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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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博覧会のトラブル1

ブックマーク四〇〇オーバー達成記念、臨時投稿第一弾。

「来場者数は順調に伸びています」


「それは良かった」


 オーレリーから博覧会来場者の資料を見せられ昭弥は満足した。

 各会場の入場者数と、入場券の売り上げを見て満足した。

 予想通りの数だ。

 だが、同時に不安もある


「会場の混み具合はどうですか?」


「やはり多いですね」


 平日の入場料を安くして入れるようにしたこともあり、平日でも会場の人は多い。

 鉄道関連の会社に特別有給休暇を設けて、期間中数日ほど休暇をとって博覧会に行きやすくしている。また、遠くの会場チェニスやオスティアへの職場旅行も行っていた。

 だが、人が多すぎるとその整理が大変だ。


「列とかは出来ていますか?」


 そのため、会場整理の人員を多く雇って人の流れを整理しようとしているのだが


「割り込みとか多くてトラブルが発生しています」


「拙いな」


 順番を守らないというの問題だが、それ以上に人が一箇所に集中するのが拙い。

 行列を作るように指導しているのは、入り口に殺到して人がすし詰めになり、圧迫されて死傷者が出ないようにするためだ。

 下手に人が集まると、明石の歩道橋事故のようなことになる。

 そのため、列の整理は必要だ。

 今のところ、東京駅の一〇〇周年記念カード販売程度で済んでいるが、そのまま暴動に発展したら目も当てられない。


「会場の整理が必要だろう。もう少し人を雇うと共に……」


「社長、大変だ」


 入って来たのはオーク族出身の秘書ムワイだった。


「どうした?」


「会場近隣の駅がパンク状態で、ホームに客が密集している」


 会場輸送の機関として電車を走らせているが、足りないようだ。


「ダイヤ編成を変えて、ラッシュ時の三分の二ぐらいに増やすか。場合によってはもっと増やさないと」


「常にラッシュ時でも困難だが」


「それだと整備の時間が取れなくなる」


 鉄道車両は車検と同じように検査の走行距離と走行時間が決まっている。いたずらに走らせて、その時間がやって来ると直ぐに整備に出さなくてはならない。

 そのため、下手に増発すると後々、整備待ちの車両が増えて車両不足になりかねない。

 車両の増強は行っているが、生産が軌道に乗るのに時間が掛かる。


「路面電車とオムニバスを増発して……」


「社長、一部のパビリオンに来場者が集中して混乱が発生しています」


「社長、大変です。宿泊施設が足りません」


「社長」


「社長」


 初めてと言うこともあり、博覧会に関するトラブルが昭弥の元に全て持ち込まれてくる。


「うーっ」


「社長?」


 その時、昭弥がフラフラ揺れたかと思うと、いきなり机に突っ伏した。


「社長!」


 昭弥が倒れるのを見て秘書達は驚いた。




「過労と、栄養失調です」


 急遽、王都の鉄道病院から呼び出された看護部長のフローラが診断して、報告した。


「負傷による回復も不充分だったのに、連日の激務で体力が大幅に削られていましたから。休めば治るので、直ちに横になって下さい。今後一週間は絶対安静です」


「社長が起きたら仕事しますよ」


 恐る恐るセバスチャンが尋ねるが、フローラは容赦なかった。


「ベットに括り付け逃げないようにします。トイレもここで済ませます。あと書類の持ち込みも禁止です」


「あの、一寸やり過ぎでは?」


「これぐらいやらないと完全復活は無理です。私が付きっきりで看病します」


「私がします」


「私が」


「私も」


 と獣人秘書達が立候補するが。


「絶対ダメです。どうせ色々身体に触ったりして、止めることと引き替えに書類を持ってくる気でしょう。そのような事を阻止する為にも、面会謝絶です!」


「横暴だ」


「看護婦の権限です!」


 そう言ってフローラは全員を昭弥の病室から叩き出し、完全介護を始めてしまった。


「まあ、言っていることは正論ですよね」


 そう言ってセバスチャンが他の秘書を引き連れて社長室にもどった。


「問題なのは今後の博覧会運営をどうするかです」


 既に多くの人が入ってきており、来場者数、入場券販売も順調に進んでいる。

 ここで中止にするのはリスクが大きすぎた。

 だが、昭弥なしに運営するのは困難が予想された。


「トラブルや問題が起きているよ」


 ティナが、集まっている要請書を抱えて報告すると、他の秘書も読み上げた


「どうする、宿泊施設が足りないよ」


「来場者のマナーも問題だ。列に並ばずに勝手に入ろうとして押し合いへし合いになっている」


「一部のパビリオンに人が集中しているのも問題だ」


「船を何処に引き渡せば良いのか解らないし」


「通常の業務からも指示書がやって来ているよ」


 次々とやって来る問題、業務に秘書達は呆然とした。


「社長が回復しないと」


「違うよ」


 否定の言葉をかけたのはティナだった。


「私たちがするべきなのは、途方に暮れることでも、社長にすがることでもなく、自分たちで問題を解決することだよ」


「だが、どうやってやるの?」


 纏め役であるフィーネが尋ねた。


「社長が幾つ物準備をしてくれたよ。それを実行すれば良いの」


「社長に図らなくて大丈夫かい?」


「社長の下に行く前に私たちで片づけるの。社長が行うべき事が出来るように私達の元で出来ることは私達でやっておくの」


「でもどうやって」


「似たようなトラブルは纏めてマニュアルを作って各現場に解決策を示して。現場で対処できるようにして置いて。実行者への権限の移譲も忘れないで」


 そう言ってティナが指示を始めた。


「何としても博覧会を成功させよう。社長の為にも」


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