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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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鉄道員インタビュー 鉄道画家ウェジェーヌ

4/5 誤字修正

 あ、初めまして。私は画家をしているウェジェーヌです。

 私にインタビューと言われたんですが、どうしてなんでしょうか。

 絵を描いているだけで話すことなんて何もありませんよ。

 え、どうして鉄道画家になったのか聞きたい?

 まあ、良いでしょう。

 私は、あるアトリエにいたんです。普通、画家になろうとしたら師匠のアトリエには行ってそこで師匠の手伝いをしながら、腕を上げていくんです。

 私も師匠の元で描いていたんですが、どうも腕が上がらなくて。

 いや、自分で言うのも何ですが、自分の描きたいものと違っていたんです。

 人物画とかどうも苦手で。私が描きたいのは鉄道で、他のを描くのはどうも抵抗があって。

 アトリエを抜け出して良く鉄道の駅に行って機関車のスケッチをしていたんです。

 そんなときです、声を掛けられたのは。

 どんな言葉だったか?

 今でも覚えていますよ。


「そこ、間違っているよ」


 絵の細かいところを指摘されて。どう違うんだといわれて、怒りましたね。どうして違うんだって。

 そしたら鉛筆で指摘されたんですけど納得出来なくて。

 証明しろと言ったら、じゃあ付いてこいと、言われて構内に入って行ったんです。

 いや、驚きましたよ。

 前に間近でスケッチしようと進入したらしこたま怒られたんで、入らないようにしていたんですけど、ズンズン入っていくんで、思わず付いて行ってしまって。

 で、指摘されたところを見たんですけど、指摘通り間違っていました。

 恐れ入ったんですが、その後怒られると思って覚悟しましたね。

 案の定、駅員の人がやって来て、怒られると思ったんですが、いきなり敬礼されたんですよ、連れて来てくれた人に。

 実はそれが玉川社長だったんですよ。

 駅員の人から聞いて驚きましたね。いや本当に。

 それで、尋ねてきたんですよ玉川社長が。鉄道の絵は描けるかって。

 言われて、描きましたよ。ええ、機関車の絵を。

 その後も、色々指示されて描きました。

 十数枚くらい、ラフ絵を描いた頃かな、社長が聞いてきたんですよ。


「会社に入って絵を描いてくれないか?」


 即承諾しましたね。

 何しろ、好きに絵を描けるんですから。

 私が入ったのは本社にある絵画部です。

 え、どんな仕事かって? 絵を描く部門ですよ。

 どんな絵かって?

 主にポスターの絵とか、肖像画ですね。

 広告宣伝が多かったので機関車をメインにした広告を多く描きましたね。他にもリゾート地リビエラとかの絵ですね。観光促進のために描いたんですが、現地に行って描くんで楽しめましたよ。

 切符や本に描く挿絵とかも。ひっきりなしに仕事が入るから、もう忙しかったですよ。

 それと、社員の顕彰ようの肖像画もありましたね。功績のあった社員の肖像画を描くんです。そんな事する人は余りいませんから、送られた人は喜んでいましたよ。

 他にも機関車の絵を描かせて頂きましたよ。新型のお披露目前に。

 もう本当に嬉しいですよ新しい機関車が間近で最初に見る事が出来るんですから。これほど嬉しい職業はありませんよ

 え、写真が出てきて困らないかって。

 確かに出てきたときは、驚きましたし、危機感を抱きましたよ。

 博覧会の前に出てきたんですからね。写真店が出来はじめて肖像写真とか撮られてその方面の仕事は激減しましたし。

 ポスターにも写真の絵が使われ始めたので、クビになるんじゃないかなと思っていたんですけど。


「写真は全てを撮ってしまうから、余計な物が映りやすい。絵は必要なところだけ切り取ったり足したり出来る。何より見やすく描くことが出来る。これからも、もっと頑張って貰うよ」


