テレポーターの事故
突然、テルのテレポーターに現れた、明らかに肌色成分多めでピンク色のイラストが描かれた表紙が付いた大量のエロ本にテルとレイは固まった。
「なっ」
何故そんな物が送りつけられたか分からず、どう対処すれば良いのか二人とも。
最初に動いたのは、レイだった。
崩れ落ちた大量のエロ本の一冊を取り上げ、ページを開いた途端に固まった。
さすがのレイもドン引きするシチュエーションだった。
「……テル……」
震える声でレイは言った。
「済まない……長年君に仕えているのに……こんな嗜好だとは……気が付かなかった……」
「違うぞ」
悔いるような口調で言うレイの言葉をテルは慌てて否定した。
開かれたページの挿絵からどのような本から自分の好みとは全く違うものが、ドン引きレベルのものが書かれていた。
だがレイは忠実な臣下の態度で話を続ける。
「君の一番の理解者であろうとしながら気が付かなかったなんて、メイド失格だね」
「人の話を聞け」
「隠さなくても良いよ。さすがに衝撃を受けたけど、これが君の好みなら否定しないよ」
「だから違う」
「驚いて、戸惑っている。だけど、テルがこういうのを求めているなら……僕は頑張るよ」
「違うと言っているだろう!」
顔を赤らめるレイに、さすがのテルも怒鳴った。
冷静さを取り戻して口元が笑って、からかいはじめたのが分かったからだ。
「まあ、冗談はさておいて」
十分テルを弄ったレイは本を放りだし――だがしっかりと挿絵のページが開かれるように落として尋ねた。
「これはどういうことなんだ? 何が起きているんだ」
テルはテレポーターを操作して送り元を確認する。
「……転送ミスみたいだ。ポプルスアウローラ書房なんて全く知らないところからここに流れている」
「そんなことがあるのか?」
「テレポーターのアドレスが間違っていたらこんなこともある」
「なるほど。しかし、テルの部屋で、こんなことが起きると言うことは」
「ああ、帝国中で同じ事が起きている」
一応、テルは大臣であり、セキュリティのレベルは高い。外からの侵入などに対しての対処は帝国でも有数だ。
テレポーターでも同じように最高レベルセキュリティが行われている。
なのに、予定にないものが送りつけられているのは何らかのトラブルが起きている。そして、自分以外のテレポーターでも同じ事が起きていると予想した。
「すぐに対策会議を開くか」
「はい」
対策会議を開こうとテルが決意し、レイが崩れたエロ本の山を丁寧に並べ終わった瞬間、突如轟音が外から響いてきた。
窓から外を見ると、アルカディア中央駅の玄関口から大量の水が流れてきていた。
濁流の勢いは激しく駅前広場が洪水で浸水している光景にレイは思わず呟く。
「何が起きたんだ」
「多分、同じような設定ミスだろう」
テルは冷静に分析して呟いた。
テレポーターが多数設置され各方面に繋いでいるアルカディア中央駅ならば事故が起きる可能性も高い。
何処か水を輸送するテレポーターとアクセスしてしまい、洪水を引き起こしてしまったのだ。
「非常に拙いね。あそこは旅客用のテレポーターが多数設置されていて、一番利用者が多い」
最初に設置され、帝国各地を結ぶテレポーターが多数設置されている。
あそこが浸水して機能停止になったら、テレポーターを使った移動網が機能停止する。
「まあ他のテレポーター同士で繋ぎ直してバイパスを設定できるから大丈夫だろうが」
万が一何処かの拠点が機能不能になっても、鉄道のバイパス線のように迂回してネットワークを維持できるように設計していた。
すぐに機能が代替され、動き出すはずだ。
「でも、あれだけ大量の水が流れ込んだら、他のテレポーターにも流れ込んで他の駅へも流れ込んでいるんじゃ」
「あ」
レイの指摘に、テルは黙り込んだ。
あれだけの水が溢れてはレイの言う通り、設置されている多くのテレポーターに流れ込んでいない訳がない。
他の駅にも水が流れ込み、大混乱が起きているはず。
そして流出先の駅にも多数のテレポーターが設置されており、そこへも水が流れ込んだら、更に被害が拡大する。
それも一瞬で。
今、帝国のテレポーター網は停止したと言っても過言ではない状況だった。
「すぐに対応しないと」
その時、テレポーターが再び光り出した。
事故の発生を知らせる緊急文書かと思ったが、違った。
現れた光の塊は大きく、人間大だった。
実際、現れたのは人間で顔を覆面で隠し、手にはナイフを持っていた。
「見つけたぞ大臣! 鉄道を廃止してテレポーターにした、てめえのせいで俺は文無しだ! 命を奪ってや」
ダダダダダダーンッッ
「がはっ」
暗殺者が現れた瞬間、テルは腰に吊していたリボルバー拳銃を引き抜き、装填してた全弾を撃ち込んだ。
現れた人間が胴鎧を着込んでいるのが、衣服の隙間から見えたので遠慮無く撃ち込める。
反撃を想定していなかったのか、現れた暗殺者? は倒れた。
しかし、襲い掛かってきたのは一人では無かった。
テレポーターが再び光り、新たな暗殺者が現れる。
続きは
https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700428222592610
で読めます




