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襲撃

冒険者の対応に頭を悩ませる昭弥。翌日も同じ列車に乗るが

 視察のために、オスティアに向かった昭弥たちの乗った列車はその日の終着駅に到着した。


「さて、今日はここで泊まりか」


 現在、王国鉄道では夜間運転は行っていない。

 列車の数が足りないし、長時間の運転についてまだデータが揃っていない。それに駅員の確保も十分ではない。万が一、夜に何かあっても対応できない。

 貨物列車による試験走行は行っているが、不十分だ。

 いずれ寝台列車、ブルートレインをこの異世界に走らせたいが、まだ先になりそうだ。

 昭弥はホテルに向かおうとしたが、冒険者のグループが駅前でたむろしていた。


「どうしたんですか?」


 昭弥は彼らに声を掛けた。


「ホテルに行って泊まらないんですか?」


「節約ですよ。ホテルに泊まる金を浮かせているんですよ」


「あー……」


 昭弥にも経験があった。宿に泊まる予算を浮かせて鉄道に乗っていたことがある。ただ、冷える夜だと風邪を引きやすい。


「安いところがありますよ」


「それでもね」


 冒険者達は、顔を見合わせた。


「軒先で泊まれる分、道ばたで野宿するよりここの方が上等だから」


「うーん」


 昭弥にとっては利用して貰い、頼って貰って嬉しいが、駅の安全とか経営と考えるとホテルに泊まって欲しい。


「だが、利用されてこそ鉄道だ」


 昭弥は決断した。

 直ぐに駅事務所に行って駅長に命じた。


「駅長、待合室を開放して彼らを泊めてくれ」


「良いのですか?」


「病気になられても困る。それに明日の列車のお客様だ。少しでも快適に利用して貰いたい」


「はい」


 駅長は待合室を開放し、彼らを中に入れた。

 彼らは驚き、感謝しながら移動してくる。


「本社に帰ったら規約を変更だな」


 一番良いのは全員がホテルを利用することだが、格安でも泊まれるとは限らない。だからと言って皆が利用する鉄道から、はね除けるわけにはいかない。


「これは大急ぎで夜行列車の準備が必要だな」


 駅員が蝋燭の付いたランプを持ってきて彼らに渡した。

 彼らは、自分たちのランプがあると言っていたが、駅員がこれを使うように言っている。火事になる可能性があるからだ。


「これがなければな」


 夜行列車を運転できない最大の理由が灯りだ。

 眠るのに暗がりが必要とは言え、トイレや緊急時に足下を照らす照明が無いと危険だ。

 蝋燭や油のランプだと列車の揺れで倒れたり、壊れて火災になる可能性がある。

 機関車や車掌車だけの貨物列車なら監視も簡単だが、乗客一人一人が灯りを必要とする旅客列車は無理だ。


「何とかしないと」



 翌日、ホテルを出た昭弥は前日の列車に乗り込み、オスティアに向かった。

 列車は昨日のように順調にオスティアに向かっている。

 だが、途中で急停止した。


「どうしたんだ」


 昭弥は、席を立ち上がり、車掌に尋ねた。


「前方の線路に置き石があったそうです。現在、撤去作業中です」


「嫌がらせかな」


 鉄道建設反対派を抑えたとはいえ、全員では無い。少数の反対派がいて未だに抗議している。だが、このような妨害行為は重罪に指定しているからよほどの事が無い限り、行わないはず。


「隣の線路にはありましたか?」


 セバスチャンが尋ねた。


「いいえ、この線路だけです」


「おかしい」


 もし嫌がらせなら、両方に石を置くはず。


「片側だけなのは、こちら側だけを止めようとしているとしか思えない」


 盗賊としての勘が働いているようだ。


「それもおかしいでしょう。こちらは川側なので止めても逃げ場所が無い。船でもあれば別ですが、船がいる様子はありません」


 対向列車が来るのは希だが、万が一やってきたら逃げ道を塞がれる可能性がある。なので反対方向の線路に置き石をするのが普通だ。だが、今回は逆だ。


「まさか」


 その時、川側から槍が列車に投げ込まれた。


「な、なんだ」


 外を覗き込むと緑色の肌をした人型がこちらに向かって槍を投げていた。


「かっぱ?」


「リザードマンです」


 緑色の肌をして水かきのある水棲人型生物だ。通常は川の中で暮らしているが時折、陸に上がってくる。昭弥も端の基礎工事で雇った事があるのだが


「襲撃するほど凶暴なのか?」


「中には」


 だが、これで理解出来た。彼らが襲撃するために置き石をしたのだ。川側に置いたのは川の方向に逃げられるからだ。


「反撃します」


 車掌が車掌室から銃を持ちだして撃ち始めた。

 盗賊対策として防御用に装備してある。載せたくなかったが、今は載せといて良かったと思う。

 だが、数挺だけでは対抗できない牽制になるが、十数人いるリザードマン相手には不十分だ。

 それに置き石を何とかしなくてはならないが、外に出られる状況じゃ無い。


「どうしたら」


 その時、客車から数人の団体がリザードマンに向かって出ていった。


「だれだ」


 見ると先日の冒険者達だった。彼らは魔術師の魔法、ファイアーボールで一撃を加えると突撃。弓と銃で牽制しつつ槍と剣を持った戦士と騎士が突っこみ倒して行く。数匹を殺されたリザードマンは、退却に移り川へ逃げ帰っていった。


「助かったのか」


 昭弥は安堵して席に腰を下ろした。

 その後、列車は置き石を撤去すると数分遅れで出発した。


「セバスチャン。彼らに報奨金を出して。あと鉄道公安隊に入らないか誘ってくれ。それと優秀な冒険者のグループには車内に武器を持ち込む許可を。他の乗客はダメだけどね」


「わかりました」


 セバスチャンは昭弥の言葉をメモに残した。

 列車はオスティアに向かって走り続け、無事に到着した。


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