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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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博覧会準備

4/6 誤字修正

「博覧会ですか?」


 昭弥は大まかな計画を立てた後、昭弥は自分の計画を実現するために閣議にかけた。


「どのようなものでしょうか?」


「今回はルテティア博覧会なので、ルテティア国内で生産される製品を展示し表彰するのです」


「売り込みですか」


「はい」


 一般に博覧会というとお祭り騒ぎ的な物を想像するかもしれないが、元々は、自国の製品を発表し売り込む為のものだった。


「ルテティア国内で生み出される製品を一堂に集めて、紹介し新たな取引を獲得する。それが博覧会です」


「それを王都でやろうと?」


「はい」


「面白そうですね」


「何処にそのような土地があるのですか」


 乗り気なユリアに対して疑問を抱くように軍務大臣であるハレック元帥が尋ねてきた。

「現在、再開発中の環状線内側の一部の公園を会場にします他にも郊外の何カ所かを会場に指定します」


「広すぎないか? 会場と会場の間が離れすぎていて移動できないのでは?」


 懸念を示したのは宰相であるラザフォード公爵であった。


「ご心配なく、王国鉄道全面協力の下、入場券を提示して貰えれば王都内のフリーパスとして扱い、自由に乗り降りできるようにします」


「つまり入場できて王都の各所を巡ることが出来ると言うことか?」


「はい」


「素晴らしい」


 手放しでラザフォードは賞賛した。


「是非やりましょう」


「しかし、客はどこから集めるのだ?」


 軍務大臣が渋い顔をして尋ねた。


「リグニア帝国本土から集めようと考えております」


「不特定多数の人間が集まるのは軍事上好ましくありません」


 軍事機密を奪うスパイが集まることを警戒してハレックは反対した。


「いえ、寧ろ公開した方が良いでしょう」


「どういう事だ」


「公開することによって王国との交易が盛んになります」


「全ては金のためか!」


「人々を幸せにするためですよ。全員が幸せにするには、金が行き渡るようにして、それを使って自分がどのように幸せになるか、それは自分たちで選んで貰います」


「皆が好き勝手、動いて国が纏まるか」


「誰もが幸せになれなくて国と名乗れるのでしょうか」


 昭弥とハレックは、お互い視線を外さず相手を睨み付ける。


「了承します」


 その二人の決着を解決したのは、ユリアだった。


「博覧会の開催を了承します」


「しかし」


「女王の判断です。実行しましょう」


「は、はい」


 こうしてユリアの強力な支援により博覧会の開催が決定した。




 早速、王国政府に博覧会準備委員会が結成され、昭弥が委員長として博覧会の準備が始まった。

 まず最初に行わなくてはならないのは、各企業からの協賛、製品の出展や協賛金、資金提供だ。

 王国政府が主催とは言え、なるべく民間の予算から行いたいと考えている。下手に政府の主導が強くなると融通の利かない、内部の規定で雁字搦めになって外面は良いがサービス劣悪と言うことになりかねない。

 だからなるべく民間から人と金を集めることにした。

 大半は鉄道会社からであり、なんとか人を集めることが出来た。

 だが、問題なのは他の民間企業から人、物、金を出してくれるかどうかだ。

 全て鉄道会社関連で固めてしまうという手も無くはないが、全ての企業の製品を集めて販路の拡大が行われるようにしなければならない。

 参加を促すために契約のある会社や工房などに声を掛けると共に、王立銀行総裁シャイロックにも依頼している。

 だが、要請した企業が被ったりするなどがあり、その調整に手間取った。

 また協賛金の説明が厄介だった。基本的に博覧会は協賛企業、スポンサーからの資金提供を受けて行われる。そして、公式スポンサーとして自社の製品にグッズを張ったりポスターを作っても良いという事になっている。

 その仕組みが今まで無かったので説明するのに手間取った。

 さらに、勝手に応援していますとか、グッズを販売する連中が出てきたのにも困った。何より考える必要があったのは、王都の中小企業や屋台などだ。彼らは人が集まると思って勝手連的に応援の横断幕を作っているのだが、金を払ったスポンサーは、金を払わない彼らに不満だった。まあ、それぐらいは大目に見て欲しかったが、確かに不満が高まるのは問題なのだが、応援してくれる気持ちも大切にしたい。

 そこで、横断幕やポスターを王国政府で用意、協賛金も王国が出して、帝都府を通じて中小企業や屋台に格安でポスターやエンブレムを渡すことにした。多少の支出に商人達は怒ったが、それほど高い値段では無かったので、受け入れられた。

 一番の問題となったのが、オスティアからの嘆願だった。

 オスティアは、王国一の海港として発達していた。

 セント・ベルナルドへ向かう主要通行路として鉄道開業後も接続されていたこともあり、より発展していた。

 だが、アルプスに先日出来た連絡トンネルが完成してから状況が変わった。

 帝国への主要交通路がトンネルの入り口にあたるチェニスになってしまい、そこへ直接貿易船が入港するようになってしまった。そのため、貿易量が急激に減少している。

 帝国鉄道による輸送や、王都への物資の輸送分があるが、減少するのは目に見えている。

 そこで、少しでも人を呼び込もうと、博覧会の開催地を王都では無くオスティアへ変更してくれと嘆願してきた。


「虫のええ話しやな」


 昭弥を手伝っていたサラが呟いた。


「いや、オスティアの危機感は正当です」


 新たな通商路が完成すればそれまでの交通路を利用していた相手に商売をしていた町は衰退して行く。これまで大丈夫だったから今後も大丈夫と安心している、とあっという間に寂れてしまう。


「何とか応えて上げたい」


「せやけど、どうやって支援するんや?」


「会場をオスティアにも作りましょう。と言うより増やしましょう」


「移動がえらい大変になるんや無いか」


 王都内の移動も鉄道で目処が立ったとは言え、さらにオスティアなど論外では無いのか。


「ええ、そこで周遊切符を作ります」


「周遊切符?」


「はい、一度買えば自由に王国鉄道の自由席に乗れる切符です。有効期間は一週間ほどにすれば良いかな。帝都で買えば、往復分と一週間王国内で自由に乗り降り可能。指定席は別料金ですけど使えるという形にすれば大丈夫です」


「そらまたえらい大盤振る舞いや」


「でも人が来てくれるでしょう」


「せやな。けど王都とオスティアだけの間に限定するべきやないか」


「いいえ、会場の箇所を王国中に増やしましょう。オスティアだけで無くチェニスやアムハラ、リビエラにも作りましょう」


「最初より規模が広がっておらんか」


「でも規模が大きい方が良いでしょう?」


「そらそうやけど」


「でしょう。これらは発展途中ですし、紹介も兼ねて行いましょう」


 そういうわけで博覧会の規模が更に大きく広がった。

 だが、タダでさえ大規模な計画だったのに更に規模が大きくなったため、資材の不足が懸念された。各会場へ資材を供給するため、鉱山の大規模開発や、森林鉄道の更なる延伸などを行い資材の確保を行う事にした。

 また、各会場を結ぶための列車増発のために車両の生産が更に加速することになる。

 同時に自分の計画を更に加速させることにした。

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