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召喚魔法再び

 ある日、ジャネット魔術師がルテティア王国王都にある帝国弁務官事務所に呼び出され駐在武官のスコルツェニー少佐と対面した。


「急に呼び出すなんてどういう了見?」


 帝国の皇帝から呼び出しとはいえ、魔術の研究が中断されてジャネットは不機嫌だった。


「済みませんね。どうしても知りたいことが出てきたため、呼び出しました」


 だがスコルツェニーは、気にすること無く笑顔でジャネットを迎えた。


「なんのために」


「数年前の実験失敗のことです」


「私は実験に失敗したことは無いわ」


 真顔でジャネットは言った。


「失礼しました。では実験において、出た成果について尋ねたいのですが」


「何?」


「その時出てきたのは何ですか」


「ああ、テレポーターの実験だったから転送元から出てきた物だけど」


「正確に言って貰えませんか?」


「これ以上は魔術研究上の秘密で答えられないわね。それに私は王国の首席宮廷魔術師。帝国に答える義務なんて無いでしょう」


「帝国の宮廷魔術師になる気はありませんか?」


「結構、前に居たとき実験を失敗だと言って非難した上、濡れ衣で追放した所なんて勘弁願いたいね」


 実際は、あまりにも研究が先進的で危険きわまりないため、実験禁止を命じていたが、勝手にやって失敗して、帝国に被害を与えたために追放されたのだ。


「では、こちらにも考えがございます」


「ふふん。このあたしにケンカを売ろうと言うの」


 ジャネットは、不遜な笑みを浮かべると魔力を増大させ戦闘態勢に入った。

 自称、永遠の一九才は伊達では無く、それ相応の魔力は持っているし、人類最強の魔術師として魔法の種類も豊富。

 帝国の弁務官事務所を破壊することなど簡単だ。


「今の研究費の三倍出しましょう。自由に使える研究所も用意します」


「あの時の実験で異次元と繋がって、玉川昭弥を召喚したの」


 あっさりと真実をバラした。


「……あー異次元に繋がってしまったと言う訳ですか」


 大規模テレポーターという話しだったが、とんでもない物を作っていたんだなと、スコルツェニーは思った。さらに、自分が促したとはいえ、簡単に口を割ったジャネットに呆れた。


「そういうこと、昭弥を導いたのは偶然と思っていたけど」


「どうしたのです?」


「いや、ちょっと実験結果を分析したんだけど、どうも装置が昭弥を選んだようなんだよね」


「というと?」


「テレポーターを作ったのは鉄道に対抗するため、鉄道に対抗する解決策を求めていたんだけど、その意志をくみ取って最適な人物を呼び寄せる様になっていたみたいなのよね。まあ、装置がそのような機能をもったのは偶然に近いけど。非常に興味深い現象で、人の感情類を捉える水晶球が……」


「では目的に合った人間を異次元から呼び出すことが出来ると」


 長くなりそうだったのでスコルツェニーは割り込んでジャネットの話を中断させた。すると、彼女は怒らずふんぞり返って断言した。


「あたしなら可能よ。何しろ最強の魔術師ですもの」


「……では、我々が目的とする人物を召喚して頂けますか?」


「えー、あんなつまんない研究、もうしたくない」


 拗ねた一九才のような顔をして、ジャネットは嫌がった。


「研究費を五倍にしましょう」


「装置の建設費は別枠でお願い」


 こうしてジャネットは帝国に移った。




「……全くなんてことでしょう」


 首席宮廷魔術師が辞表を郵便で送ってきた時には既にジャネットは、帝国行きの列車に乗って旅立っていた。

 あまりの行動にユリアは、こめかみを指で押さえた。


「迷惑な人がいなくなってスッキリしたんじゃ?」


 ユリアを気遣って昭弥が話しかける。久方ぶりにお茶会に誘われて相伴に預かっていた。


「手の届かないところで、悪さをされるのが困るのよ」


 そう言ってユリアは事の重大さを述べた。

 二人とも、ジャネット相手に酷い言い様だが、事実なので仕方ない。


「しかし、どうして帝国に行ったんでしょう」


「多分、ジャネットにしか出来ない大規模魔法が目的ね。大地を吹き飛ばしたり、城を吹き飛ばしたり、山を吹き飛ばしたり」


「吹き飛ばす魔法しか使えないんですか?」


 自分で言って昭弥は、それが事実である事に気が付き、常識を忘れていた自分を恥じた。


「まあ、厄介事の種が居なくなったことを感謝しま……」


 そこまで言ったとき、ユリアはある事に気がついた。


「どうしました?」


「いえ、もしかしたら異世界から誰かを召喚させようとしてるのでは、と思ったので」


「……出来るんですか?」


 昭弥は恐る恐る尋ねた。


「残念ながら、成功例がありますし」


「ですよね」


 強い共感で昭弥は頷いた。


「ですが拙くありませんか? 帝国に召喚魔法がばれて詰問されるのでは?」


「大丈夫でしょう。帝国自身が保有しているのですから。追求されるのは帝国です」


「確かに」


 だが、昭弥は不安が晴れずに尋ねた。


「もし、帝国が無茶苦茶なモンスターとか召喚したらどうするんですか?」


「その時は帝国ごと潰せば良いでしょう」


 にこりと笑うユリアの言葉には、圧倒的な説得力が、何より溢れる力のオーラに昭弥は怖じ気づいた。


「そ、そうですね」


 だが、昭弥にはまだ不安しかなかった。




「準備は順調かねジャネット魔術師」


 魔術装置の建設が進みつつあったある日、研究所を訪れた皇帝は尋ねた。


「はい、ありとあらゆる手が使えるので順調に進んでおります」


 ジャネットは満足そうに答えた。


「何時稼働出来る?」


「三日後には動かせますが、ソロソロ決めて頂かないと」


「何をだ?」


「どのような人物を召喚するのかということです。適当に選んではどんな物が召喚されるか分かりませんから」


「そうだな。帝国鉄道を儲かるように出来る者が良い。出来るか」


「お任せあれ、そこの水晶に手を当ててどのような人物が良いか頭に浮かべて念じてください」


「うむ」


 皇帝フロリアヌスは頭に鉄道を儲かる組織に出来る人材が欲しいと念じて触れた。


「これで終わりです。問題ありません」


「ところで何人召喚出来る?」


「前より上手く行っていますからね。十数人は召喚出来るでしょう」


「ならば出来るだけ多く召喚せよ」

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