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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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似たもの親娘

「そもそもどうして男に化けていたんだよ」


 破廉恥な姿のレイに顔を背け、だが視線はチラチラと向けながらオスカーは尋ねる。


「テル様を狙う不埒な輩を警戒して動きやすいよう性別を偽っていたのです。男として行動していれば、女として行動する時、警戒が薄れます。執事ですので服を脱ぐなどして性別がばれる心配が非常に少ないですし」

「本当かよ」


 士官学校にテルと同じ生徒として入ってきたり、その後の軍務でも同じ部隊配置だったが、付いてきていた。

 どうやってばれなかったのだろうか。

 実際バレたことは無かったのだから、レイの目論みが優れていたのだろう。

 場合によってテルが揉み消していたのかもしれないが、大した物だった。


「お遊びで、揶揄うためにやっていたんじゃ無いのか?」

「私は勿論、ラザフォード家は帝国のために全身全霊を以て仕えて参りました。その忠節を疑うのですか?」


 真摯な口調でレイはオスカーを見つめて尋ねた。

 まっすぐなまなざしが、オスカーを貫く。


「嘘つきにしか見えないんだが」

「私の忠誠心が疑われるとは甚だ心外です」


 さめざめと不本意だとばかりにレイは言う。

 だが、怒りを堪えるようなテルの静かな態度からして絶対にレイの言葉とは恥遭うことが起きているとオスカーは思った。


「信じて頂けないのですね」


 オスカーの表情を読み取ったレイは溜息を吐き宣言した。


「仕方有りませんこの上は省内の仕事に全身全霊を以て取り組むだけです。」


 そのまま大臣室を出て行こうとした。きわどい衣装のままで


「一寸待てーーっっ」


 珍しくテルが大声を上げて止めた。

 さすがにそんな姿で鉄道省を歩かれると不味い。


「せめて普通のメイド服に着替えろ!」

「この場で着替えましょうか?」

「別室で着替えろ!」


 さすがにテルはレイを別室に叩き出した。


「なあ、あれ本当にお前のためにやっているのか?」

「証拠はないが、絶対に面白がってやっているだけだ」


 忌々しそうにテルは呻くように言う。




 数年前

 魔物祭の後、ラザフォード家のでの会話。


「お話とは何ですかお父様」

「ああ、実は昭弥が息子のテル――昭輝様の執事としてレイに頼めないかと言ってきた」

「でも普通執事は男の子に任せますよね」


 愛娘であるレイはドレス姿で言った。

「ああ、でも昭弥は疲れていたらしく、君の性別を男の子だと勘違いしていたようだ」

「会ったことがあるのに酷いです」


 まだ身体は発展途上の上、ショートカットでボーイッシュな顔立ちのために男の子と間違われることもあるが、言動は女の子のものだ。


「誰にでも間違いはあるよ。で、間違いは訂正せずにしておいたから、未だに勘違いしている。このまま執事にならないか?」


「どうしてですか、お父様」


 クビを傾げて尋ねるレイ。しかしその目には期待に満ちた眼差し、ラザフォード家の者特有の光を帯びていた。


「決まっているじゃないか」


 ラザフォードは目を輝かせる娘に同じ輝きを以て楽しげに答えた。


「その方が面白いじゃないか」

「ですよね。最高です。正体をばらす時のことを考えると今からワクワクします」

「お爺様にも頼んで了承済みだ。宮廷内でのごまかし、隠蔽工作は任せておきなさい。ただお母さんには言わないように、宮殿内で鉢合わせしないように手は尽くすから」

「ありがとうございます、お父様。きっと楽しい時間が過ごせます。正体がばれる前もばれた後も」


 こうしてレイはラザフォードの人間らしい理由で性別を偽って執事になった。




 時は遡り、レイのカミングアウト直後


「あなたたち何をしているんですか!」


 アウグスタの一件でレイが性別を偽ってテルの執事をしていたことがレイの母であり、ティベリウスの妻であり、ユリアのメイドであるエリザベス・ラザフォードの耳に入り、彼女は烈火のごとく怒った。

 そして旦那と娘を呼び出し、説教を始めた。


「いや、この方が面白いだろう」


 怒るエリザベスをティベリウスが、笑いながら宥める。

 当然に火に油を注いだがごとくエリザベスは怒る。


「巫山戯ないでください!」


 ただでさえ厄介な案件、昭弥を失った悲しみでユリアの情緒が不安定なのに可愛い息子であるテルに爆弾を仕込むようなことをされては


「貴方本当はお父様の息子なんじゃないでしょうね」

「まさか、北の大地の領主でルレティア王国の重鎮だった君のお父様とは昭弥と会う前は接点もないよ」

「どうだか、ご落胤と言われても納得するわ」

「君のお父さんが信じられないのかい? 血の繋がった家族なのに」

「だから知りたくもない本性まで全て知っているのよ。それこそウンザリするほど! 今日みたいな事なんて日常茶飯事よ! ていうか婿入りしているのに馴染みすぎ! あんたのほうがラザフォードの人間に見えるか」

「家族を信用できないなんて悲しいことだよ」

「信頼失墜の出来事ばかり起こしておいてどの口が言うのよ!」


 一日中エリザベスの怒声がラザフォードの屋敷に響き渡った。


続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427784679614


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