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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
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地下鉄にしましょう

「やはりダメなのですか……」

「いや、ダメというわけでは」


 テルの難しいという言葉に、テーヌは悲しそうに俯く。口調と雰囲気から前髪で見えないのに、泣いているように思えてしまってテルは慌てた。


「……兎に角、一つ一つ片付けましょう。まず、神殿への参拝客が多いことです」


 都市の導線、住民と巡礼者と観光客が注していることが問題だった。

 そして全員が同じ交通機関、バスと路面電車そして自動車を使っていることで交通手段も街の道路をパンク状態なのが問題があった。


「交通渋滞が酷いのですから、車を使わずに済むようにしましょう。人通りは多いので、やはり鉄道が良いでしょう」

「でも、鉄道を街の真ん中に通すの難しいんだろう?」


 テルの提案にエリッサは疑問をぶつけた。

 市街地は密集していて鉄道を敷けるような場所は無い。


「地下から通しましょう。地下鉄を掘って神殿の近くに駅を作ります。見たところ神殿の前は敷地がありそうですが」

「はい、庭園や広場として開放しています」

「そこに駅を作りましょう。傾斜が掛かっていて深く掘る必要がありますが、地表近くは地下街を設けて、人の滞留が起きないようにしましょう、神殿の施設の一部も地下に移します」

「あ、穴の中に人々を入れるのは如何なものかと」

「換気は十分に考慮していますが」

「あー、テル君申し訳ないんだけどさ」


 引っ込み思案で説明の下手なテーヌに代わり、効率重視のテルに伝えた。


「テーヌは日の光も司る子でね。お日様の光が当たらないところへ宗教施設を移すのは難しいんだ」


 引っ込み思案な子が日光という明るいものを司ることに違和感を感じたが仕方ない。


「ああ、そういうことでしたか」


 初めて聞いたがテルは別に驚かなかった。


「まあ、そういうことは理解しています」


 テルは気にしていないように言った。

 多神教で幾多の神々がまつられる帝国ではよくある話だった。それぞれの神に様々な決まり事がある事も。

 そのため国鉄や各私鉄は宗教施設近くに駅施設を建設する時、施設に配慮してデザインや形状、館内配置を考える事が多い。

 日光を取り入れることぐらいは簡単だ。

 鉄道そのものを禁忌とされ敷設自体が無理となるより、よほどマシだ。


「長い溝を掘ったり、穴を開けたりして、半地下にしましょう。天窓や、穴を開けたりして日光が入る用意しましょう」

「それで大丈夫なのかい?」

「ええ、半地下でもお日様の光は入るので意外と明るいんです」


 完全に窓の無い部屋は暗いが、天窓一つでもあると意外と明るい。

 国鉄や田園都市鉄道が経営するデパートの一部建物は、地下まで吹き抜けとなっており、天窓から光を入れて、店内を明るくする工夫がなされている。

 駅でも昭弥が東横線渋谷駅を真似て吹き抜けの穴を作り換気と採光、そして出入り口にしている場所も多い。

 テルはそれを応用しようと考えていた。

 そもそも昭弥が設計した自らの住居は、天窓突きの中庭の周囲を建物で囲う形だったためこのような設計はテルにはなじみのものだ。


「敷地内の建物を一部移転したり、広場に出入り口を兼ねた穴を開けることになるけど大丈夫でしょう。これで観光客を駅に入れて、門前町の方は巡礼者と地元民の方々が入るようにします」

「で、でもそれだと、観光客が神殿と駅の間を往復するだけになっちゃう」

「そうだね。これだと門前町の方へ幾人が少なくなり観光客の相手をしていた店は潰れてしまうね」


 テルの提案にテーヌとエリッサは不安を募らせる

 駅で降りて神殿で参拝した後、すぐさま駅に戻って帰ってしまうことをテーヌは心配した。

 世間がスピードアップしているせいか、どこにも寄らず帰ってしまう観光客が多くなり人通りが多い場所だが利用者が少なくて経営が難しくなっている店は鉄道のテナントでも多い。

 駅から離れた店などは、特に顕著だ。

 勿論、テルはそのことも承知していた。


「その対策として、新たに作る駅の中に商店街を作ります。それなら列車の待ち時間に改札前の商店街でゆっくりと時間を潰しつつショッピングが出来るでしょう。出店できるのは門前町の店を優先します。出店する気が無いのなら貸し出すのも良しとしましょう。これなら問題ないのでは」

「それなら、いいです」


 何代にもわたって自分を支えてくれた人々を見捨てることは無いという事にテーヌは安堵したあ。


「それでも門前町の中にも駅を作るのは大変だろう」


 ネブラの街は密集していて地下鉄の工事をするのは大変だ。

 チェニス田園都市の工事の安全祈願を請け負うようになってから鉄道には詳しくなりつつあるエリッサは地下鉄工事でも土地が必要な事を知っている。

 シールド工法を取るにしても、作業基地となる場所や駅は、大きく掘り下げる必要があり、意外と土地を必要とする。

 そのための工事をエリッサは危惧した。

 しかし、テルはあっさりとその危惧が杞憂である事を伝えた。


「いや、門前町の中に駅は作りませんし、そもそも通しません」


続きは


https://kakuyomu.jp/my/works/16816452220020846894/episodes/16816700427237234599


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