他に手は無いんだから。鉄道軍にも応援は頼んでいるけど」

「無理だったー」


 軍務省に鉄道車両と人員の提供を要請しに行ったオスカーが戻ってきた。


「軍の駐屯地が軒並み襲撃されてその対応で、人員取られている。むしろ軍の移動に協力してくれと言われた」

「線路の保全に関係する輸送なら歓迎だよ」

「反乱を鎮圧したいそうだが」

「大幹線を何とか復旧しないと拙い。あと維持する必要がある。幹線の大鉄橋やトンネルを破壊されてみろ、軍事輸送も出来ない。協力を要請するんだ」

「怨まれているぞ」

「大臣として軍務省への協力要請を行うよ。説得してきてくれ」

「人使い荒いなー」


 そう言いつつオスカーは再び軍務省と交渉するために出ていった。


「まあオスカーはともかく」

「同期に酷い言い草だな」

「事実を言って何が悪い。そもそもの話、人員が足りていないのではないか?」

「テレポーターの人員を戻している」

「慣れるまでに時間が掛かるだろうね。まあ実務レベル程度なら多いだろう。問題なのは彼らの上に立って指揮命令する指導者層じゃないのかい? せめてテルと同等くらいの判断と決定が行える人材が必要だろう」

「すでに準備しているよ。経験は十分すぎるほどあるし、国鉄にも詳しい」

「こんな時にも役に立つのかい?」

「ケーレス戦争の時、ダイヤ回復や生産設備の復旧などにも活躍し、国鉄の非常事態マニュアルにも詳しい。大丈夫だよ」


 非常事態で一番問題なのは現場と上層部の認識の乖離だ。 

 例えば現場は自分の部署を復旧させたいのに、作業するな、他部署へ応援に行けと言われてしまう。

 当然現場は反発する。

 だが、まともな上層部ならば全体を見ている。本線が不通なのだから、その支線を回復したところで輸送網という観点では支線の回復は無意味。本線の方を復旧させるのを優先する事も多い。

 以上の判断を下せる人間が必要だった。


「こんな時に一番頼りになる人物だ」

「おお、さすがだね。そんな人物がいたとは……」


 そこまで言ってレイは、黙り込んだ。

 そんな逸材がいたら必ずテルが口にしているし、絶対に鉄道省に迎えている。

 なのにこの場にはいない。

 考えられるのは、訳があって鉄道から離れている場合だ。

 そして、鉄道界のほぼトップで活躍していた人間で最近問題が発生して鉄道から離れている人物など一人しか見当が付かなかった。


「まさかだが」


 珍しくうろたえるレイにテルは言った。


「まもなく来るよ。出迎えてくれ、ガンツェンミュラー元総裁を」


続きは


https://kakuyomu.jp/works/16816452220020846894/episodes/16816700428317081316


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