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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
外伝 ルテティア急行殺人事件
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乱戦

「ぐはっ」


 突然の白い閃光にウンベルト達は直ぐに目をつぶったが、一瞬でも彼らの視界を消すには十分だった。


「クソ野郎! 何処だ!」


 ウンベルトが罵声を上げた時、銃声がした。

 弾が通過する音が聞こえて身構える。


「畜生!」


「がはっ」


 部下の一人が発砲するが、別の部下の悲鳴が聞こえる。


「むやみに撃つな! 伏せて視力を回復しろ!」


 ウンベルトが部下に言うが、銃声は留まるところを知らない。

 だが、徐々に視力が回復し昭弥達の姿を捉えることが出来た。


「殺すなよ。捕まえるんだ」


 ウンベルト達は銃を構えて撃とうとしたが、向こうから激しく撃ってくる。それどころか、連続して銃声が聞こえる。


「何なんだ、この連発は」




「動きが止まりました」


「爆竹が上手く牽制になったようだね」


 相手の様子を見ていたセバスチャンが報告して昭弥が応じた。武器を奪われると思い予め爆竹を隠し持って、連続的に爆発させて牽制していた。

 勘違いしたウンベルト達は新たな銃声、実際には爆竹の爆発音に動けずにいた。


「しかし、今のは凄かったな」


 目を両手で押さえながらスコルツェニーは、答えた。


「なんなんだいあれは?」


「ああ、今のはマグネシウムを使った閃光弾ですよ」


 写真技士に頼んで分けて貰ったマグネシウムを使って、強力な閃光を生み出し、目を眩ませる武器にした。

 強烈な光を出す割りに爆風は少ないので被害は少ない。

 昭弥が放って目を眩ませた隙にスコルツェニーを連れてセバスチャンと逃げ出した。


「こっちの銃は弾がもう少ないです」


 逃げる隙に、ウンベルトの部下からすり盗った拳銃を持ちつつ答えるセバスチャンだが、徐々に焦りが出てくる。


「これからはどうやって逃げますか?」


「いや、ここで牽制を続ける。連中を他に行かせることは避けたい」




「始まったようだな」


 マイヤーはあの昭弥から襲撃の可能性を聞いて親衛隊のみで三号車を固めている。本来なら通行禁止にしたかったが、盗賊の狙いは現金では無いかという推測から一号車へ通す事を承諾した。

 マイヤーにとっては、昭弥の推測が当たるのは腹立たしいが、陛下が安全ならそれで良い。


「マイヤー」


 その時ユリアが起き出してきた


「はっ、何でしょうか陛下」


「外が騒がしいようだけど」


「食堂車でティベリウス卿が夜会を開いているからでしょう」


「前方の方からも聞こえるのですが」


「トンネル内に魔物が出たそうなので、鉄道公安隊と憲兵隊が対処しているそうです」


「私が行きましょうか」


「いえ、陛下の手を煩わせるまでも無いとの事です。ごゆっくりお休み下さい」


「そうですか……。オーレリー卿はどうです?」


「はい、昭弥大臣の部屋にてお休みです」


「そう……」


 残念そうにユリアは言ったが、言うとおりに自室に戻った。


「貸しだぞ昭弥」


 陛下の部屋の扉が閉じたところで彼女は呟いた。




「では、帝国ではろくに電気も工作機械も無いと」


「はい、帝国にはありませんね」


 一方食堂車の方ではティベリウス主催の夜会が行われ、話しに花が咲いていた。

 主に帝国本土の状況で、投資可能な状況かどうかだった


「だとしたら投資額が大きくなり十分な収益が見込めませんね」


「いいえ、逆に内のですから今投資すれば先駆者となります。誰も持って居らず、一人だけですから市場を独占です」


「おおお!」


 招待客である投資家やら社長やらが歓声を上げた。

 様々な品を購入予定だけに、こちらからの売り込みをどうするか気にしていたのだ。


「昭弥、無事にやってくれよ」


「どうかしましたか?」


「いいえ、なんでも。それより、こういう話しも」


 そう言ってティーベは昭弥を気にかけつつ話しかけた。




「おい、オーレリー卿を探せ! 人質にするんだ」


「は、はい」


 ウンベルトが、指示を出し部下に向かうようにさせた瞬間。


「がはっ」


 その部下にナイフが突き刺さり、絶命した。


「オーレリー様に危害を与える者は生かしておきません」


 忽然と現れたマリアベルによって殺されたのだ。


「ってなんでメイドが」


「メイドではありません! オーレリー様の忠実な僕、マリアベルです。ただ単に使えるだけのメイドと同一視しないで下さい」


 握り拳を握って力強く答えた。

 昭弥が見たら危険人物の根拠にするだろう。いや、昔もっとドン引きレベルの事を言っているので今更だが。


「で? オーレリー様をどうすると?」


 魔神のようなオーラを纏わせてマリアベルが尋ねるとウンベルトは、首を大きく振って否定した。


「そうですか。では、じっとしていて下さい」


 そう言って、消えた。

 一瞬虚脱状態になったが、直ぐに状況を把握して周りに怒鳴った。


「落ち着け! ここは合流地点だ! 直ぐに増援が来る!」


 部下を叱咤していると引き込み線の奥から、複数の足音が聞こえてきた。


「よし、味方だ! 挟み撃ちに出来るぞ!」


 そう宣言したとき、その足音の人間から、魔法攻撃がウンベルト達に放たれた。

 やって来た魔法が次々と部下を襲い、倒されて行く。


「なっ!」


 驚いていると、昭弥が大声で叫んだ。


「ここを何処だと思っているんだ! 俺が作ったトンネルだぞ! 何処に引き込み線があって、金を運び出しやすいか分かるんだよ! だからレホス達に先回りして貰っていたんだよ!」


 強盗の可能性を考えた昭弥は、チェニスでかつてトンネル建設時に出会った冒険者レホス達に仕事の依頼を頼んだ。そして、盗んだ品を運び出せる場所、大量の現金を本川から離れたところへ運べる引き込み線との分岐点、輸送用に点検用の機関車や貨車が置いてある場所、以上を推測し彼らに見張って貰っていた。

 先ほどから派手に銃声を上げていたのは、彼らに自分たちの位置を知らせるためだった。


「畜生! 逃げろ!」


 形勢不利と判断したウンベルトは逃げに入った。

 トンネルの脇道に逸れて走って行くと、ウンベルトは昭弥にバッタリ出会った。

 激しい戦いの場から逃げようと横穴に入ったら、偶然出会ったようだ。


「ぐっ」


 昭弥は直ぐに来た道を引き返したが、目の前から帝国駐在武官補のスコルツェニーが現れた。


「はっ、これでお前もおしまい……」


 とウンベルトが言ったところでスコルツェニーが発砲。ウンベルトを射殺した。


「大丈夫ですか? 玉川社長」


「ええ、大丈夫ですよ」


 その時、魔法攻撃の音も無くなり静寂が戻った。


「どおやら終わったようですね」


 スコルツェニーが話すと、昭弥も答えた。


「ええ、後始末も無事終わって、良かったですね。スコルツェニー少佐」


「……どういう事です?」


 怪訝な顔でスコルツェニーが尋ねると昭弥は答えた。


「今回の事件、仕組んだのはあなたでしょう」

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