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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
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仮復旧

 昭弥の作り上げた都市を歩いていると気がつくことがある。

 その一つが電柱がないことだ。

 地下道を作り上げると同時に共同溝も設置して、電気水道ガスの各種インフラを通し、通り周辺の建物に供給している。

 電線を敷設せずに済むという利点の他に、共同溝を作ることで電気水道ガスの各管の点検、改修が簡単になるし、万が一劣化して漏れなどが起きても道路を掘り返して修理する必要が無いため、道路工事の頻度が下げられるからだ。

 しかし、地面が陥没した場合はその限りではない。

 共同溝を支える地盤が消失したら、落っこちるしかない。

 陥没事故で共同溝は勿論崩壊し、インフラは寸断。

 通り周辺の建物のガス水道電気は途絶した状態になっているはずだ。


「すぐに復旧作業を行う必要がある。問題なのは再発防止と工事の再開だ」

「続けるやる気なのか?」

「当たりまえだ。ここが開通しないとリニアは全通しない」


 たとえ全長数百キロのリニア新幹線でも途中でほんの数メートル途切れていたら運転など出来ない。

 乗り降りの起点となる駅となれば更に重要だ。


「近くの地下鉄工事現場があるな。開削工法で行っている」

「良し、そこの資材を使う。下の硬い岩盤に口を打った後、外側を板で仕切って砂の流入を防ぐ。安全を確保したら充填剤を入れつつ、埋め戻す」

「埋め戻す?」

「ああ」

「土砂を入れて埋め戻すのか?」

「崩落した地下街を復興するにはそれしかない。少なくとも、地下街を優先して復旧するには、埋め戻してその上に板を敷いて仮の構造物を作って復旧させる以外にない」

「泥縄だな」

「仕方ない、一番重要なのはインフラの復旧だ。インフラの共同溝だけでも早急に復旧しないと後々大変だ」


 入ってくる報告でも、崩落現場一帯の電気ガス水道が途絶している。

 これを復旧するしなければ町は死んでしまう。


「最優先は共同溝の復旧を最優先。次に道路の復旧、地下街の復旧だ。だが、後々の作業がしやすいように色々と手を打っておく。そのために杭を打って仕切りを作る」

「最初からそうしていれば良いんじゃ無いのか」

「したかったんだろうな。でも、上には地下街、更に交通量の多い道路だ。仕切りを作る工事だけで半分通行止め。当局許可が降りなかったようだ」


 車の保有台数が多くなったため、渋滞も激しく、通りを半分でも止めることに道路を管轄する内務省から渋い顔をされていた。

 それが一番の間違いだったが、起きてしまったことは仕方ない。


「兎に角、埋め戻して共同溝と道路だけでも元に戻す」




「仮復旧とはいえすげえな」


 真新しい道路を見てオスカーは感嘆の声を上げた。

 歪みのないアスファルトの舗装道路。すでに車線を示す白線が塗られており、道路幅一杯に陥没していたと言われても信じられない。


「まさか一週間でこんなに完璧な道路が出来るなんて」

「本当に仮復旧だよ。共同溝を構築出来るまで埋め戻し、その上に構造材を作って、鉄板を敷き詰め、土をかぶせ、アスファルトで舗装したからな」


 ため息を吐くようにテルが言う。

 地下街を復旧させるために、鉄の構造材と屋根になる鉄板を用いて空間を作ってその上を埋め戻した。

 地下街はがらんどうだが、道路は使用可能になっている。


「ここ、自動車通ること出来るの?」

「総重量三五トンの車両まで耐えられる。積載オーバーでも五〇トンまでは耐えられるはずだ」


 鉄道に対抗しようと積載限度を超えて積み込もうとするトラックが増えており、道路が荒れている報告が上がっている。

 過積載で道路がタイヤの重みで凸凹になり補習が間に合わないと内務省の道路担当部局が泣きついてきて、モーダルシフト、トラック輸送から鉄道輸送への転換を進めていたところだ。


「周辺での過積載の取り締まりを行うように依頼するよ」

「そうか。で、本格的な復旧と復興はどうなんだ?」

「今進めている最中だ」


 仕切りで区切られている空間を残して埋めたため中はがらんどうだ。

 この後、地下街を構成する構造物を作り上げ、周囲を充填剤で固めていく。


「地下のリニア駅はどうするんだ?」

「工事は再開する予定だが、その前に片付けないといけない問題がある」

「反対運動か?」

「ああ、リニアに懐疑的な人々が今回の工事で安全を確保できないと反対を訴えている」

 事故が起きた直後から反対運動が巻き起こり国鉄の本社や鉄道省の近くでデモが起きている。

「警察や鉄道公安の機動隊を使って蹴散らしたらどうだ?」

「そんなことしたらあっという間に反感を買って、元老院をとかからも反対の声が上がってリニア計画自体が潰されるよ。その声が大きくなる前に復旧したんだよ」


 都市機能が麻痺していたらその元凶になったリニアに批判の声が向いていた。


「復旧が遅れれば、遅れるほど怨嗟の声は高まるからね」


 テルが手早く復旧を進めたのはそうした怨嗟の声が上がるのを最小限にするためだ。

 仮復旧とは言え、自動車が通れるようになり、インフラであるガス水道電気が供給されるようなれば、不満の声は出てこない。

 地下街の再建がまだだが、再建工事が行われる事で、未来への希望、再建の道筋が見えたことで落ち着いている。


「それでも反対派が出てくるけどな」

「それで元老院で公聴会が開かれるんだろう」

「ああ、頭が痛いよ」

 済みません、話のストックがなくなってきたのと他のサイト、作品の整理、休養のために二週間前後、鉄道英雄伝説の投稿をお休みします。

 また再び投稿できるように頑張りますので、どうかお待ちください。

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― 新着の感想 ―
[一言] >>車の保有台数が多くなったため、渋滞も激しく、通りを半分でも止めることに道路を管轄する内務省から渋い顔をされていた。 あぁ・・・いつかアトムと同じく高架でプレスされる事故が起こるフラグが・…
[良い点] おつかれ様です。 まだ先は長そうなのでマイペースでいいかと思います。 トラックの過積載は道路だけでなく落下物の危険性もありますしねぇ BRTとかで内務省に権益を分け与えて…あ、でも前の事…
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