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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第三部 第一章 戦争終結
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鉄道員インタビュー 製鉄所木工職人シュミット

これで第一章は終わりです。

次回から第二章に入ります。

 ドワーフの木工職人の儂なんぞに話しじゃと。

 儂は何も悪い事はしとらん。一体何を話せと言うんじゃ。

 何? 鉄道員の話しを纏めているじゃと。そんなのが何の役に立つんじゃ?

 そもそも儂は製鉄所の木工職人で鉄道員では無いぞ。

 鉄道会社の系列だから大丈夫じゃと。詭弁に聞こえるぞ、誰が言ったんじゃ。

 社長の命令?

 ふん、ならば仕方あるまいな。

 で、何を話せば良いんじゃ。

 鉄道会社に入る前と後について話せじゃと。

 そんなのが何の役に立つか知らんが、まあ社長の命令なら話してやろう。

 儂はヴァルター・シュミット。ドワーフの木工職人の子として産まれ父親から木工の技を教わった。一人前になった後、腕試しと独立を兼ねて生まれ育った村を出て王都に来て工房を開いた。

 主に王都の住人にタンスやベッドなどの家具、商店や食堂のテーブルや椅子などを作っておった。

 幸い客に恵まれて暫くは工房も潤った。

 じゃが帝国鉄道が出来て帝国本土から安い家具が入るようになってくると途端に売れなくなってしまった。

 腕に自信はあったし質も劣らんが、値段を安くする訳にはいかんかった。王都に入ってくる木材の値が高いままでは安くすることは出来ん。

 そんな時じゃ。王国鉄道の製鉄所で木工職人を募集しておった。家具を作れなくなることに抵抗はあったが先が見通せんでな、自分の工房を畳んで製鉄所に入ったんじゃ。

 木から鉄へ変わって大変では、だと?

 いや、木工職人として働いておる。

 なに? 製鉄所なのにどうして木を使うのかじゃと?

 鉄道の記者のくせに何もしらんようじゃな。

 製鉄所でも木を使うぞ。

 燃料の木炭?

 たわけ! 製鉄所の溶鉱炉に投入するのは石炭を乾留したコークスじゃ!

 そもそも木炭を使うなら木工職人など必要とせん! 木炭を作るのは炭焼き職人で儂は木材を加工する木工職人じゃ。全く違うわい。

 設備に使われている木の部品の補修が仕事か、じゃと?

 違うわ! 製品の製造で使う!

 鉄製品なのにどうして木が使われるのか、と疑っとるな。キチンと製品の製造に木工が使われておるわ。

 そもそも製鉄所では製品の製造も行っておる。

 鉄板や鉄骨、レールのようなものも製品じゃが、注文によっては半製品、大まかな加工を施して送り出す。主に鉄板を曲げたり、鉄塊を削ったり、鉄板を平らにするのじゃが、その時木工が活躍する。

 何? 鉄板を曲げたり削るときどうして木工が必要かじゃと?

 確かに儂は金工、金属加工を行っておらんし製品には触らん。そもそも曲げたり削ったりするのは金工じゃ。木工はそのような作業に直接関わらん。じゃが、儂らがいないと製品は完成せん。

 鉄製品にも触らない製造にも直接参加しないのに、どうして木工が必要か余計に分からなくなったじゃと?

 では加工された製品が正しく加工されているか、お主はどうやって確認する?

 設計図を見て定規を当てる? 

 確かに直線で計れる部分なら問題あるまい。じゃが曲線の部分はどうする? どうやって計るんじゃ?

 設計図を当てても中央部分だけ端と違う曲がり具合にしておる製品もある。

 どうやって計るんじゃ?

 その時使うのが儂ら木工職人が作り出す木型じゃ。

 儂らは製品の設計図を受け取りそれに合った木型を作り出す。出来上がった製品に木型を当てて製品が正しく加工されているか調べる。隙間があったら、何処か違っておるから修正したり作り直したりするんじゃ。

 設計図通りに製品が出来ているか調べるための木型を作り出すのが儂ら木工職人。

 いわば製品の質を保証するための最後の砦じゃ。

 鉄でやれないのかじゃと?

 バカモン! 元になる型をどうやって作り出すと言うんじゃ。鉄では加工し辛いではないか。

 その点、木ならば簡単に加工できる。

 じゃが、正確に素早く加工できるのは儂ら熟練木工職人以外に出来る者はおらん。

 複雑な曲線さえ儂らなら簡単に再現できる。素早く線を引いて切り落とし、鉋で削って直ぐ完成じゃ。

 設計図通りに完璧に再現できる。

 正しい製品にはキチンと吸い付くように密着するが、間違っていると隙間が出来たり、グラグラになる。製品の良否は木型で一目瞭然じゃ

 儂らの手で製鉄所の製品を作っていると言っても過言ではないわい!

 確かにお主のようにものの道理をわからん奴は製鉄所で木工が何の役に立つんだと言う奴も多い。

 じゃが、社長は違った。

 儂らの重要性を知っておった。

 製鉄所が稼働して直ぐの視察の時、何処の部署よりも早くやって来て儂らをねぎらってくれたんじゃ。


「ここは製鉄所ですが、製品を正確、精密に生産できるのは貴方方、マイスターといえる熟練木工職人がいるお陰です。幾ら良質の鋼鉄を作り出せても、製品に出来なければ無意味です。精密な製品を送り出せなくては社会に貢献できません。製鉄所の能力は貴方方の腕に掛かっています」


 そう言ってくれたわい。

 木工屋というと下に見られがちじゃったが、社長の言葉で陰口を言うものはいなくなったわい。

 若いのに職人の仕事を良く見ておるわい。

 言われんでも良質な仕事をする儂らじゃが、社長の一言で火が付いたわ。今まで以上に仕事に熱を入れて作るようになったわい。

 確かに家具を作れなくなったのは残念じゃが、儂らの木型で作られた製品が世の中に出て行くのは心地よい。

 しかも儂らの木型で作られる製品の多くは製造機械の土台や基盤となるものが多い。

 それらは別の工場に送られ、多くの製品を作っておる。

 儂らが作った製品が、さらに多くの製品を作り出し世に出ていると思うと胸が熱くなるわい。

 家具も生活の上で大事じゃが木型を作り出すのは、より世の役にたっておる。

 今更、製鉄所を辞めて家具工房を開くことは出来んわい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鉄道にロマン有り、ファンタジーに夢がある。 その両方を合わせた本作品は、面白い作風と思います。 夢と冒険が詰まったファンタジーとは一味違う世界を覗かせていただいています。 [気になる点]…
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