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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第三部 第二章 帝国再建
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超高速! 帝国博覧会準備

 帝国博覧会の開催が決定すると担当省庁となった鉄道省は俄然活気が出た。

 昭弥は鉄道省に戻ると直ぐに実行委員会を設置、関係各部署への指示が下し、アルカディア周辺には大会本部の設営命令および建設開始が命令された。


「手際が良いですね」


 昭弥の命令で関係部局への通達を行ったブラウナーは驚いた。

 今朝決まったばかりなのに何処の部署に何を命じるか計画表が出来ていた。

 それ以上に各部局が必要な装備物品を抑えたり、調達先を把握している事に驚いた。

 予め用意していたとしか思えない。

 いや、決定前から動いていた部署もあるので開催決定を前提に動かしていた、と言うべきだ。


「ある計画のために用意していたからね。その計画の流用、というかそのために万博をやるんだ」


「え?」


「こっちは終わった。これを持って行ってくれ」


「は、はい」


 どういう意味かブラウナーは問おうとしたが、その前に昭弥が大量の指示書を渡して来たため聞きそびれてしまった。


「しかし、規模がでかいですね」


 ブラウナーは基本計画書を見ながら呟いた。

 アルカディアは、トラキア半島の付け根の北側にある。

 北西に海があって、くの字型に曲がった海岸線へ流れこむ川があり河口には三角州を持っている。その三角州の西側に港を整備して作られているのが貨物港のアルカディア港だ。

 ここで船に荷物を積み替え、帝国本土あるいは東方諸国へ貨物を運び込んでいる。

 博覧会の会場はアルカディアの東側、ルテティアに近い場所に建設されることになっていた。

 中心部に皇族滞在用の宮殿を設け、そこを中心に直径約五キロ、全長約一六キロの環状線を作りその中に多数のパビリオンを設ける。

 さらに中央の環状線から八方へ路線が放射線状に伸ばす。

 環状線内は東西南北とその間に大通りを作り、更に環状道路を幾重にも設け、その間にパビリオンやホテル、住宅を設ける。道路には路面電車を敷設し網の目のように走らせパビリオンの接続を良くしている。


「凄い規模だな」


 面積なら帝都にも匹敵する規模、町のような会場になる。


「完成するのに何年かかるか」


「半年で完成させて開催させる」


「え?」


 昭弥の言葉にブラウナーは絶句した。

 いくら何でも早すぎないかと感じたからだ。

 簡単に言うと、山手線内側を半年で作ろう、と言っているようなものだ。

 あちらこちらに原野を残したり公園を設けるとはいえ、あまりにも短期間過ぎる。

 ブラウナーが不安になるのも無理は無かった。


「なに、建設機械やら資材やら人員やら予算やら湯水のように使えば、簡単に終わる」


「本当かよ」




 ブラウナーは半信半疑だったが、実際に出来てしまった。

 復員兵と余剰兵力を使って人海戦術でパビリオンの建設を行った。

 元々、貨物港として建設されルテティアとの連絡線も完成していたため、大量の物資を運び込む事が出来た。

 労働者に支払う給料や購入の予算は、先ほど発行された国債により賄われた。更に新通貨帝国リラを発行しており、手に入れようとする人々が多く我先にと労働に加わったり、取引に参加しようとしている。

 しかも建設の為に投入された人員相手に商売をしよう、と考える商人やら何やらが集まってきており、アルカディアは更に大きくなっていた。

 彼らのために格安の公営住宅を建設したこともあり、人口が続々と増えていた。


「早いな」


 次々と建物が立ってゆく姿を見てブラウナーは半ば呆れた。

 何しろ最初の一月で作業員の住居となる住宅街の半数が完成。

同時に道路網、鉄道網が完成。

巨人族の方々と、魔術師達が作り出したストーンゴーレムとアイアンゴーレムが地盤固めをやってくれたお陰で道の完成が早い早い。

 鉄道会社で雇っていた魔術師の卵達が続々と卒業しており、その中にいたゴーレム系の魔術師を大量動員して働かせている。

 お陰で簡単に線路や道路を作りレールを敷設、もしくは舗装して作り上げてしまった。

 荷物を載せ替える貨物駅やヤードも最優先で建設され完成次第、建設資材の運び込みが始まり、工事は加速。

 建設が始まって四ヶ月で主要建築物の大半が完成し、五ヶ月目には全てのパビリオンが完成してしまった。

 現在は各パビリオンの検査と搬入、展示担当者の訓練が行われている。

 計画開始から半年一寸で完成させてしまった。


「しかし、一から計画していたとはいえ凄いですね」


「アルカディアを大きくしようという計画が元々立っていたんだよ。当時はトラキア侯爵領だったんで測量と地質調査以上は無理だったけど帝国直轄領になったお陰で始動できたんだ」


 東方戦争が始まる前から綿密に計算し何処に何を作るか、昭弥は考えていたのだ。


「よくやりますね」


「昔から都市計画図を作るのとか好きだったんでね。何処に鉄道の駅を作ろうとか、ここにこんな施設があったら便利とか考えていたしね」


「よくそんな時間ありましたね」


 ルテティア時代も大臣と総督としての職務があったのに何処にそんな時間が有ったのだろうか。


「帝京に閉じ込められている間、色々考えることが出来たからね。計画を修正するなり何なり出来たから完成度は高い」


「ただじゃ起きませんね」


 ブラウナーは呆れた。

 東方戦争の最中に敵国の首都に行って和平交渉を行ったと聞いていたがその最中でも色々考えていたとは。

 知らなかったとはいえ、自分たちが砲撃している町中で博覧会の事を考えるのはどんな肝っ玉を持っているのか。

 軍人だったらとんでもなく胆力がある名将になっただろうと少し残念に思う。

 だが昭弥はブラウナーの感慨にかかわらず話しを続ける。


「それに修正を加えて更に修正して博覧会の会場にしたんだ」


「だからやけに早かったのか。しかし、建設作業が続いていますね。あちこちに建設予定地を設けていますが」


 建設中の環状線の外側にも幾つか建設中の路線や用地があり、次の工事の準備が進んでいる。

 いや、パビリオンの建設が終わってから労働者に余裕が出来た分、更に次の建設が加速している。


「ああ、周辺の開発や整備が必要なんで大きくしている。住宅とか必要だからね」


「それにしては広すぎませんか?」


 秋から冬にかけての農閑期。その三ヶ月ほどの間しか開催されない博覧会にしては規模が大きいように思われる。

 何より今から建設しても博覧会には間に合わない。


「無駄な建築物になりそうですが」


「訳があってね。今は一寸話せない。それより開会式の準備をしないと」

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