表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第七部 第三章 リニア新幹線
679/763

リニアの運用

「リニアの導入に積極的ではなかった?」


「ああ、実験は成功して実用段階になっていたけど全国への普及はためらっていたようだ」


 意外な言葉にオスカーは首を傾げた。


「何か欠点があって中止しようとしていたのか?」


 テルの父親である昭弥はリグニアの鉄道の父だ。

 その昭弥が導入をためらうのだからリニアには、よほどの欠陥があるのではとオスカーは警戒した。


「いや、技術的にも問題は無かった。それに導入は決定済み。用地買収も進んでいた」


「じゃあ、どうしてためらったんだ」


「問題なのは、既存の鉄道網との接続だ」


「接続?」


「現在の鉄道の規格はどうなっている?」


「確か標準軌と三メートル広軌だったよな。五〇〇ミリの狭軌もあったが、自動車の発達で廃止された、と聞いているが」


「何で五〇〇ミリは廃止されたと思う?」


「小さすぎるからか?」


「そうだ。小さいので使いにくい。なにより標準軌に乗り入れることが出来ない。標準軌に荷物や人を乗せるなら、接続駅で乗り換えが必要だ。だが標準軌なら高速線を除いてほぼ全ての路線に入ることが出来る。高速線用の新幹線ならある程度規格をクリアしていれば在来線も走れる」


「確かに便利だな。けど三メートル広軌への接続も出来ないだろう」


「三メートル広軌は貨物がメインで旅客は補助。コンテナを載せ替えるだけなら簡単だからね。旅客用は豪華な車両でクルーズするために作られている。高速移動は新幹線、都市間の大量輸送は在来線に任せて棲み分けている。広軌の旅客もあるが旅客需要が異常に大きい区間は走らせているけど」


 異常なほどのラッシュの激しい路線には新設してでも広軌の通勤電車を走らせているがそれ以外はあまりにも維持費が大きいため旅客需要=収入が見込めず導入していない。

 結果、広軌は貨物用に使われるのが主だ。


「だが、リニアはこれまでの鉄輪式と違ってリニア方式のため在来線に入ることが出来ない。相互乗り入れが出来ない。リニアのみのシステムになるため、リニア以外の路線へ行くには乗り換えが必要になって仕舞う」


「それが問題なのか? お前の親父さんの計画だろう」


「父さんもここで悩んでいたようだ。そもそも高速線や新幹線と在来線との関係も、父さんのいた国とは違うらしい。新幹線も同じく独立したシステムのために乗り換えに手間取るし、各地を結んでいないことを問題視していた」


 昭弥は日本の新幹線が鉄道史上、いや世界史上の画期的なシステムであると認めている。同時にその欠点、東京~大阪間という世界的に見て最も輸送人員の多いであろう区間を高速で大量に輸送するために特化しているため、他路線との接続は乗り換えのみで乗り入れが出来ない。

 目的地へ行くのに乗り換えで接続が悪くなり、新幹線の駅周辺への波及効果が少ないという問題があると見ていた。

 そこで、昭弥は新幹線方式では無く、TGVのように在来線への乗り入れも出来るようにした。

 リグニアの新幹線と在来線は、自動車道の一般道と高速道の形に近い。

 長距離は新幹線の線路を使い、目的地では周辺へ乗り入れるために在来線を使うという、利便性と高速性を両立させるように工夫をしていた。


「リニア導入のために開発を進めていたけど、十分に活用し切れていないのではないか、疑問を感じていたようだ。基本計画は出来ているけど叩き台。他に方法が無いか、探していたようだ。このまま進めるのは問題だ」


「そうなのか?」


「ああ、父さんも悩んでいたようだ。元の世界の世界のリニアをそのまま導入しようか悩んでいたようだ」


 書き込みがびっしり入った書類を取り出して見せた。

 昭弥がリニア新幹線をそのまま導入したらどのような事になるか、相当に悩んでいたことが血の滲むような殴り書き見ただけで分かる。


「そもそもリニアを新幹線として扱って良いのか、って考えている」


「どういう意味だ?」


「新快速のような存在じゃないかって思っていたみたいだ」


 特急は三時間、四時間乗っている。

 しかしリニアだと主要なルートで乗車時間が一時間から二時間以内となる。

 移動距離は増えるが乗車時間は減る。

 加減速が良くなるので停車駅を増やすことが出来る。

 運転時間が短く停車駅が多い路線に新幹線のような車両――長距離旅客列車のように全席リクライニングでドアが一箇所だけの車両を作る必要があるのだろうか。


「むしろ乗り降りしやすいように近郊用の車両、通勤電車のような車両の方が合っているのではないか」


「遠くの町、千キロも離れた場所を結ぶ長距離列車なのに?」


「だけど乗車時間は一時間か二時間程度。等級別にしてリクライニング車両を設けるのはありだろうけど、短時間なんだから不要じゃないかな」


「確かにな」


 例え千キロ離れていても乗車時間は二時間ほど、三〇〇キロほどなら四〇分程度。通勤電車か近郊列車の乗車時間に近い。

 気軽に乗り降りする移動手段となるのならリクライニングは確かに不要だ。


「長距離列車も設定するけど基本は通勤電車のような物だ」


「帝国の都市を近郊都市のように扱うのか」


「乗車時間を考えるとそんな感じになる」


「そこんところはぼかして言えよ」


 一般的に帝国では長距離列車を豪華、通勤列車や近郊を走る列車は格落ちという感覚がある。

 多方面へ何本もの長距離列車が設定されていて発着のあるのが大都市という意識があり、各地方は何本の長距離列車が設定されているかで格付けをする風潮がある。

 今度のリニアも敷設される長距離という意識が出てくるだろうから、事実上通勤列車や近郊列車と変わらない、帝都の近郊都市のような位置づけにされる、と地方が考えたら反対される。


「そこの説明と説得は頼むよ」


「うへえ、やぶ蛇だったな。テルがやれよ」


「無理、他にも問題はあるから」


「何があるんだ?」


「リニアが出来た後、既存の新幹線をどうするかという問題があるんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] リニア以降は答えのない世界だからね。 でも新幹線を貨物化させるのもありかな。 早い貨物には需要があるし、鮮魚列車もできるし。 獣人と新幹線を合体させたらかなりいける。 実際機密や早い書類は…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