 と言って、一人もクビになりませんでしたね。

 確かに、ポスターも多かったんですけど、より多くなったのが分解イラストでしたね。

 職員の教育用、特に運転士や検修員、整備に関わる人達に機関車や客車の構造や、各部分の機能とか動きをイラストで紹介するんです。ええ、理解が早まるようにと。

 以前からも多かったんですけど、更に多くなりましたね。

 電報とか、電話とか、電気関係が多くなっていたこともあり、その紹介も多かったですね。

 何より、一般向けのイラストも多くなったんですよね。

 一般人に鉄道を紹介する本を出してもしょうが無いと思ったんですが、社長は啓蒙と宣伝を兼ねて行う、当たり障りのない内容では無く、実際に使えるくらいに詳しく書くんだ。

 といって、描きまくりましたよ。

 どうなったかって?

 馬鹿売れでしたよ。本当に売れて驚きましたよ。

 社長って本当に凄いよ。

 え、社長に関するエピソード?

 そうですね。社長の絵を描かせて欲しいと頼んだんですが、怒られましたよ。


「私は自分が描かれることに喜びを感じない。私を描きたいというのなら鉄道や機関車を描くんだ。私の成果であり、誇りなのだから、鉄道を描くことは私を描くことと同じだ」


 本当に鉄道が好きなんだよと思いました。

 けど、恩人なんでどうしても描かなくてはと思って描きましたよ。

 ええ、三枚ほど。

 一枚は、社長が全力疾走する後ろから、これまで製造された機関車や電車が後を追って走って行く姿。

 王国鉄道の全種類を描いた力作ですよ。

 完成した後、社長に見つかって見せたら。


「俺は必要なかったのに」


 そういって苦笑していましたよ。

 けど、喜んでいたみたいですよ。その絵を持って帰っていましたから。自宅の書斎の壁に飾って喜んでいるってセバスチャンさんから聞きました。

 他にも描いたものは無いかって?

 まあ、会議室の様子ですね。重役相手に熱弁を振るう姿を描かせて頂きました。

 迫力あるんですよね、目に力を入れて大きく口を開けて熱弁を振るう姿は。

 その姿を描いたんです。

 何処にあるか。

 ああ、あれはエリザベスさん、そう社長の義姉さん、いや義妹だったかな? その人が持って行きましたよ。

 ただ、表情に不満があったようですね。


「こんなに綺麗じゃない。もっと鬼気迫った表情。頬は瘦けて、更に目はぎらぎらで、口元は裂けるくらい口元が引きつって、表情も何倍も暗いけど、目元は笑っている」


 とか言っていましたね。けど、そんな表情が出来る人がいるんですかね。どうも悪魔か何かと勘違いしていたみたですけど。それが本当の社長の姿だと言いましたけど信じられない。

 ええ、その絵は持って行かれましたよ。かつての恥辱、苦労を忘れないためとか言って。

 一体何があったんでしょう。

 あ、最後の一枚ですか? 社長の寝顔ですよ。

 社長は良く視察とか出張で列車に乗るんです。私もその音もだったり、視察先をスケッチするように命令されて同行するんですけど。大概は外を見たり車内の様子を見るんですけど、時折寝ていることがあるんですよ。

 その姿をスケッチして、そのまま絵にしたんですよね。

 列車の個室の窓にもたれ掛かっている社長の寝姿。

 いつもエネルギッシュに動いているのにあんなに穏やかに眠っているんですから。

 え? 見たいって?

 いや、手元にありませんよ。持って行かれたんですから。

 誰にって、女王陛下。

 なんか社長の絵を描いて欲しいと頼まれたんですけど、その絵を見つけたら暫く動かず凝視して、そのまま持って帰ってしまいましたよ。

 ええ、後日代金を貰いましたけど、金額に目が飛びましたよ。

 そんなところですかね。面白い話しじゃないでしょう?

 え? 十分面白い? そうかな? 

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