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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
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地下から出てきたもの

「まさか建設途中で問題が起こるなんて」


 テーヌ神殿前に作られる駅予定地の建設現場でエリッサは呟いた。

 エリッサの言葉を聞いたテーヌは、前髪で見えないが泣きそうなほど困った顔をしてテルとエリッサの間で顔を振っていた


「まあ、予想されたことではありましたけどね」


 現場を訪れたテルはテーヌを落ち着かせようと慰めるように言う。


「古い神殿の遺構が出てくるのは良くある事です」


 建設現場から出てきたのは、数百年前の神殿の跡地だ。

 山に近いため、山崩れで押し流され、土台が残ったのだろう。

 それが出てきた。

 古い神殿が埋もれた後、その上に今の神殿を建て直したのだ。

 ただ、そのような事はリグニアでは何処でもありえることであり、特に古くから都市が建設された旧帝都近くでは何か掘れば遺跡が見つかる。

 そのため、地下鉄が遺跡の下を通る羽目になり、建設費が非常に高くなっている。

 前例が多いため、驚きはしなかった。


「しかも、その下から更に古い時代の町が出てきたんだしね」


 そして古い神殿跡のさらに下からより古い都市の跡、遺跡が見つかった。

 重要な場所、集落や町が作りやすい場所は、時代を経ても作りやすく、住みやすい。

 都市の下に古い時代の都市が幾層にもわたって積み重なっていることも珍しくはない。

 例えば、トロイアの遺跡は、九つの時代の遺跡が積み重なって出来ている。

 歴史ある地域のばあい、時代の違う古い遺跡が幾層にも重なることは珍しくない。


「ず、ずっと前の事だから、忘れてしまっていました……」


 殆ど泣き声でテーヌが答えた。


「まあ、こんなにも古いとね」


 ほんの数年前の地中工事でも埋設図が無くなったら見つける事は不可能だ。

 軍事機密の名の下、軍用上水道が建設されたが、戦争で敵の手に渡るのを防ぐために焼却処分。埋設場所が分からなくなったことがある。

 そして、鉄道を通してリゾート地にしようとしたら、所在不明の上水道を損傷し上水道が使用不能、軍用施設だけで無くその周辺の市町村も断水してしまう可能性があるため開発不可、中止に濃い混まれた開発計画があった。


「地下に何が埋まっているか分からない事が多いからね」


 だからテルはそんなに気にしていなかった。


「でも簡単にどかせるだろう」

「そうでもありませんよ。古い遺跡群は保護の対象ですから」


 経済発展に伴い余裕の出てきた人々は教養を身につけようと帝国の歴史を振り返ろうという動きが出てきていた。

 各地に散在する遺跡群を見直し帝国の栄光を改めて認識しようとする動きが盛んだ。

 これには昭弥も積極的に関わった。

 歴史教育を積極的に行い各地の名所旧跡を復活再現さえしていた。

 人々が名所旧跡に脚を運ぶのに鉄道を利用してくれれば収入が増えるからである。

 かくして国鉄予算からも文化事業として遺跡の保護活動を行い、遺跡の保護が行われた。

 活動が安定すると新たに出来た文部省に事業を譲渡したが、新たな譲渡先の文部省は自らの権益として各地の遺跡の保護活動に熱心だった。

 新しい遺跡が出ると保護の予算が出るため積極的に保護に乗り出してくる。


「こっそり捨てたりとかしたら?」

「ダメですよ。それでもめたことがあるんですから」

「ほんとに?」

「ええ、それも激しかったですよ」


 昭弥が鉄道大臣を務めていた最後の年、ルテティア王国で最初に建設した路線がさすがに古くなったので壊して新しい路線を作るか、売り払って再開発しようかと考えていた。

 しかし、それに待ったを掛けたのが文部省遺跡保護部門だった。

 鉄道近代化の第一歩である路線であり、帝国の重要な遺跡であり、取り壊すなどとんでもないと文句が来たのだ。

 作った本人である昭弥は最早実用に向かないのなら破棄して構わない意向だったが、文部省がかたくなで調整は難航。

 その間に、死亡してしまったので、調整は暗礁へ乗り上げた。

 そして死後、その偉業を残そうという運動が盛んになり、結局重要史跡として残されることになった。

しかもとっとと建設してる仕舞えと再開発派の過激派が勝手に遺構の一部を壊し、乱闘騒ぎになったこともあった上に、文部省が乗り込むきっかけを与えてしまった。

 その後始末が尾を引き、テルが大臣に就任したとき、ようやく解決したほどだ。


「文部省が怒りますよ。それにテーヌさんの物なんですから勝手に潰すわけにもいきません」


 そういってテルはテーヌの方を見ると、テーヌはビクッと身体を震えさせた。


「あー、起こっているので半句、どうしたいのか聞きたいんですけど」


 おどおどしながらもテーヌは必死に言葉を紡ぐ。


「の、残しておいて欲しい、わ、私の神殿を、招いてくれた町だし、また、忘れないように、したいし」

「けど、残しておいても役に立たないだろう。残しておいたって活用しないのなら無意味だよ」

「家の片付けみたいなノリで言わないでくださいよ」


 テーヌに軽く言うエリッサにテルは呆れる。


「まあ、普通に残しますけど」

「残すのかい?」

「ええ、こういうことに国鉄も鉄道省も積極的ですから」


 かつて遺跡の保護、修復を行っていたためその手の修復技術を国鉄は保有していた。


「でもどちらを残すんだい? 時代が違う遺跡が積み重なっているんだよ」

「ならばそのまま、残します。で、見えるように作ります」

「そんなこと出来るのかい?」

「立体的に残すんですよ。元々地下に駅を作る予定でしたから、間隔は開きますけど、まず上の遺跡を掘り出して、表面にプラッスチックなどを吹き付けて固めたあと、その一面をそっくりそのまま掘り出します。で、次の古い遺跡を同じように掘り出して固めてまるごと掘り出し、地下鉄の駅や商店街を建設。建設終了後は、掘り出したものを各フロアーに展示しますよ」

「大胆だね」

「良いんですよ。こうして広く作れば最高や換気が良くなりますし観光名所にもなります。それに文部省から遺跡保護の補助金をいただくことも出来ますし」

「ちゃっかりしているね」

「こうでもしないと事業なんて出来ませんお金を引っ張れるところから引っ張ってくるのが事業の責任者というものです」

「本当に父親に似てきたな」


 テルの言動を聞いてエリッサは遠い目をして言う。

 そんなことは知らずにテルはテーヌに向かって言う。


「だからご心配なく」

続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427354667365


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