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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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テレポーターによる被害

「ではこれまで起きた事件について分かっていることを報告致します」


 バジリスクとベヒモスが討伐されてから一時間後、宮廷で御前会議が開かれテレポーターの対策会議が始まった。

 一連のテレポーターによるトラブルについて報告が行われた。

 報告を行っているのは、急遽調査を纏めるように命令された枢密警察のスコルツェニーだ。


「まず、テレポーターによる転送ミスが相次いでいる問題ですが転送先のテレポーターのアドレスを間違う例が多発しています」


 テルの元に大量のエロ本が転送されたのも、送り元が転送先を間違えたからだった。


「似たような誤転送は各地で起きています。アドレスを間違えて違う場所に送って仕舞うことが頻発しています、中には恋人の元へ行こうと裸のままテレポーターに乗ってしまい他人の家に入ってしまった女性も」


 そんなことにテレポーターを使うとは愚かしいが、姉が押しかけてきたテルは笑えない。


「他にも、悪徳業者が勝手に商品を送りつけ、代金を得ようとする事件や商品を送り続け、止めるためにキャンセル料を支払わせる事件も起きています」


 押し売りの発展型だった。

 押し売りは玄関に入れなければよいが、テレポーターを家の中に設置してしまっているのでルのは無理だった。


「駅が水浸しになった件ですが、テレポーターで水を導き水車を回して発電する水力発電所の設定ミスで中央駅のテレポーターへ繋がってしまい溢れてきました」


 テロの線も考えられたが厳正なる調査の結果純粋な入力ミスによる誤転送によるものだと分かった。

 単純なミスだが、被害は甚大だ。


「溢れた水の量が多く、他の主要駅へのテレポーターへも流れ込み、主要駅が浸水、機能を大幅に落としています」


 レイの危惧は現実となり帝国の主要駅が水浸しになり混乱していた。

 だが、個人のミスならまだマシだ。

 問題なのは政府への組織的なテロ攻撃だ。


「鉄道省へ暗殺者や爆弾が送りつけられたように、他の省庁でも似たような事件が起きています」


 便利だとしてテレポーターを設置した省庁へ、テルの元へ来たように暗殺者や爆弾が送りつけられ被害が出ていた。

 積極的に導入した省庁ほど中枢近く、主要部局や大臣室にもテレポーターを置いていたので危険だった。

 だが一番被害が大きいのは軍だった。


「もっとも狙われたのは軍です。突如、完全武装の集団が駐屯地のテレポーターから出現し占拠された事例が頻発しています」


 便利と思って駐屯地の中心にテレポーターを設置していたため、テロリストがど真ん中に現れて、制圧されてしまった駐屯地が多数いる。

 警戒していた駐屯地も激しい戦闘の末にようやく制圧している状況だった。


「他の駐屯地から迅速に部隊を送りましたが、それによる被害も出ています。予め設定していたアドレスを勝手に変えられて、敵のど真ん中、もしくは海の真ん中に転送され、戦わずして装備や人員を失う事例が多くなっています」


 テレポーターは転送先のテレポーターのアドレスを入力し相手と繋がったあと、魔術的な通路を構築し通行可能になる。

 その仕組みを逆用し、相手のテレポーターと繋がったり、勝手にアドレスを変えたりするなどして自分のテレポーターと繋げて仕舞う事例が多発した。

 例えばテレポーターを使って出動した近衛師団第七連隊戦闘団は、反政府組織が海の上のゴムボートに置いたテレポーターに転送されてしまい人員と装備が海に落ちて人員の一割、装備の大半を失った。

 他にも辺境にあった備蓄基地が占領され、保管されていた一個師団分の装備を反乱軍に奪われる事件も起きていた


「同様の事例が頻発しています。移送中の装備の送り先を無理矢理変更されて奪われたり、占拠した駐屯地から武器を奪っていく事例が多発しています。反乱の規模も大きくなっており軍は対策に苦慮しております」


 奪われた武器で武装蜂起する事例が頻発し事態は悪化していた。


「バジリスクが送り込まれた件は? 一定の大きさ以上は運べないはずだったが」


「ジャネット師が縮小魔法を使って通れる大きさまで小さくしてそれからテレポーターで運ぶ魔法を開発しました。テレポーターの運用限界の大きさでも、ある程度は運べます」


 余計な物を作りやがって、と参加者は全員思った。

 普通にテレポーターの運用効率を上げる素晴らしい発明なのだが、犯罪組織などに流出して悪用、巨大モンスターを送りつける犯行に使われたため、悪印象しか持っていない。


「父さんが言っていたな」


 テルは父親である昭弥の元に大量の抗議の手紙が届いたとき、かわいそうだと思ったが、スパムメールよりマシさと笑っていた。

 スパムとは何かと尋ねると、インターネットで送られてくる迷惑な手紙だ。簡単に作成できるし、アドレスを変えるだけで同じ文面を何人どころか何百万人にも送りつける事が出来る、と言っていた。

 テレポーターも同じだ。

 ただメールはパソコン、スマホの中だけで済むが、テレポーターは現実に送り込んでくる文、被害が大きい。


「そもそもどうして、このようなことになったのですか?」


 テルの母であり、皇帝であるユリアが尋ねた。


「テレポーターにはセキュリティが、誤って送信したり、割り込めない機能が付いていたのではないのですか?」


 このような事故や事件を防ぐためのシステムがテレポーターに組み込まれていた。


「テレポーターを乗っ取るマジックアイテムが出回ったことが原因です」

「誰がそのような物を作り出したのです」

「ジャネット魔術師です。制圧したテロ組織のメンバーから入手先を聞きましたので間違いはありません」


 やっぱり、という空気が流れ、参加者の間から怒りが沸いてきた。その熱量は凄まじく参加者の湯気で天井に雲が出来そうだった。

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