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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
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ネブラ神殿の地下駅

「いや、あんなに上手くいくとはさすがテル君だね」

「たいしたことないですよ」


 テルとエリッサは開業したばかりのネブラの新しい駅の前にいた。

 古い駅を取り壊し地下化。

 残った地上の敷地をホテルと商店街にした新しい複合ビルだった。


「いやいや、お礼を言わせて貰うよ。テーヌがこんなに喜んでいるのを見るのは久し振りだし」


 エリッサの横にいる相変わらず前髪に隠れていて表情は見えづらいが、口元が笑っているし雰囲気が明るかった。


「さて、早速、中を見せて貰うか」


 そう言いつつ、エリッサは先陣を切って駅に入っていきテルとテーヌも跡に続いた。

 駅に降りると既にホームには列車が止まっていた。


「すぐに来るんだね」

「国鉄と私鉄が交互に列車を乗り入れていますからね。列車の運行密度は高いですよ」

「それに上客も多いように感じるけど」

「沿線に駐車場を設けましたからね。駐車場に車を置いて神殿へ行く。空いているし駐車場を気にしないで走れるので楽ですよ」


 意外なことだが駐車場は、かなりスペースをとる。

 特に遠隔地の客を見込んで、沢山の車を止めようとする場合は広大な敷地が必要とする。

 アメリカのある調査では商業地の実に六六パーセント、三分の一が駐車場だったという事例がある。

 アメリカにあるような巨大なビルの周りに建物面積を超える駐車場がある光景など当然と言える。


「狭い門前町が駐車場で埋め尽くされるのは避けたいですしね」


 地下駐車場を作りまくるという手段もあるが、地下となると大規模な工事になり、地上の建物を取り壊したり傷つける可能性がある。

 それを避けるためにもネブラの外に駐車場を設けて鉄道で移動して貰う事にした。

 町中の狭い路地に自動車が溢れるのを避けるためでもある。


「しかし面白いことを考えるね」


 最初の地下階のホームに並ぶ路面電車をエリッサが言う。


「市内を走る路面電車も私鉄へ相互乗り入れさせるなんて」


 通常の鉄道と路面電車の軌間が同じである事を利用して、鉄道線に路面電車を走らせ、駐車場のある周辺駅を結んでいる。

 標準的な車両がレールから一メートルの位置にドアがあるのに対して、路面電車はできるだけ乗り降りしやすくするため、三三センチという低い位置に床面が作られている。

 そのため、路面電車用のホームを作る必要が出てきて、かつての広島の宮島線のように高低のあるホームが建設されることになった。

 かつての終端駅では別々のホームへ行くことになるが、乗り入れてくる私鉄は路面電車用のホームも用意する事になり余計な投資をさせてしまった。


「意外と面白かったけど」

「電車型か路面電車が来るかでホームを移動してもらう仕様になって仕舞い、お客さんを移動させる手間を掛けさせて申し訳ない」


 前述した宮島線でも高床車――電車型の車両か、路面電車の車両でホームが違うため、来る電車の表示に合わせてホームを移動する光景が見られていた。


「それでも最小限に合わせているだろう」


 ただ、テルも移動を最小限に抑えるために、島型ホームにして内側を電車用、外側を路面電車用にしてホームの階段とスロープで移動を最小限に、また路面電車側の線路を盛り上げる――電車が六両編成、路面電車が二両編成のため、車両が少ない分線路に傾斜を作ることが出来るのを利用して段差を少なくする工夫をしていた。


「さあ、出発だ」


 エリッサがそういって、路面電車に乗り込みテル達も後に続く。

 乗り終えると車掌がドアを閉めフートゴングを二回踏んでチンチンと鳴らし発車の合図を送り、運転士は路面電車を発車させた。

 車両は軽快に動き出し力強く坂を上っていく。

 すぐに町の通りへ出てきて古い町並みの中を通る街路の中央に設けられた専用軌道を走っていく。


「すいすい進むね」

「法律を変えさせて専用軌道にして、自動車の進入を禁止しましたから」


 路面電車の軌道内に自動車が進入することは禁止している。そのため渋滞していても気にせず行ける。


「車も少ないね」

「外から来る車を制限していますからね」


 テルが考えた方法の一つが、ネブラの町に入る車への通行料、特に自家用車から料金をとることだった。

 自家用車は大きさに比べて幅をとる。広大な駐車場が必要だし渋滞の原因になる。

 町の中に入る車を少なくするためにも通行料を取っていた。

 郊外の駐車場に誘導する為でもあるが、交通渋滞を抑えるための方法の一つだった。

 特に遅れること無く路面電車は神殿前の駅に到着する。


「いやあ、速いし楽だね」


 エリッサは上機嫌だった。

 神殿はテーヌの物だし、実際に計画して実行させたのはテルだが、仲介者として満足のいく結果になったことを喜んでいるのだろう。


「凄い光景だね」


 神殿前の広場にやってきたエリッサはその光景に驚いた。

 大勢の信徒と観光客が開いた円形の穴から階段をひっきりなしに上って来る。


「国鉄の新幹線が相互乗り入れしてきますから。全国から人が降り立つので人が沢山出てきます」

「遺跡を見る人も多いね」


 階段の両脇には建設中に見つけ、表面を固めて掘り出された遺跡がフロアにまるごと置かれていた。

 階段を上ると上から俯瞰できるようになっている。

 しかも年代順に間隔を開けて積み重ねられていて、ビジュアル的にわかりやすい。


「文字で説明するよりも、こうして本物を見やすくした方が良いですからね」




 人波と共に神殿へ向かう道を歩く。

 森の中の参道を通った後、神殿へ。

 そこを見終わると横の出口から出て行き歩いて行くと、次の地下鉄駅へ到着した。


「地下鉄の駅を二つも作ったんだね」

「人の流れを逆流させるわけにはいきませんから」


 広い参道だが、行き帰りの人が混在しているのは衝突事故を起こす可能性があるので、避けたかった。

 そこで、神殿の横に地下鉄駅を作り、神殿から帰る人々を誘導するようにしていた。


「相変わらずそういう計画を立てるのが上手いね」

「まだまだですよ」

「また謙遜を。まあいい、それより話題のモノレールを乗りに行こう。あの駅からも行けるのだろう?」

「ええ、新しく作った地下鉄の終着駅がモノレールの乗換駅です」

「では早速行くとしよう」


 エリッサは二人の手を取って駅に向かっていった。

続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427377625553


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