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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
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地方私鉄への補助

 そもそも資金がないからこそ改善することが出来なかったのが問題なのだ。

 もしアテナイ鉄道がトンネルの建設資金プラスアルファも調達できれば人を雇える金も手に入り、教育させることも出来る。

 事故車両を補い、新たな車両も手に入れられる。


「でもそんな金どこから手に入れるんだ」

「国や自治体からの補助金が出るようにすれば良い。そもそもの原因は、私鉄が資金難であることだ」

「自治体が頷くかな」

「頷かせる。何しろアテナイ鉄道に役員を送り込んできたんだからな。彼らの経営責任を問い詰めれば、自治体への追及する手立てになる」


 用意した天下り先が針のむしろ、使い物にならないと知れば自治体も困り果てるだろう。

 そこを突いて金を出させる。


「勿論、国鉄からも出すがな」

「名目は立つのか?」

「立たせる。乗り入れ駅の改良だ。アテナイ鉄道に敷地を買わせて国鉄が一部を借り受けて運用するんだ。乗り入れ線の部分だけ。ここだけ借りて借地料を払うんだ。他にもアテナイ鉄道側に車両基地や待避線を作り、乗り入れしやすくする。これで安全性とアテナイ鉄道の収入も増える」

「だが、アテナイ鉄道にそれだけの価値があるのか」

「中止になって仕舞ったがイベントがある。想定以上の動員数があったんだ。事故のせいで減少するだろうが強力なコンテンツだ。自治体の目論みでは毎年行う予定だった。現在のところ事故で中断しているが、来年までに再開すれば減少しても十分に利益は出る。それに周辺は山がちだが、遺跡やハイキングコースも多い。文化事業を行えば十分に集客が見込める」

「上手くいくのか?」

「年に一回のイベントでの動員と輸送で一年の経費を全てまかっている路線もあるんだ。アテナイ鉄道でも十分に収入源になる」


 輸送人員が少ないことが経営上の問題だった。

 それを増やすのが目的だ。


「だが、それだけで本当に持つのか?」

「他にも方法はある。コンテナ輸送を行う電車か機関車にコンテナ車をひかせて貨物の取り扱いを行わせる」

「貨物の取り扱いはあるのか?」

「なかったからね。けど元々陶芸祭を行うほど陶芸が盛んだし、陶器の輸送で十分稼げると思うよ。イベント時に人も集まるから、来場者やスタッフへの物資補給でも貨物は必要になるよ」


 人は一日一キロの食料品を必要とする。来場者数が一月で五〇万人だとすれば、期間合計で五〇〇トンの食料が必要なる。他にも生活物資や土産物なども必要だし、外部からやってくるスタッフに対する物品も必要になる。

 単純計算で会期だけで一〇〇〇トンの物資が動く。

 二〇トン積みのコンテナが最低五〇個、余裕を考えれば二倍から四倍は輸送する必要が出てくる。


「通常はアテナイで製造販売される陶器の輸送で賄えば良い。週に四個運ぶし、生活必需品も運ぶようになれば、安定した収入になる。投資額は大きくなるが安定した財源になり経営は良くなる」

「確かに上手くいきそうだな。だけど」

「なんだ?」

「やたらと肩入れするな、何か思い入れでもあるのか?」

「あー、アテナイ鉄道には特にない。だが、他の地方私鉄の状況も似たような感じだ。利用者が少なく赤字経営で、地方からの補助金でなんとか生きているが、天下り先にされて不要な人材を押しつけられている」


 金を出すから口も出す。

 そのため鉄道の安全が脅かされて事故が起こった。

 技術者を雇わなければならないのに、不要な役員を増やしただけだ。

 勿論経営管理、新規事業の開拓、株主との調整に役員は必要だ。

 だが、そのような事をしないでただ役員の椅子を温めているだけの人間を預かる余裕はない。

 というより、テルが対策を考えている時点でおかしい。

 この程度の事はアテナイ鉄道の役員会で行うべき事だ。

 資金難や国への援助を求める必要があるのでテルのようには行かないが、働きかけのために再建計画を立てて鉄道省に来るぐらいのことはすべきだ。


「まあ、事故対応でそんな余裕もないだろうがね」


 二十人足らずの少ない職員、しかも五分の一を事故で失っていたら、遺族への対応どころか、日常の運転でさえ困難だ。


「同じような事が地方私鉄にも起こっているだから、対応したいんだよ」

「上手くいくのか」

「問題なのは資金と教育そして人員だ。資金の方は国――鉄道省から補助金か貸付金が出るようにする。教育の方は鉄道学園でも教育を受けられるようにする国鉄の方からも転職できるように制度を改めて整える」


 地方鉄道への転職制度は父親の昭弥の時代から整えられていた。

 しかし民営化で人員整理が行われ、その大半が大手私鉄へ移ってしまった。

 引き継いだ国鉄も少ない人員でやりくりしている。

 しかも人員の大半が利益の大きい都市部に集中しており地方へ配置されている人員は少ない。

 ここも事故の遠因となった一つだろう。


「乗り入れの専門チームを作ろう。新幹線が乗り入れられるようにする。各支社にも乗り入れのための連絡チーム作り窓口にする。新幹線の運転に各私鉄の運転士も慣れて貰おう」

「運転できるの?」

「運転装置は基本全ての電車で共通だ。新幹線も例外じゃない。運転特性、加減速の性能や視界が違うのでそこにコツが必要だけどな」


 普通の電車なら前面は垂直に落ちてるが、新幹線は消音、トンネルから出てくる時、新幹線がトンネル内の空気を圧縮して空気鉄砲のように押し出して轟音を出してしまう。

 それを防ぐために先端に伸びたノーズが、空気の通りをよくする。

 音は軽減されたが、運転席からの視界、特にホームに記載された停止線の位置の確認が困難だ。

 周辺の標識で判断できるが、慣れないと難しい。


「訓練すれば良い。問題ないよ」

「これで一件落着か」

「いや、次から次に新しい問題が起こるのが鉄道だよ」

「おい、不吉なことを言うな」

「事実だ。まあ、次のトラブルが起きるまでゆっくりさせて貰うよ」

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