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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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デカい物も運べるテレポーター

「こうなれば、動いているテレポーターを全て破壊しないと止まらないようだな」


 テルを狙った新たな刺客や爆弾が次々とテレポーターから送り込まれてくる。

 その前にテレポーター自体を破壊しないと、テルだけでは無く周りが危険だ。

 破壊しようとするが先ほどの爆発でテルの元にあったテレポーターがどこかに飛んでいってしまった。

 あの程度の爆発では壊れていないだろう。

 暗殺者や爆弾が送り込まれてくる前に破壊しないと混乱は拡大する。

 テルはショットガンの弾数を確認する。

 撃った分を補充し、ベストを着込んで予備の弾丸を詰め込み、破壊する準備を整えた。


「さて、厄介者を送りつけてくるテレポーターは何処だ」


 割れた窓からテルは外を見た。

 テレポーターの位置はすぐに分かった。新たに送られてきた転送物を現出させるために輝いていた。

 すぐさまショットガンを向けテレポーターを壊そうとするが、転送物が間に入り破壊できなかった。

 弾は転送物、王冠のような文様を頭に記したモンスターの胴体に命中したからだ。


「バジリスク!」


 蛇の王の異名を持つ、巨大なモンスター。

 強力な毒を持ち、常に周囲を放つため、近くに居るだけでも危険。放たれる毒の霧を吸ったらお終いだ。

 それが新帝都の中央部――人口密集地帯に現れたら大惨事だ。

 暴れ回らないかテルは心配だったが、無用の物だった。

 被害が無かったとは言え、銃弾を当てられたバジリスクはテルに怒気と頭を向ける。


「逃げろ!」


 現れたバジリスクと目が合ったテルは叫ぶとレイを伴って執務室から逃げ出す。

 大急ぎで逃げた後、バジリスクの口から毒液が噴射された。

 早めに逃げたためテルは直撃しなかったが、建物の一部、テルのいた執務室が酸性の毒で溶け白煙を上げ、濃い霧となる。

 振り返ると執務室のあった場所は消えており、床が無くなって二階が見えていた。


「こんなのが暴れ回ったら恐ろしいことになる」


 何とか退治したいが、軍隊でないと無理だ。

 それも戦車を含む重装備を装備した部隊が。

 だが鉄道省周辺に配備されている憲兵隊や警察、鉄道公安隊の装備は拳銃程度。テロリスト制圧部隊でもサブマシンガンのみだから対抗できない。

 だが移動には時間がかかるし、テレポーターがあってもこの混乱では無事に運び込めるか心配だ。

 下手をすれば遙か遠く、見当違いの場所に送られてしまう可能性もある。

 悩んでいる間に、バジリスクがテルが死んだかどうか確認するために鉄道省の建物に首を文字通り突っ込んできた。

 そして、生きていることを確認すると毒液を放とうとする。


「テルをいじめるな!」


 だが毒を吐く寸前、テルの姉であるクラウティアが現れてバジリスクに蹴りをかまして、頭の向きを強制的に変える。

 自分を傷つけた事に一瞬怒ったバジリスクは振り向いてクラウディアを睨み付ける。


「よくもテルを追い回してくれたな」


 だが、剣を構えバジリスク以上の怒気を含んだ闘気を放つクラウディアを見た瞬間、バジリスクは固まった。

 明らかに自分の体以上の巨大なオーラを放ち、実力は遙かに上だ。

 戦ったら確実に負けることをバジリスクは本能で即座に理解した。

 自分が殺される光景が、実感を伴って全身に伝わり恐怖を感じたバジリスクは戦意を喪失し、クラウディアとは反対の方向へ逃げていった。

 強い奴とは戦わない。弱いヤツは倒される。

 それが自然で生き残る秘訣であり、例え凶暴なモンスターであり食物連鎖上位のバジリスクでも変わらない。

 自分を殺せる存在であるクラウディアからバジリスクは逃げた。


「大丈夫かテル!」


 バジリスクが逃げていくのを放っておき、クラウディアは自分の最重要優先事項であるテルに尋ねた。


「クラウディア姉様。どうしてここに」

「テレポーターでテルの元に押しかけようとしたら何故か、外に出てしまった。しかもバジリスクがテルの部屋を攻撃しようとしていたのでとりあえず蹴っておいた。テルが無事で良かった」

「本当に危ないところでしたよ」


 もし数分早ければ、レイとの危ない絡みを見られて激昂したことだらろう。

 バジリスクより恐ろしい被害をもたらすことは間違いない。

 というかテレポーターで乗り込んで何をする気だったのか、テルは考えたくも無かった。


「って、バジリスクも十分に危険だ!」


 街の中心部へ大急ぎで逃げているバジリスクをみてテルは叫んだ。

 今は逃げることに専念しているが、人の多い中心部で暴れたり、人を襲って食べたりしたら、被害は拡大する。


「姉さん、あのバジリスクを退治して」

「テルの頼みなら承知!」


 言われるやいなやクラウディアは飛び出し逃げ去るバジリスクに剣を突き立て突貫。

 シッポから頭まで貫いた。


「ああ、助かった」


 消滅したバジリスクを見てテルは安堵の溜息を吐く。


「何かお礼に料理を作らないと」


 テルの手料理をクラウディアは喜んでくれている。何かお礼をする時は手料理を出せば喜んでくれる。

 この事件が終わったら何か食べさせてあげようとテルは思った。

 だがほっとするのも束の間、道路に放り捨てられたテレポーターが作動しベヒモスが現れた。


「姉さん! また現れた! テレポーターを破壊して、このベヒモスを倒して」

「おお、分かったぞ」


 テルの指示通りにクラウディアはテレポーターを剣で突き刺して破壊したあと、返す刀でベヒモスを両断した。

 相変わらず勇者の力のある姉は凄まじい。普通の人間であるテルとは違う生き物なのだと思う。


「テル。終わったぞ」


 返り血を浴びながら朗らかに笑ってクラウディアはテルに報告する。

 褒めてもらいのだ。

 いろいろな思いがテルにはこみ上げてくるが、このピンチを助けた姉には感謝しかない。

 感謝の意味も込めて夕食のおかずを二品追加しようとテルは心に決めた。

 手料理をご馳走するためにも、事件を解決しようとテルは早速動き出した。

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