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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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閉会式2

累計六〇万PV達成。

ありがとうございます。


追伸

先日、熊本で大きな地震がありました。被災された方々にお見舞い申し上げます。

読者の中で被災地に居られる方は、どうかご安全に行動して下さい。心からお見舞い申し上げます。


【お詫び】

 追伸にてお見舞い文でありながら誤字を記入したことをお詫び申し上げます。

 被災地の方、どうかご無事で。

 閉会式が翌日に迫った日の夜深夜、ユリアは昭弥に誘い出された。


「陛下」


「て、昭弥」


 しかも現れたのはユリアの私室だった。これから寝間着に着替えようとしたとき、エリザベスが消えて代わりに出てきたのが昭弥だった。

 突然、目の前に現れ驚くユリアだったが、昭弥はお構いなしに単刀直入に言った。


「一寸、今晩付き合って貰います」


「え、え?」


 そして有無を言わせず昭弥はユリアの手を引いて、いつぞやの騒動で出来た王城から殆ど使われていない昭弥の屋敷までのトンネルへ。

 突然現れたのはこのトンネルを使ったからだ。

 再び、使ったトンネルに入り、元来た道を戻って誰にも見られずにユリアを連れて王城から抜け出し、自分の屋敷の部屋へ。

 トンネルの出口は昭弥の使っていない自室で、ベットが目の前にありユリアは顔を真っ赤にする。


「ちょ、ちょっと」


 だがベットで止まること無く、部屋を抜け、玄関に向かい、そこに待機していた馬車に乗せると博覧会のメイン会場である競技場にやって来た。


「あ、あの。今日はどうして」


 馬車の中でユリアは動揺しつつも尋ねた。

 いきなり王城にやって来てユリアの元にやって来るなり、一晩で良いので付き合って下さいと言われ、そのまま連れ出された、いや付いていった。

 チョロインと言われるかも、しれないが、これまでのおあずけ期間と、出現した数多のライバルを考えると、軽い女と思われようが誘いを受けて前に突き進むしかなかった。


「来れば解ります」


 だが、昭弥は応えること無く、馬車を進め競技場のアリーナの入り口の前に馬車を止めると昭弥は、ユリアの手を引いて真っ暗な競技場へ入って行く。

 そしてアリーナに入る手前で止まりユリアに向き直った。


「では、どうぞこちらへ」


 昭弥が腕を伸ばして指し示した瞬間、目の前の真っ暗なアリーナに光の列が二列中央に向かって伸びて行き、二人に道を作った。


「!」


 一瞬の出来事にユリアは驚き、昭弥に促されるまでその場に立っていた。


「さあ、行きましょう」


「は、はい」


 昭弥にリードされ、ゆっくりと前に進んで行く。

 そしてスタジアムの真ん中に立つと昭弥は腕を上げ、振り下ろした。

 すると、振り下ろした先のスタンドの一角が輝きだした。

 続いて昭弥が振り返って後ろを指すと、そこが輝く。

 腕を頭上で大きく振り回すと、スタジアム全体に光がともった。

 更に両手を広げるとアリーナの中心から光が広がり、スタンドを上り、光の花畑が誕生した。

 白だけでは無い青赤緑黄色。色とりどりの光の花が明滅する。


「それ!」


 昭弥が再び腕を伸ばすと、光が伸びていった。

 まるで生き物のように走って行き、観客席へ。

 昭弥が腕を動かすと光は、あちらこちらへ自由にスタンドとフィールドを走り回る。

 最後には、外周に到達しスタジアムを一周した。


「それ!」


 メインの掲示板の所で光が吸い込まれた後、上空に向かって光が放たれた。

 上空へ向かって走る光はまるで空に伸びる輝く柱のようで、スタジアム全体を包み込んだ。


「いかがでしょう?」


 自信満々に昭弥はユリアに振り返って尋ねた。これだけの光の演出など、この世界史上初めてだろう。


「……」


「陛下?」


 感動の言葉くらい有ると思っていたが、ずっと何も言わず口を開いているだけのユリアに昭弥は尋ねた。


「……」


「ユリア」


 呼ばれた瞬間、ユリアは昭弥に抱きついてそのまま押し倒した。


「素敵! ありがとう!」


 喜びの余り、ユリアがそう叫ぶと昭弥に唇を重ねた。


「!」


 突然の口づけに昭弥は驚いて離れようとするが、ユリアの力が強くて、離れる事が出来ない。

 そのうち抵抗できなくなり、そのまま力なく倒れた。




「あー、死ぬかと思った」


 ようやく開放された昭弥は、ユリアを見送ってから今回の事を手伝ってくれたセバスチャン達スタッフに礼を言うべくスタジアムの制御室に行った。


「おめでとうございます」


「今夜はありがとう」


 ニヤニヤ笑いながら迎えるセバスチャンに昭弥は応えた。


「しかし、凄かったですね」


「まあ、元々用意していたアイディアだったから」


 セバスチャンの言葉を押し退けるように今夜使った装置の事を話した。

 昭弥がやったのは、スタジアムに仕掛けた何万個という電球を使ったイルミネーションだった。

 仕掛けは簡単。

 昭弥の腕を振るうタイミングに合わせてスイッチをオンオフするだけ。

 走る光も、それぞれ電球に繋がる電極に、プラスの電極棒をジャーッと流すように動かして光が流れるようにしたのだ。

 最後の光の柱は、アーク放電を利用した照明で、サーチライトとして使う予定だったがそれを上空に向かって放ち、光の柱にした。

 現代日本だったら何と言うことの無い、単純なイルミネーションだが、電気がようやく発明されたこの世界では魔法も同然。

 サプライズとしては成功だろう。


「用意しておいてよかったよ」


「けど、良かったんですか?」


「丁度用意していたのがこれだったからね」




 翌日、王都では前夜に起きたスタジアムの怪現象の話しで持ちきりだった。

 夜中にスタジアムの光を見た人々が口々に起こったことを話し天変地異の前触れとか、女王陛下が魔物と戦った、ジャネット女史が魔法実験を行ったのだと、噂話と推測を交えて話した。

 だが、それも夜までだった。

 夕方から始まった閉会式の出し物となったのは、光のイルミネーション。

 前日の夜、昭弥がユリアに見せた演目だった。

 スタジアムの中を走る、電球を使った光のダンスだった。


「……」


 主賓として参加することになったユリアは前夜の内容が繰り広げられるのを見て、内心怒りに満ちていた。


 自分だけの昭弥のプレゼントだと思っていたのに。


 大勢の前でお披露目するとは、自分は会の予行演習のついでに連れてこられたのか。

 ぐつぐつと心の中にどす黒い感情が煮えたぎり始めた。


「昭弥様は、誰よりも早くユリア様に見せようと昨日見せたのです。それだけ、ユリア様の事を大切に思っているのですよ」


 だが、エリザベスにそう言われてユリアの表情はパッと明るくなった。

 誰よりも最初というのなら、仕方ない。やっぱり愛されているんだなとユリアは思い、先ほどまでの黒い感情は無くなった。

 委員長として隣に座っていた昭弥は、その様子を見てホッとした。

 実際は昨日は最終チェックの為のリハーサルで時間をずらしてユリアへのプレゼントにしたのだ。

 それがばれなくて良かった。

 機嫌が悪くなるユリアを見て戦々恐々だったが、助けられた。

 ホッとした瞬間、エリザベスと視線が合った。


 貸しだぞ。


 目はそう言っていた。

 他にも問題があるのにどうしよう。

 昭弥は内心困り果てていた。

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