表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
740/763

還魂の儀式

 チェニス西方の大アルプス山脈の麓には巨大な宗教都市エリッサ神殿がある。

 元々客寄せと大衆の娯楽のため、参拝客収入獲得のために昭弥がチェニス田園都市鉄道を使いエリッサ神殿と共に建設した都市だった。

 参拝と観光のために押しかけてくる大勢の利用客を捌くため、動線に配慮して作られた都市だった。しかし、曲がりなりにも神のいる神殿であり宗教儀式や奇跡を起こすための施設も一応、保有している。

 都市の中心にある大聖堂は、普段豪華な装飾で参拝客を喜ばせているが、本来は儀式のために施された一種の装置の一部であった。

 街も観光客の移動に配慮されている区割りがなされているが、儀式の時には一種の回路となるように設置されており、儀式を行いやすくしている。


「こうして儀式を行うのは何年ぶりだろうね」


 神殿の主神でありチェニスの守護神そして近年は鉄道の女神として名が広まっている、儀式の実行責任者エリッサは、大聖堂の真ん中で喜々として言った。

 伝統的な白いトーガの衣装を身につけ大聖堂の中心に立ちっている。


「死者の魂を現世に呼び寄せて語らせるなんて昔はよくやっていたけど、今の人達は昔の知識より新しい技術を求めているから。わざわざ儀式を行ってまで聞きに来る人が居なくて使われなくなったんだよね」


 昔を懐かしみつつエリッサは準備を始める。


「何故、昭弥が亡くなった直後に行わなかったのですか?」


 昭弥が語りかけるという話を聞いて駆けつけたユリアが剣の柄に手を掛けながら剣呑な表情でエリッサに尋ねた。

 話が聞けるのならもっと早くにやっておけと、思っていて怒りがこみ上げてきたからだ。

 一寸でもエリッサが変なことを言おうものなら、切り落とそうとユリアは構えていた。


「亡くなってすぐに僕が行ったよ。けど、昭弥本人が拒絶してね、呼び出すことが出来なかったよ。復活どころか、今回の還魂の儀式さえ、嫌がっていたんだ」


 ユリアの心情を理解していたエリッサは、剣を構えていることには触れず、肩を落としながら昭弥が死んだ時、自分が復活させようとしたこと拒絶された事を話した。


「それに元々死者を呼び寄せるのは神々のルールに反する。なかなか出来ないものだよ」

「じゃあ、今回はどうして出来たの?」

「今回は昭弥が承諾してくれてね。話したいことがあるから来てくれるって。それに主要な神々の神殿にテル君が寄付をしたのさ。科学技術の発展で信仰心が薄れているからね。信者が減っている神殿にとっては慈雨みたいなものだよ」

「神も結局は金ですか」

「うーん、正確に言うと、神々の神殿を維持するため、そこに仕える信徒達のためかな。神様でも信徒達を養うのは難しいから」

「生々しいな」


 ユリアとエリッサのやりとりを聞いてオスカーはウンザリした。

 煌びやかに見えても見栄を張るために虚勢を張るために行っている事が多いから注意するように常々言われているが、神々も似たような物だと再認識した。


「でも、昭弥が現れるのを歓迎している神もいるよ。ねえテーヌ」

「わ、私頑張るっ!」


 同じキトンを着たテーヌが両手に拳をつくって言う。

 ネブラを改造してくれたお礼に、テルの役に立とうと、はせ参じ助力しようとしていたのだ。


「しかし、来てくれるのでしょうか」


 テルは疑問に思った。

 実は、これまでもエリッサは儀式を行う事を考えておりテルに相談した。

 父親が一時的、魂だけの姿とはいえ、再び蘇るというのなら、息子として嬉しい。

 しかし、これまで拒絶されている。

 今更来てくれるとは思えなくて半信半疑だった。


「今回は来てくれるよ。僕は天国と行き来できるからね直接話して承諾を得ているから大丈夫だよ」

「しかしどうして」

「色々と話しておきたいことがあるみたいだよ」


 エリッサに言われてテルは不安になる。

 父親が現れるというエリッサから話を持ちかけられた時は、嬉しさで同意した。だが、いざ、その時となると不安が大きくなり、ためらってしまう。


「大丈夫だよ」


 震えるテルの手をエリッサが握った。


「昭弥は皆の事を思って行動してくれている。時に思いがけない事になってしまったり、突拍子も無い事をするけど、皆を思う気持ちは本当だ。息子として信じてあげてくれ」

「はい」

「とっとと、始めなさい」


 苛立ったユリアが、儀式が遅れているのと、大切な息子の手を、ちんちくりんで余計な脂肪の塊を持っている女神が掴んで誘惑しているのでは無いかと思い、ドスのきいた声で言う。


「そうだね。そろそろ良い頃合いだ」


 大聖堂の中に今回の儀式に参加する神官が集まり、定位置に付いている。

 準備整った。


「さあ、はじめるよ!」


 エリッサは気合いを入れると、テルから離れ自分の位置に向かい呪文を唱え始めた。

 中心部に文様が浮かび上がり光り輝く。

 エリッサの回りで待機していたテーヌと神官達も詠唱を始めると人間より大きな光の円柱が文様の上に浮き上がり、周囲に激しい光を放つ。

 彼らの詠唱が合わさり一段と大きな音となり神殿内に響き数多ある装飾に反響し、詠唱によって与えられた力によって輝き出す。

 神殿の中は光の殿堂となり、神々しい光に溢れる。


「チェニスの主神! エリッサが命じる! 玉川昭弥の魂よ! 今ここに表れよ」


 エリッサが唱えると、光は更に強まり、大聖堂の中を白一色に染め上げた。

 そして光が最高潮に達した時、中心に人影が浮かんだ。

 男性だが体つきは華奢でどこかぼんやりした雰囲気のある人物。

 しかし、鉄道に関わることだと、恐ろしいまでに力を発揮し、何もかも変える勢いで進めてしまう鉄道オタク。


「昭弥」


 その人影が昭弥の物であるのを最初に気がついたのはユリアだった。

続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700428046557590


で読めます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 髪のいる神殿 、、、、、また髪の話している、、、、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