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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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レイの仕掛けた罠

「おや、麗しい花が置かれていたようですね」


 ベッドの上に座るアウグスタを見つけるとキザな台詞を堂々と言ったのは燕尾服を着たテルの執事レイだった。


「あ、あなたは」


 予想外の人物の登場にアウグスタは驚き声を震わせながら尋ねた。


「ああ、自己紹介が遅れましたね。私はレイ・ラザフォード。大臣の執事をしております。まあ秘書の代わりもしていますが」

「こ、ここは大臣のお部屋では」

「ええ、表向きには。ですがお忙しい方ですし、お会いになりたいと入り込む方がおりますので直前に別の部屋に切り替える事が多いのです。大臣は先ほどご用意した部屋でお休みになられています」


 アウグスタは混乱したが嵌められたことに気が付いた。


「それは失礼致しました。それでは」


 計画が失敗したのなら、直ちに立ち去らないと危険だと判断し部屋を出て行こうとした。


「ああ、お待ちを」


 レイの横を通り過ぎようとしたアウグスタだったが、レイに腕を掴まれ止められた。


「止めてください、私は帰ります。部屋を間違えたのは私のミスですが、掴まれる覚えなど、ひゃっ」


 まくし立てて部屋から出て行こうとするアウグスタだったが、レイは逃さなかった。それどころかアウグスタを引き寄せると抱え上げ、ベッドの上に放り投げてしまった。


「きゃあっ」


 突然ベッドの上に投げられて混乱するアウグスタの上にレイがのしかかる。


「これほどの美女を何もせずに返したとあっては、私の名が廃ります」

「ちょ、一寸何をっっ」


 叫ぼうとするがレイの細い指がアウグスタの小さな口を押さえつけた。


「そんな可愛らしい口が、金切り声を上げては台無しですよ」

「ぶ、無礼な」


 平手打ちをしようとしたが簡単に避けられた上に腕を腕を掴まれ、残りの腕も掴まれて頭の上で押さえつけあれる。

 レイは片手だったがアウグスタの両腕は力を入れても、まるで万力に掴まれたように微動だにしなかった。


「ああ、なかなか素晴らしく綺麗なお嬢さんだ。今夜は楽しめそうだ」

「な、何を、はうっ」


 レイの指がアウグスタの敏感な場所を触った。


「今宵は長い。一つ楽しみましょう」




「辱めを受けただとっ!」

「は、はい、お父様……」


 翌朝、ただ一人、生まれたままの姿で部屋に残されたアウグスタは、目覚めた。

 最初はおぼろげだったが徐々に昨夜の事を思い出し、自分の醜態に顔を赤らめ、手早くドレスを着ると乱れも直さずホテルを出て行き父親の待つ屋敷へ戻っていった。

 夜遅くを過ぎても戻ってこない娘に事が成就したと思っていただけにアミリウス伯爵はアウグスタの報告に衝撃を受け、ついで激しい怒りを爆発させた。


「おのれ! レイ・ラザフォード! タダでは済まさないぞ!」


 大臣と良い関係を結ぶはずだったのに、ラザフォードの青二才に自分の娘を手込めにされて、しまっては今後の縁談にも支障が出てくる。

 今すぐにでも決闘して亡き者にしようとしたが、伯爵は思い直した。


「そうだ、このことをネタにするとしよう。執事の不祥事をばらされたくなければ要求を受け入れよと大臣に詰め寄ることも出来る。すぐに鉄道省に向かうぞ」


 思い立ったが吉日とばかりに伯爵は鉄道省へ、アウグスタを連れて向かっていった。




「大臣! お話があります」


 伯爵はアウグスタを連れて大臣室へ押しかけた。

 途中、守衛などが止めようとしたが、スキャンダルをバラされたくなければ通せと強引に押し通してやってきたのだ。


「何のご用でしょうか」


 テルは静かに訪ねた。

 不快には思っていたが、またか、という思いが先に出た。

 闖入者が来る事など日常茶飯事で慣れてしまっている。

 怒ってたたき返しても良いのだが、最初は言いたいことを言わせて興奮を静めた後、カウンターを放った方が、相手を強烈に黙らせる事が出来る。

 だから、テルは伯爵が話すのを許した。


「昨夜、そちらの執事が私の娘に手を出したことについて糾弾させていただく」

「……どういうことでしょうか?」


 しかし予想外の話にテルは、驚き状況を把握できず、思わず問い返してしまった。


「そちらのレイ・ラザフォードが私の娘をホテルの部屋で辱めたのです」


 怒り心頭のよう巣を半ば本気で演じる伯爵。

 一瞬テルは目を大きく見開いた後、事情を悟り詐欺の被害者を見るような表情で伯爵に言った。


「何かの間違いかと」

「いいえ、娘が辱めをいきなり部屋に入ってきた貴方の執事にされたのです」


 娘が何故ホテルの部屋に入っていたのかという疑問を抱かせないよう伯爵は大げさに騒ぎ立て反論も考える余裕も与えず畳みかける。


「大臣! ご返答いただきたい! この失態をどう償っていただくのですか!」

「何かの間違いでしょう。事を荒立てない方がよろしいでしょう。今ならまだ間に合います。お引き取りを」

「とぼけないでください!」


 事を無かったことに、いや本当に無かったのだから荒立てないようにしようとするテルの態度に伯爵はごまかそうとする魂胆を感じて更に怒りの演技に熱を入れる。


「娘はあなたの執事に辱めを受けたのです! 執事の主人である貴方にも責任を取って貰いたい!」

「どうかなさいましたか?」


 そこへ当事者であるレイ本人が入ってきた。


「貴様、娘に手を出したのだな。大臣の執事とはいえ許さん! 主従共々帝国法に則り処罰してくれる」


 いくら貴族とはいえ、法治国家の帝国において犯罪を犯せば処罰される。

 厳正に処罰することを伯爵はレイに宣言した。


「何もしていませんよ」


 しかしレイはしれっと言ってのけた。


「夜通し語り合っただけです。なにか問題でも?」

「この期に及んで、言い逃れようとはなんと不埒な」

「では娘さんを調べてみましょう」


 そう言ってレイはアウグスタの前に行く。


「わ、私を辱めるつもりですか?」


 昨晩の事を思い出したアウグスタは顔を赤らめながら言う。


「いいえ、そんなことはしませんよ。少し調べるだけです」


 昨夜の、のしかかったときの笑みを浮かべてレイは迫る。

 アウグスタは恥ずかしさで顔を背ける。

 その姿を見てレイは優しい声で言う。


「ああこの姿だと不安になりますね」


 レイの甘い吐息がアウグスタの耳朶をなで上げ、彼女の身体に電撃が走った。


「では着替えましょう」


 そう言ってレイは自分の来ている執事服に手を掛けて脱ぎ捨はじめた。


続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427571263049


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