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式典後にて

開業式典を無事に終えた昭弥。社長室で休んでいるとき、今後の計画をセバスチャンに話す

「ようやく開通しましたね」


 無事に開通式を終えたセバスチャンは安堵の溜息を付いた。

 今日の午前十時、無事王都の南岸に作られた駅でユリア女王臨席の下、開業式が行われ、無事に一番列車を送り出す事が出来た。

 式典を終えて、一番列車が南岸駅に戻り、女王立ちを見送ったのが夕方。

 直後に本社屋に戻って社屋の社長室に入り、一休みして居るところだ。


「そうだね」


 昭弥も満足した。

 全てはこの時のために頑張ってきた。

 資金を集めたり、法律を作ったり、銀行や会社を作ったり、土木工事をしたり、機関車工場、車両工場を作ったり、港を作ったりと鉄道を動かすために。


「でも、土木工事が終わって雇った人達の仕事がなくなりそうなんですけど」


「いや、彼らにはこれからも働いて貰う」


「何をしてです?」


「一部は路線の補修や修理、損傷、堤防が崩れたとき迅速に修理するために残って貰う」


「残りはどうするんですか」


「路線を増やすのに使う」


 昭弥は、王国の地図を前に説明した。


「王都を中心に、放射状に路線を広げる。王国全土と王都を繋げるんだ」


「上手く行きますか?」


「と言うより、実現しないと王国は救われないんだ」


 これまで鉄道が帝国と王都しか結んでいなかったから、物流に偏りが出来ていた。それを正すには王国中に鉄道網を敷かなければならない。


「路線は何処に」


「基本的に、全ての方向に伸ばしたいんだけど、収入が見込めるのは、王国内で一番発達している南西方面だ。そこから始める」


「丁度王都の南側で仕事がし易いですね」


「それも考えて南に置いたからね」


 鉄道は建設費が膨大な上に多大な労力と年月が必要とされる。

 更に鉄道施設は一度設置すると変更は、営業中はほぼ不可能。迂回線を設けたり仮の施設を作らねばならず多大なコストがかかる。

 将来の需要と計画を考えて、建設する必要がある。


「と、言うわけで南西方面へ建設を行う。さらにオスティアから海岸線沿いに伸ばして沿岸部と王都を結びつける」


「どんどん大きくなりますね」


「ああ、でもまだまだ足りない。と言うより王都の鉄道整備が足りない」


「南岸駅が完成し、貨物駅や倉庫街も出来ていますよ」


「いや、各方面へ鉄道を延ばすと南岸だけと言うわけには行かない」


「なら今度北に出すときは北に駅を作るんですね」


「そのつもりだけど、北の駅と南岸駅を結ぶ必要がある」


「どうしてです? 北と王都を往復するだけなら問題ないのでは?」


「いや、オスティアから北へ荷物を運ぶとき、いちいち積み替えるのは手間だ。元々、オスティアから王都に鉄道を敷いたのは川船に積み替える手間を省くためでもあったからね。繋いでないと問題だ」


「確かに」


「それに、もし北に車両を増やす必要が出来たとき、南の車両を移し替える事も簡単にできる」


「それも大事ですね」


「ああ。だからこそ、この計画が必要になる」


 昭弥が一枚の書類を出した。


「これは?」


「コルトゥーナ大橋架橋計画。鉄道と馬車を同時に通せる橋だ。これを建設すれば、北岸の王城とも簡単に行き来できる。何より鉄道を直接送り込むことが出来る」


 オスティアからセント・ベルナルドに鉄道を短期間で結ぶために断念していたが、余裕が出来たのでいよいよ取りかかれる。


「建設期間が短いですね」


「元々、橋の建設は計画されていたようなんだけど、資金不足とか攻め込まれやすいとかの理由で建設されなかったんだ。ただ調査だけは行われていて、地質とかも詳しく調べられていたからね。確認調査も終わったから、あとは詳細設計と建設の作業だけだよ」


「工期が短くありませんか?」


 橋の規模に比べて建設の期間が短すぎる。


「新工法を使う。鋼材を組み合わせて建設するんだ。元になる鋼材は製鉄所である程度作ってあるから、現場では組み立てるだけで十分。これなら問題無い。既にルビコン川に架ける橋の一部や、開業した路線の一部にも使っている。検証は十分行うから土台だけしっかり組み上げれば良い」


 これまでは橋は現場で材料を加工して作り上げていたから時間がかかった。昭弥はそれらの作業を離れたところで同時に多くの部材を作ること、プレハブ方式で解決しようと計画していた。


「これが出来れば更に収入が増えますね」


「それだけじゃない。これはまだ計画の一部に過ぎない」


 昭弥は更に大きな紙を出した。


「こちらは?」


「王都環状線計画。北岸と南岸からそれぞれ東岸に橋を架けて、それぞれ鉄道を結ぶ。王都を一周するように配置すれば今度放射状に鉄道を延ばしたとき、それぞれの出発駅を結ぶ事が出来る」


「すごいです」


「ああ、凄い。王都どころか、王国中が鉄道で結ぶことが出来る」


「実現できると良いですね」


「実現するために準備は整いつつある」


 橋の建設技術は高くなっている。土木も良くなっているし機関車と客車、貨車の製造も順調だ。

 あとは、計画通りに鉄道会社の収入が増えれば言うこと無い。


「実現はいつですか?」


「技術的には上手く行きつつある。あとは、人手と資金、資材の手配が付けば着工できる。数年以内には建設し完成するはずだ。ただ」


「ただ?」


「収入がね。足りないんだよ。借金の返済を考えるとこれ以上、計画を抱え込むのは危険なんだ」


「お金ですか」


 帝国から借りた一億枚が重くのしかかる。


「大金を借りたのに、使えないとは」


「いろいろな事に使ったからね。鉄道だけに投入する訳にはいかないし」


 いくら鉄道を敷いても、運ぶ荷や乗客がいなければ無意味だ。

 そこで昭弥は、銀行を作って人々が金を借りやすくしたり、紙幣を作って売買が盛んになるように誘導した。

 おかげで、商売が活発になり、鉄道の予約が徐々に増えている。


「ここで大きな商売が必要なんだよな。鉄道を使った大きな商売が……誰かいないかな」

10/24一日のPVが1200を越えました。ありがとうございます。


10/27 誤字修正しました

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