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鉄道員インタビュー 機関助士ピエール

 どうも、こんにちは。運転士のピエールです

 本日はインタビューだそうですね。

 鉄道に関わったのは何時からか、ですか?

 鉄道なんて初めは気にもしていませんでした。ガリア農民の息子である自分には関係ないことで、遠くで煙を吐いているただの鉄の塊だと思っていました。

 農家である父親の後を継いで家を支えなければと思っていました。

 鉄道と関わることになったのは、あの戦争、ケーレスとの戦争の時です。

 初めは大都市が攻撃されたとしか聞いていなくて、空高くをケーレスのロック鳥が飛び去ったときも何処か遠くの事だと思っていました。

 はじめて戦争だと実感したのは村をケーレス軍に襲われたときでした。

 突然攻撃を受けて多くの人々が亡くなりました。知り合いや、友達、私の父も。

 私は母親に連れられて必死に南に逃れようとしました。

 近くの駅で列車に乗って逃げようとしましたが線路を破壊されたために不通です。しかし、ケーレスが迫ってきているため、私たちは線路沿いに歩いて逃れる事にしました。

 しかし、四月のまだ寒く、時に霜さえ降りる春先です。

 夜中に凍えながら歩くのは辛いもので何度も泣きました。けど進まなければ生きて行けません。妹は途中で倒れてそのまま立ち上がりませんでした。ケーレスから逃れるためには埋葬する時間さえ無く、私と母は進むしかありませんでした。

 ようやく鉄道が通っている駅に辿り着きましたが、同じように避難してきた人々で列車は超満員。客車の中には入りきらず満員で屋根まで人が溢れていました。客車が足りず、貨車を代わりにしていましたがそれでも足りません。

 次の列車に乗れるかどうか、そもそも次が来るのかどうか。来る前にケーレスに襲われるかもしれない状況でした。

 そのため私たちは機関車の最前部、煙室ドアの前、点検用の足場に乗ることにしました。

 真後ろは煙室なので熱が伝わってきます。

 それが久方ぶりに感じた温もりでした。蒸気機関車でなければ死んでいたかもしれません。まあ落ちる危険の方が高かったのでしょうけど、何日も寒風の中を歩いて逃げている間、何の温もりもなかったので嬉しかったです。

 母の手も冷たくなり、妹にも温もりをあげられませんでしたし。

 誰もくれなかった温もりを機関車がくれたように思いました。

 汽笛と共に機関車は走り出しました。

 私たちに配慮してくれたのか、いつもよりずっと遅いスピード、三〇キロも出ていなかったと思います。それでも歩くよりも速く遠くの安全な場所に運んでくれました。

 ようやく安堵したときです。空に何か黒い点が現れて見る見るうちに近づいて来ます。

 何だろうと思っていると突然汽笛が鳴り響き機関車が増速しました。

 上空からケーレスのドラゴンが襲いかかって来たのです。

 ドラゴンは空高くから列車めがけて急降下して来て、私たちめがけてブレスを吐いてきました。

 ブレスは線路脇に逸れましたが燃えるような熱気が私たちを襲います。

 次の瞬間機関車は急減速してスピードを落とします。そして、近くにブレスが着弾したかたと思うと機関車から蒸気が激しく吹き上がりました。

 やられたのかと思いましたが、機関車は足を止めませんでした。それどころか追いかけてきたドラゴンを見て再び急加速します。

 そうやってドラゴンの攻撃を避けていたんです。

 減速と加速を繰り返して進んでいると前方にトンネルが見せてきました。

 何とかあの中に入ってくれと願いました。ようやく入ってくれた時にはホッとしましたが、直ぐに出口が見えてきて絶望しましたね。

 短いトンネルで出てしまったらドラゴンの餌食になってしまう。

 先頭に居る自分たちが真っ先にやられてしまうと。

 身が竦んだその矢先、トンネルの出口寸前で機関車は止まりました。

 外にはドラゴンがまだいます。しかし諦めたのか直ぐに飛び去りました。

 ドラゴンは空中で静止したり、地上に降りることも出来るそうですが、無防備になるため出来る限り空中を飛行するそうです。また、長く飛行するとドラゴンが疲れて墜落する事もあるので長い時間飛ぶのは避けるとも。

 機関士はそれを知っていて、あの短いトンネルに、列車の全長ギリギリのトンネル内で止まることを決めたんです。

 そして列車を少しもトンネルからはみ出させる事もなく、最高速から重い列車を止めたんです。

 それがどれだけ凄いか。重い荷物を担いだまま坂道を駆け下りて、いきなり指定された場所に止まる事が出来ますか?

