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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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博覧会準備3

五〇万PV突破記念の一日二回投稿はこれにて終了。

明日からは再び一日一回投稿に戻ります。

また何時かやりたいと思います。


4/21 誤字修正

「ホテルの手配が間に合いません」


「取り壊し前の貴族の邸宅を使えるようにしてくれ。人が入っていないだけで十分使えるはずだ。念入りに掃除をして、使えるようにしてくれ」


「はい」


「長期滞在の方が多くいます」


「会社のゲストハウスとかを使って誘導しろ。取引先にも尋ねて開いている社屋とか無いか探すんだ。王宮の方にも迎賓館とかが使えないか交渉してくれ」


「はい」


「豪華寝台車が足りません。予約が一杯になりつつあります」


「稼働率の低い寝台列車から外して臨時列車に回すんだ」


「展示品の搬入が遅れています」


「操車場に展示場専用のレーンを確保して搬入速度を速めることが出来るようにしてくれ」


「臨時線の建設が遅れています」


「他の路線の建設を一時中断しても投入してくれ」


「搬入に時間が掛かっているようです」


「軽便鉄道を敷設して輸送を迅速に行えるようにしてくれ」


「配給のパンがまずいと不満が」


「職人を変えてやれ」


 開催日が近づくにつれて、用意は進むが、更に問題が発生するようになる。

 来場者は増えてくるし、作業員の数も増える、展示品の搬入で渋滞が起こる。

 ありとあらゆる問題が起こって本部である委員会に送られてくる。

 そしてその処理を行うのだが、それが昭弥に集中豪雨の如く訪れる。


「はあ、厄介だな」


 そうした問題の他にも、来場者、特に上流階級やスポンサーへの説明や挨拶、歓迎の宴などをこなさなくてはならない。


「お疲れ様です」


 補佐役のオーレリーが紅茶を差し出した。


「ありがとう」


 紅茶を飲んでひと息吐く。


「大変そうですね」


「王都だけで数カ所の会場に、それらを結ぶ交通機関の編成。搬入のための連絡線の建設。やる事が多くて混乱気味だよ」


 計画の責任者と言うこともあり、やる事は沢山ある。

 各会場のパビリオン、展示館は出店企業や各地の団体に建設させたりしているが、パビリオンを立てることの出来ない、中小の企業や職人の為に大展示場を建設しなければならない。彼らの得意な、自慢の一品を作り上げて売り込んで貰わないと博覧会は成功しない。


「何とか配送業者を動員して配送を行っているけど、間に合わせないと」


「人が多く集まってきているようですけど」


「そうだね」


 初日は春の終わり頃にして、秋の中盤頃に終わるように設定している。

 天候が安定して、過ごしやすく、寒くないので暖房があまり必要にならない時期であり、大勢の人々を受け入れるには負担の少ない時期だ。

 ただ、その時期は新年度とか春先の農作業も多いからやって来る人は少ないだろう。


「まあ様子見の人たちも多いからね」


 予約率の低さからみても、少なめだ。万単位もあるが、後になって更に宿泊施設を建設したりした結果、供給過剰になりつつある。


「これだけの人数を埋めるのは大変では?」


「いや、問題はない。職員を動員するから」


「係員を増やしても意味が無いのでは?」


「違う。観客として動員するんだ」


「どういう事ですか?」


「各地の駅員などを慰安旅行、視察の名目でパックツアーなどに参加させて、上手く機能しているか見せるんだ。同時に彼らには、博覧会を見て貰い、駅周辺の住民の方々に宣伝して貰うんだ。勿論有線放送のニュースで連日放送して宣伝を多く行うが、実際に言った人の話というのは強力な宣伝効果になるからね」


「考えましたね」


「更に軍隊も動員する」


「え、演習でもやるんですか?」


「ああ、その前後で休暇として会場を歩き回らせる。人を増やすんだ。彼らなら宿泊施設を作らずテントで十分だしね」


「すごくやりますね」


 オーレリーは、驚きを通り越して呆れた。


「何としても成功させないとね。何とか収益を増やして、今後に繋げたい」


「今後も似たような事を行うつもりですか?」


 まさか毎年やるのではという予感がオーレリーの中に浮かび、戦慄した。

 ここ数ヶ月、ずっと博覧会開催の為に多くの準備を行ってきた。

 それはもう殺人的な作業量であり、通常の経営に影響が出るほどだった。

 こんなことを毎年やったら、確実に過労で死亡する。


「数年に一回程度だよ。まあ小規模な展示会とかはやるけど、あとは、各業界や企業に勝手にやって貰おう。大規模展示会場を作ったことだし、一から建設するより、数日借りてそこで展示して見せて、商談を成立させることの方が良いよ」


