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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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テルの対策

 突然の呼び鈴に男達は動きを止めドアの方を見る。

 扉に近い、一人がのぞき窓から外を確認する。

 そこにはホテルの制服を着た獣人のメイドがいた。


「ルームサービスに参りました」


 のぞき窓の光の具合から相手がいることを理解したメイドは言った。


「ルームサービスは頼んでいないぞ」

「あー! それ僕です!」


 静かにしていたテルが大きな声で叫んだ。


「黙っていろ!」


 大声を上げるテルをキャノンが取り押さえようとした。

 余計な事をして段取りが狂うのはダメだ。此処で殺さなかったのはホテルの部屋で殺すと後始末が大変だからだ。予定通り殺害現場を移動し、殺人現場を艤装するためにもここでは捕まえるだけにしておきたかった。


「メイドはサービス不要だと追い返せ」


 ウィロビーはドア近くの部下に命じてメイドを追い返させようとした。

 ドスの効いた脅し上げて追い払おうと、どんな台詞が良いか部下は考え、ドア越しに言おうとする。

 だが、その前にテルの声を聞いたメイドがスカートの下に隠していたショットガンを取りだして、ドアに突き立てた。


「げっ」


 扉の前の男が逃げようとした瞬間にメイドはショットガンの引き金を引き発砲。

 ドア開けのために作られた特殊弾頭でドアに当たると表面一面に広がり、その衝撃でドアを部屋の奥へと押しやる。


「げふっ」


 扉の近くにいた部下は扉ごと広間まで吹き飛ばされた。


「襲撃か!」


 事態を知ったキャノン達はすぐに態勢を立て直そうとする。


「相手は一人だ! たたみかけろ!」


 だが突入してきたのは一人では無かった。

 廊下の壁に背中を貼り付けて潜んでいた数人の隊員が銃口を突き出して部屋の制圧を始める。


「がはっ」


 非殺傷性のゴム弾だったが多数の自動小銃が乱射され、当たれば骨まで軋む激痛が全身に与えられた部下達は押されていく。


「二人を盾にしろ!」


 テルとオスカーの救援部隊と判断したキャノンは命じた。

 二人を人質にとれば助かると考えたのだ。

 だが、二人とも取り押さえられる前に、窓に向かって走り、そこから飛び降りた。


 一般的なイメージとしてパラシュートを使うと安全に降下できると考えられている。

 確かに自由落下よりパラシュートを使えば減速する。

 だがそれは落下速度が抑えられるだけで、飛び降りるのと変わらない。

 せいぜい地上数メートル、ビル三階の高さから飛び降りる程度の速度に低下させるだけだ。

 そのため、パラシュート技能を持とうとする人間は、三階から飛び降りても平気なように着地の訓練を受ける。

 テルとオスカーは二人とも、空挺軍所属でパラシュート技能を取得している。

 三階程度ならば何ら装備がなくても無事に着地することが出来る。

 二人は地上に着地した瞬間、地面に倒れ回転し全身を使って落下の衝撃を吸収する。

 そして、立ち上がるとそれぞれ予め定めておいた避難場所へ向かった。


「くそっ!」


 逃げる二人に銃弾を撃ち込もうとするウィロビーだったが、すぐ横を銃弾がかすめる。


「ぬおっ」


 はす向かいのビルから狙撃され、下にいるテルとオスカーを撃つために構えることが出来ず、部屋の中に戻る。


「くそっ、突入してきやがった」


 テルとオスカーが外に出たのを確認した隊員達が部屋の中に入ってくる。


「お前達! 血路を開くんだ! 地下の連中にも上がってくるように伝えろ!」


 離脱経路確保のために何人か、ホテルの地下の搬入口と輸送網に人員を配置している。

 地下から地上に上げれば挟み撃ちに出来る。

 しかし、銃撃が激しい上に相手は完全防備で実弾を物ともせず部屋に雪崩れ込んでくるため持ちそうにない。


「おい! 早く地下の連中を呼び寄せろ」

「ダメです! 電話が通じません!」

「畜生」


 電話線を切断されたか、予め制圧されたか。おそらく後者だろう。

 これだけ激しく銃撃をしているのに上がってくる様子がない。

 それとも、初めから制圧されたのか。

 だが、そんな事を考えている暇などない。


「畜生」


 隣の部屋が制圧され、横からの攻撃を受けているのを見てキャノンは舌打ちした。

 このままでは完全に制圧され、自分も捕まってしまう。

 ウィロビーは一か八か三階の窓から飛び降りた。

 狙撃の心配があったため素早く窓から身を乗り出して落下した。

 幸いにも打たれずに済んだ。


「がはっ」


 だが、パラシュートの訓練を受けていないため身体を強打。反射的に手を出したために腕を骨折してしまった。

 脚にも痛みは出ているが幸い折れてはいないようだった。

 痛みを我慢して無理矢理走り物陰に隠れる。


「畜生」


 配下全員を捨て駒にしてホテルから命からがら逃げ出したキャノンはウィロビーの元へ向かった。


「!」


 その時、背後によってくる人物の気配がして、拳銃を向けた。


「待ってくださいキャノンさん! 私です!」


 ラケルの元へ送り出した部下だった。


「渡された情報を持ってきました」

「貸せ!」


 封筒を奪い去るとビリビリに破いて中身を見る。

 あれほどの動きをした連中が大臣の背後にいるのはどう考えてもおかしい。

 近衛部隊でもあんなに動ける部隊はいない。

 鉄道公安部の部隊も考えられたが、鉄道施設以外で、秘密の調査や偵察ならともかく、あんな実力行使など、事件の後始末を考えたら出来るはずがない。

 それに大臣に関係しそうな部隊にはキャノンの部下による監視を付けてある。だが、あそこまで動ける部隊が動く気配は無かったはずだった。

 そして、キャノンは手に入れたテルの経歴書を見てある項目を読んで愕然とした。


「畜生!」


 キャノンは悪態を吐き捨てる。


「どうしました」

「すぐにウィロビーさんのところへ行くんだ。とんでもない連中を相手にしているぞ」


 キャノンは配下一人と共にホテルから少し離れた駐車場に隠してあった車に乗り込みテルを連れ込むはずだった廃工場へ向かった。

続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427883911609


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