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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
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アテナイ鉄道の問題

「さて、今回の事故の原因はなんだ」

「やっぱ、信号装置の不具合だろう」

「一つだけじゃないだろうが」


 気のないオスカーの返事にテルは、少し落胆したが、すぐに気を取り直し黒板に書き出し始めた。


 1.信号設備の違法改造

  線形に合わせた信号装置では無かった

  違法な運転中の制御装置操作


 2.アテナイ鉄道の人員不足、知識不足

  新幹線を運転できる運転士は勿論、運転士の数が不足していた


 3.線路を知らない運転士による運転

  2の理由もあり乗り入れ車両は国鉄の運転士が運転していた。


 4.運転容量を上回る乗客が殺到しパンク

  イベントの来客が予想を上回り利用者がアテナイ鉄道の能力を遙かに上回っていた。


 5.相互の連絡の不備

  乗り入れのまでの準備期間が短かく連絡意思疎通に支障を来した。


 6.乗り入れ駅の構造が悪い

  信号の無断改造の原因

  列車の待機によるダイヤの乱れを恐れた現場の暴走


「ざっとこんなものだろうな」


 大まかな事故原因とその理由を書き出した。


「さて、一つ一つ確認していこう」


 1.信号設備の違法改造

  線形に合わせた信号装置では無かった

  違法な運転中の制御装置修理


「まずは線形が悪かったし信号装置が良くなかった」


 峠に信号所があるために加速して登り切らないといけないが、信号所で列車交換するために停止する必要がある。そのため信号所手前の一番急な場所が警戒、速度が時速二五キロに制限されるため大幅な減速となり、運転が難しい。

 だから勢いを付けて侵入できるように勝手に信号所内の閉塞を警戒を定位置にしてしまった。


「車両の出力が低いこともあるが、閉塞区間が問題だったな。信号所の中で閉塞区間を分けられれば良いのだが」


 信号所の真ん中で区間を分けることにより先頭が進入した後、減速出来るようになり、その先で停止することで、閉塞区間への進入を押しとどめることが出来る。

 問題となるのは閉塞区間を列車が跨いでしまうことだ。

 一閉塞一列車が原則で二つの閉塞に一つの列車が跨がるのは不自然に思える。


「他の列車が同じ閉塞に入らないから良しとするべきかな」


 色々、問題が出てきそうだが、とりあえずの解決方法だ。


「出来れば峠を越すところにトンネルを作って平坦にするべきだな。将来、複線にする時も考えて複線トンネルを作り、中に信号所を作って列車交換できるようにするべきだな」


 急勾配を登る必要がなくなり、すれ違いも簡単に行える。


「ただ、信号装置を運転中にいじくるのは言語道断だがな」


 安全のために信号装置は必要で、運転中に機能停止したら事故は免れない。

 だから信頼性の高いシステム――少なくとも次の点検、交換時期まで人の手を煩わせないよう無故障で稼働できるシステムが必要とされる。

 途中で人の手が入る――ヒューマンエラーを防止するためにも必要だ。

 修理中、他の列車へ間違った信号が送られないようにするためにも運行中は絶対に手を触れてはならないので普段から制御室への入室さえ運行中は厳禁だ。

 それなのに、列車を停止させずに制御室へ入室したばかりか、制御基板を勝手にいじくる言語道断の所業を行った。

 再現できていないが、誤った信号が流れて、誤進入検知器が作動しなかった可能性がある。


「ここは次の項目にも関連する」


 2.アテナイ鉄道の人員不足、知識不足

  閉塞を理解する信号管理責任者がいなかった。

  新幹線を運転できる運転士は勿論、運転士の数が不足していた


「第三セクターで赤字経営。人員を増員できないし、教育のための費用もない」


 教育を受けたプロが居れば絶対に制御室への入室はやらなかったハズだし、万全の態勢で代用閉塞を行えたはずだ。


「運転士の数も足りていない。線路になれていない運転士が入ったから信号所で列車交換を必ず行う事を理解していなかった」


 3.線路を知らない運転士による運転

  2の理由もあり乗り入れ車両は国鉄の運転士が運転していた。


 ダイヤのスピードアップさせるため信号所が各所にある国鉄では、信号所を通過することも多い。

 だから国鉄側の運転士は通過しても大丈夫だと判断してしまったのだろう。


「人員の養成が一番だな」


 4.運転容量を上回る乗客が殺到しパンク

  イベントの来客が予想を上回り利用者数がアテナイ鉄道の能力を遙かに上回る

  そのためアテナイ鉄道の余力を奪った


「これは仕方の無い部分もあるが、予想以上の集客だった」


 イベントに何人、人がやってくるか判断するのは難しい。

 甘い利用者見込みを元に敷設した鉄道は論外だが、予想以上に市街地が発展して利用者が増え満員ラッシュが慢性化した路線など枚挙にいとまが無い。

 逆に少子化と過疎化で利用者が減って、廃線となった鉄道もある。

 予測精度が低いのも原因だが、向上させられる手もないのが現状だ。


「ただ、人が集まりすぎた時の対策と手段は確保しておくべきだった。列車の増発や車両数の増大はほぼ無理だが、切符の販売制限などを行う事が出来たはずだ。でなければアルバイトを雇って改札業務を代行させることも出来たはず」


 運行管理や機材の修理はともかく、改札、切符の販売はよほど難しい運賃計算――各種割引や料金体系を覚えることは無理でも、切符の販売や回収は出来るはずだ。

 漏れや間違いもあるだろうが、次の列車が来るまでに乗客が改札から出られないような状況、まして改札業務が終わったら即座に信号管理などという状況は改善できたはず。

 通常の切符はアルバイトに任せて、正社員は難しい割引に対応し、他の社員は運行管理に専念することも出来たはずだ。


「少ない人数で回すことが常態化していたため発想が貧困になって仕舞ったのだろうが、これは問題だ。アドバイスが出来たら良かったんだが」


 テルはため息を吐いた。

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