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摘発

6/6 文章修正

「がはっ」


 銃声と共に銃を構えていた周の兵士がその場に、倒れ踞る。


「拘束しろ!」


 ルテティア王国憲兵達が殺到し、自分たちが撃った周の兵士を捕らえて行く。


「武器の密売の現行犯で逮捕する」


 指揮していた士官が宣告し次々と縄にかけてゆく。武装しているとはいえ負傷している者もいるのにキツく縛り上げる。


「助かった……」


 昭弥はホッとして憲兵の前に行くが、思いも寄らない言葉を聞いた。


「あなたもだ。武器の密売容疑で逮捕する」


「え?」


 昭弥はどういう意味か分からず一瞬固まったが、直ぐに抗議した。


「まて、ここに来たのは初めてだ。それに私は、王国鉄道の玉川昭弥だ。武器の密売では無く、軍需物資の輸送計画の打ち合わせでやって来たんだ」


「詳しいことは、憲兵本部で伺いましょう。さあ、来るんだ」


 そう言って昭弥を連れ出そうとしたとき、セバスチャンが足下に発光玉を叩き付けた。

 マグネシウムを主原料にした火薬と雷管を組み合わせたもので、床にぶつかった衝撃で激烈な光を発し、憲兵達の目を眩ませた。


「ぐはっ」


「逃げますよ」


 そう言ってセバスチャンは昭弥を引き連れて外に出て行った。


「ま、待て!」


 憲兵の制止を聞かず、二人は倉庫を出ると、路地に逃げ込み追跡を免れた。


「何なんですかあれ。本当に密売していたんですか?」


「そんな訳無いだろう」


 武器の納入はきちんと行っている。他人に任せているので、彼らが勝手にやっている可能性もあるが、少なくとも昭弥は関わっていない。


「何とか鉄道会社に戻りましょう」


「無理そうだな。憲兵の包囲網は完璧そうだ」


 周りの様子を探る限り、この町全体を封鎖しているようだ。そして、彼らは昭弥を探しているようだ。


「じゃあ、どうするんです?」


「こいつを持って行ってくれ」


 そう言って昭弥はセバスチャンへの全権委任状とユリア、義父である王国宰相ラザフォードへの手紙を書いて渡した。


「……どういう事です?」


「セバスチャンなら何とか包囲網を突破出来るだろう。届けることも出来るハズだ」


 鉄オタの昭弥だと運動神経に疑問があり逃げられる可能性は少ない。だが元盗賊のセバスチャンなら身の軽さを利用して逃げられるはずだ。


「ですが」


「大丈夫だよ。向こうは僕を生け捕りにしたいはずだから手荒なことにはならないはずだ」


「しかし」


「いいから行くんだよ! 何が起きているのか全く不明だ。調べられるのはセバスチャンしかいない」


 そう言って昭弥はセバスチャンに全権委任状と手紙を押しつけると憲兵の集団の前に出て行った。


「居たぞ!」


「捕まえろ!」


 確かに憲兵は昭弥を探しているようだ。

 セバスチャンは、命令に従って反対方向へ逃げて行き、包囲網を突破した。一方の昭弥は憲兵に逮捕された。




「兎に角、連絡しないと」


 そう言って包囲網を突破したセバスチャンは、西龍支社に向かった。だが既に憲兵によって抑えられており、中に入ることは出来そうに無かった。


「用意周到だな。誰かが計画しないと出来ないぞ」


 困ったセバスチャンは、王都へ直接行こうと駅に向かった。駅に行けば電信があるので昭弥が捕まったことも知らせることが出来る。だが、既に憲兵が駅を抑えており、検問が敷かれていて中に入れそうになかった。

 表向きには緊急軍隊輸送に伴う警戒警備と言っているが、セバスチャンを探していることは確かだ。

 アグリッパ大将に説明するか。

 いや、危険だ。大将が絡んでいないと断言出来ない。

 下手をすれば社長を逮捕した張本人に会いに行くようなものだ。

 やはり、一旦王都に戻って王城に事情を説明し、社長を解放して貰う方が確実だ。


「どうやって忍び込もうか」


 セバスチャンが駅の方を観察する


「おい、そこのお前」


 その時背後から軍人に声を掛けられた。




「どうなっているの!」


 ティナの叫びに象徴されるように王都にある王国鉄道本社は大混乱に陥っていた。

 西龍支社への憲兵による強制捜査、軍隊輸送に伴う路線の一部軍の管理下への移行などが行われていた。

 通常なら昭弥が大臣の立場を使ってはねつけるが、昭弥との連絡が取れないために軍務省の通達をそのまま受け入れるしか無かった。


「兎に角、社長と連絡を取らないと」


 そういってフィーネはありとあらゆる手段を使って連絡を取ろうとしたが。


「電信で呼び出しているけど、捕まらないわ」


「電話も繋がらない」


 フィーネ達獣人秘書はありとあらゆる手段を使って昭弥と連絡を取ろうとした。憲兵が西龍支社を抑えており、通信を掌握しているために連絡が取れなかった。


「今、西龍に連絡員と郵便送っているけど、半日以上は掛かるし」


 その移動にも、軍の軍隊輸送列車が走っているために一般の列車は停止気味だ。西龍へ行くことが出来るかどうか。

 その時、一つの通信文が入って来た。

 受け取ったティナがはしゃぎながら発信元を伝えた。


「セバスチャンからです。西龍駅から通信が入っています」


「え、どういう事。貸して」


 電信文をひったくるようにフィーネは受け取って、内容を読んだ。


「昭弥が憲兵隊に逮捕された」


「何で」


 内容を読んでいなかったティナが尋ねた。


「容疑は武器の密売容疑、更に軍隊の緊急輸送の為に鉄道が軍の指揮下に入れられているそうよ」


「どうすれば良いの」


「このことを王城に知らせ、必要な処置、通常業務に戻れるように軍に抗議を行うように、との指示よ。セバスチャンが全権委任されて必要な事を行うそうよ」


「いいの?」


 ティナは不安になって尋ねた。昭弥の権限を勝手に使えば、越権行為により訴追される可能性もある。


「全権委任の書状を持って王都に戻るそうよ」


「そう、でもどうやって戻ってくると言うの」


 軍が警戒する中、軍が制圧した施設や駅を通ってどうやって戻ってくると言うのか。

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