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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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鉄道員インタビュー 鉄道博物館館長 トレビシック

次回、大魔神降臨

 あ、こんにちは。鉄道博物館館長をしているトレビシックといいます。

 あの……何を話せば良いのでしょうか? 博物館のパンフレットならそこに。

 え、手に入るからいらない? 開館する切っ掛けを教えて欲しい?

 あー、どこから話せば良いのか。

 私は元々貧農の子で一〇ぐらいから工房に奉公に出されたんですよ。そこで蒸気機関の製造や修理を教えて貰って、でそのうち独立を認められて職人になって、方々回るウチに蒸気機関車の修理をするようになったんです。

 当時は蒸気機関を使うのが金持ちの商人とか鉱山主だけで、大概どこかの工房と契約結んでいて入り込めないんですよ。工房を作るにも金がかかりますし、工房に臨時に雇われたたり、下請けしたりとかしていたんですけど、大体遠方の方で蒸気機関車が故障したから直してくれと言うのが多くて、あちこち回る内に蒸気機関車に詳しくなったんです。

 そんなとき、王国鉄道が検修員、整備士を求めていると聞いて応募したんです。

 拡大している真っ最中で腕を見せたら、あっという間に正式採用、そして主任になって検査員、機関車が修理できているか確認する重要な職に抜擢されたり、班長になって、助役になって、検修区の区長になりました。

 え? 成功した人だって。

 とんでもない。昇進して苦労しましたよ。

 何しろ何百人もの検修員を纏めるんですけど、多くは蒸気機関に関わったことの無い人間ばかりで使い物になりゃしません。けど、人手が足りないから彼らを育てて一人前にしなきゃならない。

 それで試しに小さい蒸気機関を作って見せてやったんですよ。ええ、フライス盤で半分に割ったりシリンダーの中が見えるようにして、蒸気機関の仕組みを見せたんですよ。

 そしたら話して良く解らないと言う連中がよく分かったといって仕事に取り組んでね。 で、上手く行ったのでその他の機械もミニチュアを作って教え始めたんですよ。蒸気機関車のミニチュアとか作って教えるようになりました。

 効果はあったみたいで、大分使えるようになりましたよ。

 そのうち、故障した部品とかで外装だけ直して教育用の機材を作ったりして徐々に増やしたんです。

 そのうち、検修区の周りに家が、会社の住宅が出来るようになって子供達が来るようになると検修区の仕事を紹介しようとジオラマを作って説明する様になりました。

 他に遊び場も少なかったことですし、父親の職場を紹介すると言う目的もありましたから。

 で、更に色々と作るようになって増えていったんです。

 後日検修の建物を増築するために取ってある空き地に小屋を建てて色々入れ始めたんです。

 まあ、規則違反なんで反発もありましたよ。

 それで、私と反りの合わない連中が本社に伝えたらしくて監察が来たんですよ。

 しかも、来たのが社長でした。

 丁度、子供達にミニチュアを見せている現場でしたし。

 終わった、そう思いましたね。

 規則違反を見られて首になるのではないかと思いましたよ。明日からどうすれば良いかと途方に暮れましたね。給料も良くて、福利厚生も良かったのでずっといたい職場でしたから。

 弁解しようにも、社長の背中をよく見たら全身が震えていたんですよ。

 完全に怒り狂っていると思って声を掛けられなかったとき、社長が大声で叫びました。


「これを作ったのは誰だ!」


 わ、わたしです、と恐る恐る手を上げて、申告して社長の解雇宣告を覚悟しました。

 そして、両肩に両手を置いて社長が言ったんですよ。


「作ってくれてありがとう!」


 え? って思いましたね。何しろ規則違反のオンパレードだったのに褒められたんですから。その後も社長の褒め言葉は続きましたよ。


「是非これを会社に提供してくれ区長! こんなに素晴らしいものは他に無い! 是非この空間を広げてくれ区長! いや神様!」


 いや、社長からそんな事を言われるとは思いませんでしたよ。何しろ一代どころか数年で新技術を作って王国中に鉄道を広げた人で、当時でも一部で神格化、生き神様とあがめられていましたし、私たち職人にとって恩人でしたから。

