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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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送り込まれてくる厄介者

「大臣んんんっっっっテレポーターで飛行機も商売あがったりだ! 鉄道だけで独占しやがってえええええっっ」


 新たな暗殺者はテルへナイフを突き立て刺し殺そうとする。

 テルは先ほどリボルバーに装填してあった六発を全て撃ち尽くしているため、銃は撃てない。

 ピンチだったが、レイが間に割り込み、暗殺者の体を掴む。

 暗殺者の突進の勢いを自らの動きに巻き込み、スカートをひらめかしつつ逸らし窓の外へ向かって放り投げた。


「うおおおっっっ」


 暗殺者の声が、拡がったスカートが静かにさがるように小さくなっていった。

 投げる前に通りに人が居ないことは確認済み。打ち所が悪くないよう、足から落下するよう回転させつつ、落としたので三階の執務室から落とされても暗殺者は無事だった。

 だが、レイのスカートが下りきる前に新たな暗殺者がテレポーターから現れた。


「大臣! 覚、ぐはっ」


 レイが対応している間にテルは机の下に隠していたショットガンを引きだして構えていた。だから瞬時に出てきた暗殺者へ銃口を向け撃ち込んだ。


「相変わらず机の下に物騒な物を隠すね」

「宮殿時代からの相棒だからね」


 ポンプアクションでショットガンの薬室に新たな弾を装填しつつテルが言う。

 召喚術が好きな妹がいて、よく悪魔や魔神を召喚している。

 だが時折、暴走させるため、制圧する必要がある。

 勇者の力も魔法の才能も無いテルは、銃など普通の人間が使える物を使って対応するしか無かった。

 なので銃器の扱いには、実家に居た頃、十歳に満たない時からなれている。

 その時分かったのだが、ショットガンはなかなか使える。

 貫通力はないが、マジックバリアなどで防御を行う存在でもしょったがんの弾丸の威力を完全に抑えることは出来ず、顔面パンチを受けたような衝撃を受ける。

 ドラゴンなどの大型動物はまた話は別だが、人間大の存在なら、殺さないようにゴム製のライアット弾を使っていても衝撃は十分に伝わり、一瞬でも余裕を作れる。

 勇者の力など無い、普通の兄弟姉妹もいるので彼らを助ける、あるいは逃がす機会を作るのに便利だった。

 悪魔相手でもそうなのだから、人間相手だったら確実に制圧できる。

 こうした暗殺者の相手をするにはもってこいだ。

 このときも放たれたゴム製の銃弾はキックボクサーの回し蹴りを食らった選手のごとく、暗殺者をたたきのめし部屋の壁に吹き飛ばした。


「どうしてこんなに不要な物が送り込まれるのでしょう」


 吹き飛ばされ伸びている暗殺者を適当に縄で梱包したレイが言う。


「どうもこのテレポーターのアドレスが流出したみたいだな」


 油断なくショットガンを構えたテルが言う。

 次から次へと暗殺者が、それも違う場所から次々と送り込まれてくるのは、テルのアドレスが多方面へ流出しているからだ。

 しかも、最高レベルのセキュリティを突破されている。


「どうします?」

「こんなことが帝国中で起こっていると大混乱は確実だ。マジで対策会議が必要だな。それも即時に」

「いや、こんなに暗殺者が送られてきたら大変ですよ。このテレポーターだけでもなんとかしないと」


 兄弟姉妹のトラブル解決を幼い頃からしてきたせいか、どうもテルは自分の事を後回しにする傾向がある。

 自分のトラブルに関してはたいしたことは無いと考えている。

 まあ、日々ドラゴンやら魔神やら、巨大ロボットの後始末を、下手したら帝国に大きな被害をもたらす事象を相手にしていたら凡人である自分の事などたいしたことないと思ってしまうのかもしれない。

 だが、大臣という要職に、それ以上に得がたい資質を持っているテルには生き残って貰わなくては。

 第一、自分の事を蔑ろにして良いはずがなく、何時もいじくり回しているレイもその点は本気で日々心配していた。


「ふむ、そうだね。とりあえず電源を切るか」


 そう言ってテルはテレポーターの電源を切った。

 だが、嫌な予感がしたテルはそれでも安心できない。

 机の引き出しから書類を纏める糸で繋ぐと窓のレーバーに繋げて、テレポーターを外に吊した。

 すると案の定、テレポーターが強制再起動し、新たな暗殺者が現れた。


「鉄道の破壊者! 覚悟おおっっうおおおおっっっ」


 転送されてきた暗殺者は最初こそ意気込んだ気合いのある声を出していた。

 だが、最後は悲鳴を残して三階下の舗装道路に落ちていった。

 幸い、下にいたのはレイが投げ飛ばした先客がいて、クッションになり、彼は無事だった。

 二人とも同じ暗殺者故か、蛙が潰されるような声を出して伸びた。


「酷い事しますね」

「レイほどじゃない」


 先ほど本気で既成事実を作ろうとしたにもかかわらず、そのあとのアクシデントで弄り倒し、今はしれっとしているレイに突っ込む。

 だが、テルに追及してる余裕は無かった。

 再びテレポーターが光って、新たな転送物が出てきた。

 だが今度は人間では無かった。

 タイマーの付いた爆弾だった。


「危ない!」


 テルはレイを抱き寄せると窓を離れた。

 爆弾は落下の途中で爆発し、窓を粉々にした。


「テレポーターを持つ相手に無理矢理送りつけるのか。タチが悪いな」


 ガラスの飛び散った床から起き上がったテルは愚痴る。

 


「レイ大丈夫か?」


 胸に抱きしめたレイを開放しテルは尋ねる。

 一見したところレイに怪我は無かった。


「は、はい、お守りいただきありがとうございます。そしてお守りせず申し訳ありません」

「気にするな。それよりテレポーターを止めないと大変なことになるな」


 無事に残っていた部屋の電話でテレポーターの制御センターに掛ける。


「私だ、大臣だ。今すぐテレポーターを止めるんだ。何、制御不能? どういうことだ! テレポーターは自体が半ば独立したシステムで外部からの介入は難しい? テレポーター同士で勝手に繋がってしまうだと? もういい」


 テルは荒々しく電話を切った。

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