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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
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様々な制限

「ネブラの街を改善するために鉄道を通すのにどうして地下鉄を通さないんだよ」


 テルの言葉にエリッサは驚いた。

 ネブラの街を救うための地下鉄建設案なのに、街の中に駅を作らないことを提案されては本末転倒ではないのか。

 エリッサはじっとテルを見つめて暗に抗議する。


「落ち着いてください」


 テルは落ち着いて訳を話した。


「やはり土地問題が心配なのが一つ。二つ目は古い町並みなので、都市機能が限界の状態です。増えた人口をさせることが出来ません。これから大勢の人々がやってくるので、彼らに対応するだけの人を集めないと無理でしょう」


 コンビニで少ない人数で対応しようとするとレジがパンクするのと一緒で、観光は訪れる人をもてなす人々、土産物屋の店員から、バスの運転手、ホテルマンや彼らを支える料理人や清掃人、洗濯屋など大勢が必要だ。

 彼らがいなければサービスの質は低下して観光客が来なくなってしまう。

 そして彼らの家族が住める場所に生活のための施設、家の他、商店街や公共施設、教育のための学校なども必要となる。

 なによりテーヌ神殿を維持するための施設、神殿の事務所や修道院、建物の修復施設――神殿の保存のため、観光客が恒常的に来てくれるための外観維持にも必要だ。

 そのための土地が必要だがネブラの中に空いている土地など無い。


「あと、古い町並みなので、地下を開発するとなると上の建物も一度取り壊す必要が出てきます。せっかく残った建物をできる限り残しておいた方が良いでしょう」


 地下工事は建物を支える基礎に手を入れるため、大規模になりやすい。

 手っ取り早いのは取り壊して新たに作ることだが、歴史的価値のある町並みを破壊するのはためらわれる。

 それに、観光資源であり後世に残すべき遺産だ。

 だから門前町ネブラの地下開発、駅から周辺の建物へ通じる通路を作ったり、地下駐車場を作るのは避けたい。


「門前町の外側からぐるっと回り込むように地下鉄を通して、途中に駅を設け、門前町の外側に新しい駅を作りましょう。そこに都市機能を新設して効率的にしましょう」


 あと、テルは口にはしなかったが、役所や学校などの都市機能が新しい駅の近くに集中することで行政サービスを利用しようとする地元の人々や通学生が新しい地下鉄を使ってくれる、旅客収入が得られることを期待していた。


「けど、地下鉄の通らない側の街はどうするんだい?」


 エリッサは疑問を口にした。

 交通渋滞で麻痺しているのだから路面電車やバスだと上手くいかないだろう。


「そこは路面電車とバスで結びましょう。鉄道が出来る事で門前町に入ってくる自動車の量は減るはずですから定時運行が可能になるはずです」

「それもそうか」


 テルの考えにエリッサは安堵した。


「で、この地下鉄を奥の湖の近くまで延伸して交通の便を良くします」

「おいおい、それは無理なんだろう。湖の間までは急な傾斜で、鉄道を敷くとなると遠回りになるから巨額の費用が掛かるんだろう」

「はい、その通りです。ですが、傾斜が急になるのは最後の区間だけなので、傾斜が緩いところは鉄道を敷くことが出来ます」

「けど結局湖まで敷くことが出来ないから、渋滞する道路にバスを走らせる事になるんだろう。意味がないと思うけど」

「そこで、傾斜のキツい部分はロープウェイをを使って運び上げます」


 ロープを使って移動するため傾斜がキツくても使用可能だ。

 アプト式も考えていたが、スピードが遅く、新たに線路を敷設する必要がある、所要時間が長いとバスに流れてしまう事を考えロープウェイを洗濯して

 すでにテルが各所で導入していることもあり、敷設は簡単だと考えていた。


「え……」


 しかしテーヌの顔は曇っていた。


「何か問題でも?」


 ロープウェイを提案した時、テーヌの顔が曇ったことをテルは疑問に思った。


「あー、言うのを忘れていた僕が悪いんだけどさ」


 気まずそうにエリッサは言う。


「実はすでに奥の神殿へ向かうロープウェイの導入は検討されていたんだ」


 急傾斜でも敷設でき、ある程度輸送人員が見込め眺望が良いと言うことで、ロープウェイが開発された時、各所で、特に山岳地帯で導入された。


「けど、湖に至るまでの間の大峡谷へ送る日の光も、そこからの眺望も信仰の対象でね。道路を作るときも眺望を邪魔しないよう、大峡谷を横断する橋を作らないよう建設されたほどなんだ」

「うわあ」


 峡谷を横切るように通すのが最短距離なのだが、それでは通せない。

 遠回りに設置したら余計に費用がかかるし、支柱間の距離が長いとロープウェイのロープが垂れ下がり、地面と接触する可能性もある。

 そしてやはり距離が長くなるので所要時間が長くなってしまう。

 バスなどより短く出来る自信はあるが、テルとしては、今後のバスに対する優位を確保するためにも、短くしたい。


「どうしたものかな」


 手詰まりになって考えた。

 考え込むテルの眉間にしわが寄った。


「あ……あの……」


 悩むテルを見かねて困った様子でテーヌは声を掛けようとしたが、レイが肩に手を掛けて止めた。


「大丈夫ですよ」

「で、でも、私たちの信仰やルールで、困っているんだから……」

「けど、それはあなたたちにとって大切なルールのでしょう」

「は、はい」

「テル、いえ大臣もそれは分かっておられます。鉄道でも大事な事がありそれを決しておろそかにしないよう日々考え計画しています。だからこそ貴方方の信仰やルールも尊重して配慮した計画を考えているのです」

「で、でも」

「大丈夫ですよ。それに今取り下げてもテルは配慮した計画を立ち上げてしまいます。ハラハラするでしょうが見ていてください」


 そういってレイはテーヌとテルの方を見ていた。

 机の上に広げられた資料を俯瞰し、手元のノートやメモに様々な案を書いていく。

 相変わらず眉にしわを寄せているが、口元には笑みがこぼれている。

 悩みつつも楽しんでいるようだった。


続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427237678530


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