 その人から神様と呼ばれて面食らいましたね。

 で、私たちの機材を使って教育用広報用の施設を作ると言い出したんです。そのために検修区や機関区を潰しても構わないとか言ったほどです。

 流石に止めましたけど。

 結果私は区長から社長の直属になり、広報用施設、博物館の準備室長に任命されました。事実上の昇進で部下も好きに選んで機材の購入も自由にやらせて貰いました。

 ただ、私が抜けることで後任には監察官にちくった奴が、社長によくぞ紹介してくれたと社長賞を渡した上、ご褒美の昇進で後任の区長になってしまったんです。

 結果、元の機関区は反目していた連中が牛耳ることになり、私の子飼いの部下の殆どを引き抜く事にしました。やり過ぎて検修区から大勢が引き抜かれたり、転属していったので検修区の業績、検修台数や検査の成功率が低下して後任の区長が本社から色々追求されていたようですけど。

 とまあ、私は本社へ移動して博物館の準備を始めました。で、あてられた土地が王都の真ん中の再開発地区で建物も巨大な物でした。

 どうしてそんなに大きいのか尋ねたら、実物を置くのだ、と社長に言われてしまいましたよ。

 拡大期で機関車の数が足りなかったのに、その中から一台差し出して良いのかと。

 他にも故障した部品の外装だけを整えて使っていたんですが社長が次々と展示用に新品を持ち込んできました。

 予算も多くが割かれたんで、サラ取締役が社長に文句を言ったくらいですよ。

 本社の中にも博物館に懐疑的な人が多くて、そんな施設に誰も来ないと、車内の研修用の施設にしてしまえと言う声がそこかしこでありました。

 で、社長も反対意見に抗しきれず妥協したんです。


「試しに小さい展示で様子を見てみようか。実物の機関車使うけど」 


 で、中央駅のホームの一つ、建設されたばかりで運用開始前の増設ホームに機関車と客車を持ち込んでホームと車内にミニチュアや模型を置いたんです。

 あと、社長の強い指示で線路に降りて車両の真下を見れるようにしたんです。

 皆疑問だったんですけど社長の一声で行うことになって。

 美術の人達にポスターとか作って貰って各駅の掲示板に乗せて宣伝して呼び込みを行いましたよ。有線放送でもコマーシャルを流したりして、社長の熱の入れようは半端ではなかったですね。

 で、臨時展示の開催日を迎えたんですが、大当たりでした。

 数百人来てくれたら良いなと思ったら一日で一万とか来てしまって、会場の整理が大変でした。中央駅は勿論、他の駅からも応援を要請して整理にあたりましたね。

 本当に驚きました。

 結局、数日間の予定が一月やることになり、博物館の建設も即日決定となりましたよ。

 その後、博覧会の開催も決定して、メインの出し物の一つにされて更に急速に進んでいって、開館を迎えることになりました。

 初日だけでも数万人規模でしたからね。あとルテティア以外の人も多かったんで行列が乱れるとかの問題が起きたんですが、好評でしたね。

 社長の考えた空中展示法、巨大な一室、その真ん中に人間の頭より高い位置にレールを敷設してその上に機関車を展示する方法。真下から機関車を見学できて迫力があって人気でしたね。周辺が雛段になっていたりテラスを設けたりして巨大な機関車を様々な角度から見る事が出来るので人気でしたね。

 あと、軽便とは言え、実際に乗れるのが良かったのかもしれません。

 開催期間中に何百万人も入ったんですけど今でも一日に一万人以上来ていますよ。

 お陰で郊外に別館の建設も決まりました。

 標準軌の機関車や列車を実際に動かすんだと社長が息巻いてしまって、文字通り本物の鉄道をそのまま再現したような場所になる予定です。

 え? 検修区の区長に戻りたいかって?

 うーん、魅力的ですけど今は館長の職がありますし、やりがいもありますから。それにここで見学した後、会社に入って検修区に配属されましたという、子も出てきていて。それが嬉しくて。

 戻るのは一寸、厭かな。

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