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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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博覧会準備2

4/21 誤字修正

「何とかルテティア急行を動かすことが出来た」


 先日、ルテティア急行が完成し、一番列車に乗ってトラキアまで行き、船を乗り継いで帝都まで行った。

 だが初っぱなから殺人事件とか洒落にならないことが起きてしまって、昭弥自身も負傷したこともあり、帝都に到着したときには暫し絶望的な気分になった。

 だが、真相報道の結果、ルテティア急行知名度が上がり、試しに乗ってみたいという人が増えたのは幸いだった。

 予約がひっきりなしで、増便を検討中。追加の編成の製造も決まり、毎日運転も考えている。

 とりあえず、製造中の二編成と、更に追加で三編成の製造が決定。

 他のコースも検討しており、更なる製造が計画されていた。


「災い転じて吉となるか」


 何しろ昭弥も負傷することになったのだから。

 お陰で昭弥は、傷が元でしばらく入院しろと言われてしまった。

 しかし、寝込んでもいられない。ベットの上でもやれることはやる。


「兎に角、今の仕事をかたづけなければ」


 今の課題は、博覧会を無事に開催し成功させることだった。

 レパント海を行く商船の力を借りて、沿岸部の港にポスターやパンフレットを撒いて貰っている。更に吟遊詩人なども使い、宣伝を進めている。

 特に重点投入しているのは帝都だ。

 帝都に宣伝の本部を作って、ティーベを本部長に貴族や大商人などに宣伝活動を行って貰っている。

 ルテティア急行事件のお陰もあり知名度が高まって、予約が増え始めている。

 帝都の予約センターには旅行の予約の列がひっきりなしと言うことだ。

 その点では、昭弥は安心していたが、同時に心配があった。


「増えすぎじゃないか」


 昭弥の懸念は、予約があまりにも多すぎると言うことだ。帝国の妨害、予約して置いて出発直前にキャンセル、を懸念して予約の際には頭金の入金を条件にしていたが、それでも多い。

 帝国が支援しているようにしか思えない。

 例えば、帝国の事務所や役所に博覧会のポスターを出すことを許したり、各地の貴族や有力者に勧めてみたり、各地の芸人や芸術家をルテティアに送ることを約束したり。

 ここ数日だけでも、そのような例が多くあった。


「手伝ってくれるのは、嬉しいんだけど」


 帝国の見え透いた手が見えるだけに、昭弥は対策を練り上げる必要があった。




「予約の件数が凄い量やわ」


 取締役の一人であるサラが、呟いた。


「ルテティアへの移動手段の確保が難しくなっています」


 手伝っていたオーレリーが応えた。


「まあ、レパント海を横断してトラキアまでやって来てくれれば、列車で連れて行けるしな。そこまでどうにかして着いて貰わんと」


 サラは商人出身という立場を利用して、帝国本土、沿岸部の来場客の足を確保することを要請されていたが、今までの商業圏とは違うために、手が足りなかった。


「はあ、気が重いわ」


 自分の畑違いの場所での行動は非常に疲れる。

 何とか確保しようにもこう離れていたら無理だ。

 そんなとき、セバスチャンが指示書を持ってやって来た。


「サラ取締役、朗報ですよ」


「なんや?」


「社長の指示で、レパント海方面の役目は解任して帝都のティベリウス卿に引き継ぐようにとの事です」


「そら助かるわ。で、ウチは何をすれば良いの?」


「インディゴ海周辺の商人を集めて欲しいそうです。それと船を可能な限り集めるようにと言うことです。それと船大工も」


「何をする気なんやろ。来場客の輸送か?」


「それもあるそうですが、老朽化した船でも購入するようにと言うことです。居住性が確保されていれば航行に支障があっても良いそうです。それらをチェニス、リビエラ、オスティアに回航するように。大型の川船も購入して航行に耐えられないようなら丘にあげろと言うことです」


「? そんな古い船どうする気や」


「さあ、詳細はこちらに記載されています」


 渡された詳細な指示書を見てサラは納得した。


「了解したわ、直ぐに手配するで」」


「それと博覧会の入場料を変更するようにとのことです」


「入場料は決まっていたはずじゃあ?」


「いえ、安息日とその前日は高くして、平日は安くするそうです」


「何でや?」


「さあ、これは兎に角行うようにと言うことです」


 これには指示書はなかった。そういう指示は昭弥には珍しくなかった。自分たちに何を言っても理解出来ないと解っており、実際やってみないと上手く行く事を証明できない。そういう話しだった。


「鉄道車両や住宅の納入、建設計画の変更を行って欲しいと言うことです」


「何をするんや?」


「車両の納入を遅らせたり、住宅の引き渡しを遅らせるようにと言うことです。また、なるべく多くの住宅を建設するようにとの事です」


「引き渡しを遅らせて更に建設? ダブるや無いか。何に使う気や?」


 セバスチャンが詳細な指示書を見せると、今度はサラが真っ青になった。


「完全に契約違反や無いか。えらい賠償金を取られるで」


「はい、だから何とか交渉してくれと」


「あーもう」


 サラは絶望的な気分になった。


「兎に角、凄腕の交渉人を集めてくれへんか。こじれることになりそうや。それと資金の確保も同時に行うんで、スポンサーからの資金とか社債、会債の準備も」


「解りました」


「ところで昭弥はんは?」


「王城に出て交渉中です」




「博覧会に軍隊を動員し、装備を出せだと」


 軍務大臣のハレックは、昭弥の要請に眉をひそめた。


「はい、軍の動員訓練の一環として行えば宜しいのでは。これだけ大規模な軍勢の移動はそうそう出来ません」


「そうは言うが帝都周辺に部隊を展開させるだと」


 昭弥が行った提案は軍隊を帝都に集結させ野営準備、陣地構築を行う事だった。

 軍隊は現地での自給自足を旨としているため、駐留が長期間になりそうなときは、自ら材料を調達し建物を作ったりして長期滞在に備える。

 それを博覧会でも行わせ、来場者の宿を確保しようというのだ。


「結局は自分の判断の見誤りで助けて欲しいのだろう」


「はい、そうです」


 昭弥は素直に自分の失策を認めた。


「予想以上に人が集まりそうなんです。何とかご協力を」


 昭弥はハレック元帥に頭を下げた。


「……ふん。今回だけだぞ」


 昭弥が素直に頭を下げた事に満足し、軍隊の動員を認めた。


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