 出来ないでしょう。それと同じです。

 そんな凄い事をやり遂げたんです。

 ドラゴンが去った後、列車は再び発車して私たちは避難先に近い駅に下りる事が出来ました。

 そして私はそこで鉄道員へ志願しました。

 父が亡くなり農場も捨てて逃げてきたので残された母だけでも助けようというのが最大の動機です。でもやはり鉄道員に、機関士になりたいと思いましたからね。

 混乱して人手が足りないこともあったのでしょう。直ぐに採用されて、そのまま腕章だけ貰って駅員となり、避難民の誘導を始めました。

 その後はケーレスの進撃に合わせて避難民を逃がし、自分たちも逃れました。

 その間に似たような境遇の駅員見習いを集めて臨時の講習会に参加したり、試験を受けたりしました。そして採用されてから二ヶ月後、機関士の見習いとして機関区に配属されました。

 見習いは機関車の掃除や雑用が殆どです。

 戦時中で教育とかは殆どありませんでしたね。敵に標的にされないよう灯火管制が敷かれ、窓は全て黒幕で覆わなければなりません。その役目も私たち見習いの役目で、少しでも漏れていると叱られました。しかし、機関車を守るためには必要な事でした。

 しかしどうしても外で作業をすることがあり、その時も明かりを使う事は許されません。

 持っている明かりを標的にして敵が攻撃を仕掛けてくるからです。だから闇夜の中、機関車の編成作業や連結作業を行ったりもしました。

 でもそれは長く続きませんでしたね。

 軍用列車の運転数が多くなり、機関士の数が足りなったため、国鉄は機関助士を次々と昇進させました。遂には機関助士も足りなくなり、見習いから助士へ昇進させる期間が短くなりました。

 本来なら一年くらい見習いを受けた後、ようやく受験資格が生まれるのですが、見習いになってから二ヶ月後に試験を受ける事が出来、無事に合格して機関助士養成課程に入りました。

 養成課程では機関車の基本や鉄道の仕組みを教わるので覚えることは数多くありました。それでも鉄道に関わることですので苦にはなりませんでした。今思えば一番幸せな時期だったかもしれません。

 ただ大量増員のため教育期間も短縮され、短い期間で終わってしまいましたが。

 機関助士としてコンビを組むことになったのは機関士のクラウスさんでした。

 アクスムの猪人族出身ながら駅員となり、機関士にまでになった技量Sの素晴らしい機関士です。

 しかもあの時避難列車を運転してくれた命の恩人です。

 厳しい人でしたが、運転のイロハを教えてくれた素晴らしい人ですよ。

 時折運転中に機関士席に座らせて下さって、実際に運転させても頂きました。

 戦時中で空襲があったり、頻繁に軍用列車を運転することとなり勤務が不規則で疲れやすかったんですけど機関車を運転できて本当に良かったです。

 寧ろ戦後の方が苦労しましたね。

 <ザプロス>のせいで車両の多くがブリタニアに残されてしまったので、少ない機関車を大勢の機関士で運転することになりましたから。

 それまでより勤務時間は短くなりましたが、機関士へ昇進出来る人数が減らされて昇進が難しくなったんです。

 それに電化やディーゼル化によって蒸気機関車の数も減ってきました。

 電気機関車への転換も始まっていたんですが、私はやっぱり蒸気機関車が好きで乗り続けようと決めました。

 新幹線が出来てもそれは変わりません。

 ずっと蒸気機関車に乗り続けようと思っていました。

 それがあんな事になるなんて。

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