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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
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国鉄の問題

「さて次も行こうか」


 5.相互の連絡の不備

  乗り入れのまでの準備期間が短かく連絡意思疎通に支障を来した。


「開催が決まったあとアテナイ鉄道に協力要請がきたのが前年の三月。それから信号所の建設を行い、完成したのが翌年三月。四月の開催の一月前だ。これだと十分な運用試験も訓練もできない」

 運用開始までに不具合がないか確認試験を行うし

「国鉄とかチェニスだとけっこう素早く運用開始するよな」

「予め、試験施設で組み立てて動作を確認するからな」


 できあがった信号装置を実際にケーブルなどで接続し確認するための広大な実験施設をテルの父親である昭弥は砂漠に作り出していた。

 本物のレールやポイントを作り列車を走らせ信号の動きを確認して動作チェックを行い、現場での確認時間を短縮することが出来る。

 機器の初期不良だけでも弾くことが出来るので、あとは現地で組み立て信号の確認をすれば良いだけ。

 線路敷設工事と同時並行で行えるので時間短縮となり、工事着工から開通までの期間を短くすることが出来た。

 場合によっては一年で完了することもある。

 新たに敷設改良する時も同じようにしている。

 資金力のあり常日頃から設備投資と改修を行っている国鉄だからこそ保有しておける設備だ。

 だが、民営化で各社に分割されて設備の使用が混乱した上に、地方私鉄が利用出来るほど余裕はない。

 そのため、工場で各機器のチェックを行ったらそのまま設置という事が行われた。

 これで、システム全体の動作チェックが行われるのなら良いのだが、アテナイ鉄道にはその時間さえ与えられなかった。


「この上で国鉄と連絡と乗り入れ計画の策定――緊急時の対処計画、遅延時の列車の取り扱いも考えないといけないんだ。日頃から赤字で最小限の人員で回しているアテナイ鉄道に国鉄と協議をしている余裕など、上層部も現場もなかったんだ」


 もし、連絡が上手くいっていれば今回の事故は起こらなかった可能性が高い。

 事故は原因があって起こるのだから、原因を計画段階から潰しておくのが一番良い。

 そのための確認作業を行う時間も力も無かった。


「人員を確保できる状態を作る必要があるな」


 6.乗り入れ駅の構造が悪い

  信号の無断改造の原因

  列車の待機によるダイヤの乱れを恐れた現場の暴走


「で、一番の原因がこれだな」


 ダイヤの乱れを最小限にするために配慮されている新幹線だが、自然災害、乗客によるトラブル――遅れそうになった仲間を乗せるためにドアに陣取って閉めさせない事をやらかしてくれる。当然発車は遅れ、ダイヤは乱れる。

 そうした様々な理由から遅れは発生する。

 遅れてきた列車を待機させておく場所がない、本線上に置いたら本線を通る他の列車が通過できず余計に乱れる。

 このような状況を解消するために現場が勝手にアテナイ鉄道の信号装置をいじくった。

 遅れてきた列車をアテナイ鉄道の線路へ進入させ待避させるためだ。


「よその鉄道会社の信号をいじくるなど言語道断だ。本来であれば、自分たちでなんとかしなくてはならないのだが」


 だが、予算を自由に獲得できず工事を行えない状態では現場でなんとかするしかない。

 余裕のなさが現場の暴走を生み出し、事故に繋がる一因となった。


「それでも信号装置を勝手にいじくった社員は刑事罰だな」


 他の鉄道会社に侵入した不法侵入に、信号装置を勝手にいじくった器物損壊、その結果による事故で起きた過失致死。

 上げたらキリがない。

 これほどの違反を行っただから処罰は免れない。


「まあ、それは置いといて」


 事件を捜査するのは警察の役目であり、テルの仕事は事故原因の究明と再発防止だ。


「以上の点から対応策はこうだな」


 テルは原因の横に対策を書き連ねた。


1.将来的にはトンネルの建設を含む、線形の改良。

 完成までの間は信号装置の改修

2.人員の貸し出し

 特に信号関係、運転士などの特殊技能を持った人間の派遣

3.人員の教育

 乗り入れ線でも運転できるように事前の訓練

4.万が一の場合の利用の制限

 改札がパンクしたため対応する余裕が無くなる、事故時に死傷者増大の原因になった

5.連絡意思疎通の徹底、準備期間に余裕を持たせること。

 緊急時の対応を確認

 全国共通のマニュアルを作り教育を徹底。相違点の部分だけ徹底的に詰めるようにする

6.乗り入れ駅の構造改修

 乗り入れ駅の容量が少なすぎた。

 最低でも相手側にも待避線を一本、国鉄側も待機線を一本作りダイヤの乱れを波及させないように工夫するべき


「もっともだが、無理じゃないのか?」


 対応策を見ていたオスカーは、疑問を呈した。


「アテナイ鉄道にそんな体力ないだろう」


 赤字の第三セクターでギリギリの人員でなんとか経営を回していた会社だ。

 とても出来るとは思えなかった。


「その通りだ。この程度の事なら鉄道に関わる人間は誰だって出来る。だがアテナイ鉄道は出来なかった。行うための資金が、収入がなかったからだ」


 理解できるが実行不能な事など世の中にはたくさんある。

 不労所得を得たければ株や信託を買えと言われるが、その日の生活費も困る人間に投資資金が出来るはずもない。


「逆に言えば資金さえ有れば解決だ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 人員に関しては出向って手もありますね。 あと廃線予定の私鉄に労組系の職員を栄転出向って形にしてまとめてクビにするか 倒産させるとか。 解雇用にきつい介護系とか車体系に飛ばしてる某社とか。
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