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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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特殊任務連隊

 車が急停車した音が廃工場に響き、来訪者の存在にウィロビーは気がついた。

 車の形とナンバーでキャノンであることを確認したが、一台だけというのが気になった。

 搬送用に一台、護衛と予備を兼ねた車の二台で来るはずだった。

 しかも戻ってきているのはキャノンとその部下の一名だけ。


「どうした二人を連れてくるはずじゃ無かったのか」


 諸々のことに疑問を浮かべたウィロビーはキャノンに尋ねた。


「済みません、失敗しました」

「何だと、ばれたのか。何故だ」

「そのことを含め報告があります。大臣の軍歴が分かりました」

「空挺軍だろう、大臣就任前は技術研究本部付と統帥本部付だった。経歴にいくつか空白があったが、皇族で実務を担っていなかったからでは無いのか?」

「その空白が分かりました」


 極秘とスタンプされたテルの考課表をキャノンは出して見せた。


「これは……」

「ええ、空挺軍というのは本当です。ですが技術研究本部付と統帥本部付はダミーでした。本当の所属は特殊任務連隊です」


 近年度重なるテロと対ゲリラ戦にウンザリした帝国軍は、対テロ及び対ゲリラ戦を主とした非正規戦を戦う特殊部隊を編成した。

 獣人など身体能力あるいは尾行、狙撃、隠匿などの技能に卓越した隊員を集め、テロ組織やゲリラを撃破する専門部隊。

 それが特殊任務連隊だった。


「編成された事だけが知らされ、所属隊員などは一兵卒に至るまで秘匿されているはずだろ」

「ええ、だから分かりませんでした。大臣はこの特殊任務連隊の連隊長でした」

「名誉連隊長だろう」


 帝国軍の各連隊は封建時代、貴族のみが軍を保有することを許されていた故事にちなみ、連隊と縁のある皇族、王族、貴族の名誉連隊長を抱くのが伝統となっている。


「ええ、しかし特殊任務連隊は、その存在から名誉連隊長はいません。正真正銘、本物の連隊長を務めていたんですよ大臣は」

「まさか」

「空挺軍時代にいくつか空欄がありますが、どうもその時対ゲリラ戦やテロ事件鎮圧を行っていて、その功績で任命されたようです」


 特殊任務連隊はジャングルのみならず市街地での偵察や作戦行動を行っている。

いくつかテロ事件にもかかわり成功させていた。

 そのような経験を持つ連中を集めて作られた特殊任務連隊は市街地戦や狭い空間での戦闘は十八番と言える部隊だった。


「そのため我々もホテル内で奇襲されました。監視をくぐって部隊を配置するのは特殊任務連隊の手口の一つです。私たちも、いつの間にか周辺のビルにも狙撃手が配置されていて、私が脱出するだけで精一杯でした」

「恐ろしいことだな……待て」


 そこでウィロビーはある事に気がついた。


「どうしました」

「お前はどうしてここにいるんだ」

「特殊任務連隊と思われる連中に襲撃されて失敗し報告に」

「何故、脱出できた。狙撃手も配置しているんだ。連中なら逃げ道も完全に塞いでいるはず。逃走した時、狙撃されて撃ち殺されるか、足を打ち抜かれて捕まるのではないのか」

「いや、無我夢中で逃げたので、そのようなこと」


 だがウィロビーに言われて考えてみれば、配下は全て捕まったのにキャノンだけが逃げ出せたのはおかしい。

 さらに、このタイミングで大臣の軍時代の極秘の履歴書がもたらされたのも、あまりに出来すぎだった。

 そもそも極秘の書類をこのタイミングで受け取ることが出来るのか。


「……罠……ですか」


 キャノンは周りを見た。

 かすかだが人の気配がする。


「囲まれているようです」


 逃げるので精一杯でキャノンは周囲の状況を把握できなかった。

 囲まれるまで全く気がつかなかった。


「……ならば、仕方ない」


 ウィロビーは拳銃を取り出してキャノンの部下に向けると発砲した。


「なっ」


 突然部下を銃撃されてキャノンは驚いた。

逃げようと考えたがその隙を与えずウィロビーはキャノンに銃口を向けて引き金を引こうとした。

 だが発砲直前に、狙撃が行われ弾が拳銃に当たり弾き飛ばされる。

 同時に多数の兵士が廃工場へ突入してくる。


「全員動くな!」


 ガスマスクを付けた兵士達が全員二人に向かって銃を突きつける。


「待て、私は強盗犯に襲われて反撃しただけだ。この男とは関係ない」

「なっ」


 ウィロビーの言葉にキャノンは絶句する。


「そこまでです。あなた方が襲撃犯の一味だと言うことは分かっています。後は枢密警察で話を聞きましょう」




「ふう」


 ウィロビー達が連れて行かれた後、現場の確保が確認されると兵士達は装備していたガスマスクを外していく。

 男性もいたが、女性の数も多かった。

 そして女が集まると始まるのは、世間話だ。


「市街戦は久方ぶりですから大変でした。上手く連携できるか、ぶっつけ本番だった」

「全く、中助も無茶言ってくれる」

「でもテルのためだし」

「そうねー」

「何処が久方ぶりの襲撃だ」


 隊員達が話しているのを聞いたオスカーが毒づく。


「あ、中助だ」

「だって最近、襲撃訓練とかしていないし」

「テルの護衛に参加していたもん。中助がその命令も出したの忘れたの?」

「忘れてねえよ。それに中助呼ぶな。俺はもう中隊長ではなく連隊長なんだぞ」


 オスカーは新米士官の頃、少し悪ぶって兵隊言葉を使っていた。中隊長の事を中助と呼ぶのもその一つだ。士官になる前は、一兵卒から数年間の下士官を経て士官になろうと考えたことを、父親が年を偽って入隊して一兵卒から叩き上げた事もあって同じ事をやろうとした。

 だが果たせず、順当な出世コースである士官学校に行くことを命じられたため少しぐれて、言葉遣いがしばらくの間、悪かった。

 その姿が滑稽、もとい愛らしかったため、当時の知り合いや部下達から当時の口調を真似されて揶揄われることになっている。


「え? そうなの? テルじゃないの」

「大臣になって忙しいから俺が代わりに任命されているんだよ」

「でも、ちょくちょく会うよね」

「作戦命令を下す時だけだ。普段の訓練や管理は俺がやっているだろうが」

「へー、そうだったんだ。でも命令も下せないなんてね」

「テル以外の命令をお前らは聞かないだろうが」

「当たり前でしょう」

「でも、襲撃演習がなしに襲撃するのはどうかと思うなー」

「普段散々襲撃しまくっていて何を言うんだ」


 オスカーは低い声で部下達にうめいた。


続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427884039291


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