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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第四章 リグニア鉄道最後の日
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革新の光と影

テルの発言の後大臣室に沈黙が走った。

 それほどの衝撃だった。


「気は確かか!」


 最初に声を上げたのはオスカーだった。


「帝国から鉄道を、繁栄させた鉄道を、廃止するのか。それも鉄道を生み出した鉄道省と国鉄が。そもそもそれでいいのかテル、親父さんが作り上げた鉄道だろう」


 本人は生前から嫌がっていたので行われていないが、リグニアに鉄道を発展させた昭弥は、生前より一部の人からは神のような扱いを受けていた。

 勿論鉄道をもたらし、帝国を発展させた功績からだ。

 その鉄道を、父親が発展させた証である鉄道をテルは廃止しようとしていた。


「残念だが鉄道よりテレポーターの方が優れている。バックアップとして一部残しておくが大半の鉄道は廃止する」

「新しい交通機関が出来たからといって簡単に廃止するのかよ」

「鉄道も開通する前に栄えていた荷馬車や駅馬車を鉄道は滅ぼしていったよ」


 昭弥が開通させる前に、街道を通って各地を結んでいたのは荷馬車や駅馬車だった。

 だが、鉄道の開通により、より安価に大量に確実に遠隔地を結ぶことが出来るようになった。

 当然に荷馬車や駅馬車は運ぶ物を奪われていき、鉄道駅から周辺の店や工場へ運ぶ程度に縮小されていった。


「優れたシステムが出来たとき、その座を譲るのは当然のことだ。今までもそうだったしこれからもそうだ」


 日本のSLの活躍の場を奪ったDD51が二一世紀に入って後継機にバトンタッチして廃車されていくのと同じで、後継に譲るのは当然だった。


「だけどよ。国鉄には百万以上の職員がいるだろう。他にも私鉄に職員が大勢いるだろう。彼らはどうするんだよ」

「彼らの為にも、テレポーターを導入するんだ」

「どういうことだよ」

「新しいシステムを大々的に導入するには物流に関して詳しい人員が大勢いる。旅客はお客様との対応、貨物は目的地へ適切に送る必要がある。そのノウハウを持った人間は鉄道関係者だ。彼らをテレポーターの運用要員にして再就職させる」

「だから、テレポーターを導入するのか」

「新技術を上手く使わないとね」


 かつて昭弥のいた世界でポラロイドカメラというインスタントカメラがはやっていた。

 当時のカメラはフィルムを写真屋に送り現像する必要があり、半日から二日はかかった。だから撮影してすぐに見ることは出来なかった。

 そんな中、唯一その場ですぐに見れるのがポラロイドカメラだった。

 特殊なカメラと写真を使い、撮影後すぐに写真が出てきて数分後には像が浮き出てくる、当時としては凄い技術だった。

 しかし、九〇年代にデジタルカメラが急速に普及し、携帯やパソコンに搭載されるようにナルトポラロイドカメラは急速に衰退。

 ポラロイド社は倒産した。

 実は初期のデジカメを開発したポラロイド社だったが、フィルムから利益を上げるビジネスモデルに変わる、システムを構築できなかったために開発に成功しながら、倒産してしまったのだ。

 テルは父親からそのことを聞いており、新技術においていかれないように指導されていた。

 テレポーターという非常に便利な発明品を手に入れながら活用しないわけにはいかなかった。


「テレポーターの利便性は鉄道を上回る。早速、計画を進めよう」

「けど、これはあのジャネットが関わっているんだぞ」


 ジャネットという人物は王国および帝国においては災害と同義語であるという認識だった。

 特に鉄道業界では探偵、共産主義と並んで忌み嫌われている。

 昭弥を召喚したのは無理矢理連れてこられたことで割り引かれるがまあ良い。

 だが、積雪を排除するために猛烈な風を起こしてバラストを吹き飛ばしたのはご愛敬程度。

 だがケーレス戦争の時、ブリタニア奪回作戦でジャネットの凍結装置が使われたが途中で壊れて、送り込まれた鉄道車両の大半が取り残され、復旧に多大な労力を使ったことは今でも古参鉄道員の間で怨嗟と共に語られる話だ。

 そんなジャネットの発明を使用するのは不安でしかなかった。


「その不安も勿論分かる。だが、現時点という条件付きだが鉄道研究所が行っている試験で、ことごとく問題なしとなっている」

「けど、何処か欠陥があったら」

「勿論テレポーターに何かあった時に備えて、万が一のためバックアップの計画、使い物にならなかったときのことを考えて鉄道や自動車を中心とした代替計画は立てておく。だがテレポーター設置計画はこのまま進める」

「けど、鉄道が廃止になるんだぞ。すんなり受け入れられるのか」

「この発明を使わなかったこと、隠蔽したことがバレたときの実害の方が大きい。それに魔術とは言え、これは技術だ。同じ事をすれば誰だって作れる。いつか誰かが発明する」


 技術とは、同じ手順をたどれば、同じ結果になる手段の積み重ねである。

 魔術は個々人の力量に左右されることが多かったが、技術の思想が入ってきたことで万人が使え始める様になった。

 テレポーターもその一つで、誰かが同じ物を思いつけば、作り上げられてしまう。隠しても誰かがいずれ発明してしまう。


「ならばここで実用化して世間に公表し、活用した方が良い」

「この後絶対に大きな騒ぎになるぞ」

「そのことを含めてマシだと判断した」

「後悔しないか」

「これまで多くの後悔をしてきた。今更増えたところでなんてこと無いよ。むしろ後悔するかもと思って何も出来なくなる方が恐ろしい」

「分かったよ」


 テルがそこまで言ってはオスカーは最早何も言えなかった。


続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427570718239


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― 新着の感想 ―
[一言] あぁ… 今章のタイトル見たらそんなことが書いてあるじゃないか ここまで頑張ってきたんだよなぁ
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