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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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思惑渦巻く晩餐会

 テル達が晩餐会を開いたのは国鉄直営のホテルだ。

 国鉄関連のイベントなども行われるし役員が主催する晩餐会なども引き受けている。

 この手のホテルが多数開業し、ライバルが増えていたが、最古参と言うことで伝統あるホテルとして一角を占めていた。


「さあ、計画を達成するために必要な事を行いましょう。これはテル貴方の戦場です」

「そうだな」


 上手く乗せられた気もするが、テルは今後の計画推進のため、晩餐会の行われるにホテルの会場へ向かっていった。

 離宮などで行う事も考えたが離れすぎているし、兄弟姉妹が五月蠅いので、駅近くのホテルを会場にした。


「それでは私は控え室に行きますので」


 車を降りるとレイはテルに告げた。


「本当に来てくれないのかい?」

「はい、執事が入るわけにはいきませんでしょう。全てはホテルの支配人の方にお任せしておりますし」


 晩餐会に出席するのは基本的にゲストだけで、そのお供は出席しない。

 一応レイは貴族の子供だが、現在はテルに仕えているし、晩餐会に招待されたわけでもないので会場に出てくることはなかった。

 会場内で補佐して欲しいのでテルはレイを招待しようとしたが、本人が固辞したため、実現出来なかった。

 色々思うところのあるレイだが、有能なことだけは否定できない。特に、晩餐会のような場の間を取り持つ才能は長けている。


「大丈夫ですよ。私がいなくても。堂々と、お入りください」

「ああ、分かったよ」


 殺したくなることもあるレイだが本当に有能であり、特に会話が巧みで相手に話をこうした交渉ごとでも含むイベントでは側にいてくれることが頼もしい。

 なのに、側にいてくれないのが残念だ。

 テルは、仕方なく会場内に入って行き招待客に挨拶を始めた。




「入ってきたわ」


 アウグスタは緊張した面持ちで会場に入ってきた大臣を見つめる。

 金髪碧眼で目立つ姉や弟と違い、黒目黒髪の大人しい、ハッキリ言って地味な風貌な為、あまりぱっとしない印象をアウグスタは、はじめ抱いていた。

 しかし、大臣としての活躍や軍隊での経歴などを聞いている撃ちに良い人だと思い始めた。

 確かにクラウディア殿下ほどの卓越した、ドラゴンを一人で退治したとか、万の軍勢を相手にした、などの派手なものはない。

 だが、戦場で着実に昇進していき、皇族としてのバックもあるだろうが、二〇を前に将軍の地位に就いている。

 将来性は抜群と言えるし、よく見るとどこか魅力のある人物である。

 最良とは言えないかもしれないが、少なくとも上々の部類に入る相手だ。

 皇族と縁戚になるのも家のプラスになる。

 だから、向かおうとした。

 主催者としてゲストを一人一人に挨拶をしている。

 やがてアウグスタの番になった。


「は、初めまして大臣。アウグスタです」

「どうもアウグスタさん、今日は楽しんでください」

「あ、ありがとうございます。それで、大臣……」

「大臣、お久しぶりです」


 アウグスタはこの後の約束を取り付けようとしたが、次の招待客が挨拶にやってきて押しのけられてしまった。


「あ、あの、あの、大臣」


 そのままアウグスタは人混みに流され、話をする事があ出来なかった。


「な、なんとかお話しをしないと」


 どうにかしてテルに近づこうとアウグスタは向かおうとする。


「って、どうやって行けば良いんですの!」


 だが、アウグスタの目の前にはテルを中心に人だかりが出来ていた。

 めったに出てくることのないテルに会おうと、老若男女問わず、大勢の人間が集まっていた。

 中にはアウグスタのように結婚目的で会おうとする少女もいる。


「こうしてはいられませんわ。どうにかして」

「お待ちください」


 だが、いつの間にか背後に控えていたドレス姿のラケルが止めた。


「ら、ラケル、どうして」


 下はふんわりと広がっているが上半身はピッタリとしたドレスで、長身でスラリとしていて、スレンダーながら胸と腰は張りでているラケルの身体の魅力を余すこと無く表現している。

 身体のラインが同性であるアウグスタでも見惚れてしまうようなプロポーションだ。

 一瞬強力なライバルとアウグスタが思ってしまい警戒したほどだ。

 だが、ラケルは穏やかな笑みを浮かべアウグスタの警戒感をほぐし説明する。


「正面から向かっても、その他大勢の一人でしかありません。挨拶が終わったら、すぐに次の人に変わるだけです」

「そ、そんな」


 だがラケルに言われて、テルの周りをよく観察すると確かに大臣は挨拶を終え二、三話した後、次のゲストに移っている。

 大勢を呼び込んだ晩餐会なのだから当然と言えば当然だった。


「ご安心ください策はあります」

「どのような策ですか?」

「誰にも邪魔されず、二人きりになれる最高の状況を作れます」

「本当に!」

「ええ、ですから私の指示に従ってください」


 アウグスタは一縷の望みに掛けてラケルの指示に従った。




「ふう、疲れた」


 最後の招待客を見送ったあと、テルは小さく溜息を吐いた。

 晩餐会は滞りなく進み、多くの人達と会うことが出来た。

 しかし人と会うのは疲れる。

 テレポーターに好意的な人もいるが、反対の人もいて中には熱烈な抗議を口にする人もいる。そのような人と応対するのも仕事の内であり、大変だった。


「お疲れ様ですテル」


 従者の控え室で待機していたレイが迎えに来た。


「テル、ホテルに部屋を用意しています。そこでしばらく休憩と衣装直しを」

「ああ、ありがとう」


 こうした準備を整えてくれることがテルにはありがたかった。


「僕は、ホテルとの打ち合わせがあるので後から行く。部屋番号は此方です」

「頼むよ」


 そう言って、テルはレイが用意してくれたホテルの部屋に一人で向かった。




「い、いよいよね」


 アウグスタはテルがやってくるとされる部屋の中で待っていた。

 晩餐会に出席して挨拶はしている。しかし、大勢の人が話しかけてくるためにテルと話す機会がなかった。

 機会が無いことを心配していたが、会場に現れたラケルが密かに大臣の控え室に連れ出してくれた。

 疲れている大臣は無下に追い出さないだろう。それどころか、疲れを癒やすように、お世話をすれば、好感度が上がりそのまま結ばれることも十分にあり得る。

 それこそ、アウグスタの望むべき事だった。

 だが待っていると落ち着かない、メイクは落ちていないか、ドレスに乱れは無いか、色々不安になっている。

 そして、ドアの開く音が響いた。


続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427571184004


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