「じゃあ、どうしてこんな博覧会を」


「一度大きな大会を開いて見本を見せないと誰もやらないよ。一度大きな大会をやって大成功させれば、各地で独自に開催するようになるはずだ」


 成功すると信じているし方法も解っている。

 しかしこの世界の人達はそのことを知らない。一度成功例を見せて、自分たちもやったら儲かるのではないかと思わせる必要がある。

 後は、各地で似たような催し物が行われ、商談が成立し契約、売買が加速して行けば、王国は発展するはずだ。

 そして、王国が良いところと知ればここに来てくれる人が増えるはず。


「もうすぐ開会式だ。それまでに何とか混乱を収めて行うぞ」




「お目に掛かり光栄でございます陛下」


「よくぞいらしてくれました」


 王城ではユリアも忙しかった。

 謁見に来た帝国貴族の相手をしなければならないからだ。

 彼らは、格下とはいえ帝国貴族。無下に扱う訳にはいかない。

 一方の帝国貴族も、相手の領地に入ったのだから挨拶をしなければ失礼にあたるので、謁見しなければならず、互いに煩わしいと考えることが多い。

 だからといって取りやめる訳にいかないのが、こうした儀礼だ。

 一通り、儀礼の定型文と様式化された儀式を行い無事に貴族を送り出すとユリアは尋ねた。


「エリザベス、次は誰?」


「今の方で最後です」


 その言葉を聞いたユリアは、盛大に息を吐いてから王座に倒れ込んだ。


「もう何人目?」


「合計で二〇〇人以上は越えたでしょうね」


 エリザベスの言葉にユリアはウンザリした。


「はあ、なんでこんなに来るのよ」


「大きな催し物ですし、インディゴ海の香辛料を欲しがる貴族は多いですから」


 冷凍、冷蔵技術が無く魔法以外で長期保存の出来ない、生鮮食料品や肉などは、塩漬けにするのだが、味が単調になりがちだ。そのため胡椒や丁子などの香辛料を欲しがる貴族は多い。

 直接、購入しようとやって来る人も多い。


「それにルテティア鋼や鉄道などの機械もありますし」


 現在、ルテティアはこの世界で最高の技術力を誇っている。

 全て、昭弥が改良した技術で工業生産額が飛躍しつつある。

 それらを自分の領地に何とか導入しようと、女王と接触しコネを作りたいと考えていた。


「様々な贈り物もございますし、よほど必死でしょうね」


 宝石や絵画、彫刻などの芸術品の贈答品が王城の倉庫に積まれるほど、送られてきており、彼らの必死さがよく分かる。


「彼らに多少口利きされては」


「仕方なさそうね。けど、女王なのにやっていることは商人ね」


 ユリアはウンザリするように呟いた。


「今日は休みたいわ」


「是非と言いたいところですが、この後開催前の晩餐会がございます。それが終わってからです」


「うーっ」


「我慢して下さい。これは王国にとって好機なのですよ」


「わかっているわ」 


 王国は帝国内の他の王国や貴族と顔見知りであるが、その多くは東方への遠征時、従軍しているとき、この王国に立ち寄るだけで、戦争するときだけの付き合いだった。

 だが、今後は王国内の産業を発展させる方針であり戦争を介さない、発展を目指している。

 そのため軍事協力以外での交渉や対話を行える絶好の機会となっている。

 アルプスが邪魔をして交通が不便だったという理由もあるが、王国にとって侵略略奪の戦争経済から平和に産業が発展する道に進む好機でもあった。


「是非とも成功させないと」


 戦争以外にろくな産業が無いと言うことは帝国の言いなりになりつづけると言うことだ。他の貴族と貿易などが行えるようにして少しでも力を蓄えるべくユリアは精力的に他の貴族と会談を持った。 

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