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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
213/763

連絡船

五〇万PV突破記念に本日も朝に投稿します

夕方にも投稿予定です。


4/5 誤字修正

「最近、王国鉄道に乗客を取られているような気がするのだが」


 皇帝が帝国鉄道の担当者を呼んで話しかけた。


「はい、事実です」


「なぜ、劣っているのだ」


「残念ながら本数も多く、時間も短いので」


 帝都から船で最短距離を行き、そこから列車に乗り換えて行くことで大幅に時間を短縮。帝国鉄道から乗客を奪っていた。


「ならば最速の列車を設定しろ。帝都から九龍王国へ最短で結ぶ列車を設定するのだ」


「ですが」


「帝国の端から端まで行き来を可能にするのが我らの役目だ。直ぐに作るんだ」




「帝国が新しい列車を走らせるようです」


 情報収集を行っていたセバスチャンが答えた。


「どんな列車だ?」


「リグニア横断急行と言って、最短で帝国の端から端へ向かうようです」


「本当か……」


 昭弥は絶句した。


「流石に脅威ですか?」


「いや、良い列車になりそうだ。乗ってみたい」


「マジでやめて下さいね」


 前のめりになった昭弥をセバスチャンが止めた。

 鉄オタの昭弥なら初乗りに行きたいと行って本当に飛び出て行く。


「でも、乗れないと思いますよ」


「人気だからか?」


「いえ、王都への到着時間が深夜なんですよ。で、そこから更に九龍王国へ向かう予定なんです」


 セバスチャンの言葉を聞いて昭弥は黙り込んだ。


「流石に、乗る気にはならないでしょう」


「いや、帝国鉄道のルビコン川の橋の完成はまだだったよな」


「ええ」


 王国鉄道は先日ルビコン川を渡る橋を完成させたばかりだった。一方の帝国鉄道は普通の渡し船で行き来している。


「あと、車両用の連絡船を帝国鉄道は買っていたっけ?」


「いえ、普通の川船を買って蒸気機関で動かしているだけです」


「……乗客は地獄を見るな」




 ヘンリーは、帝都に在住する商人の一人だ。

 大きな商家に雇われており、主に遠隔地へ行き商品を買い集めてくることを担当している。

 家に帰れる機会は少ないが、鉄道の開通のお陰で、移動時間が短縮されあちらこちらに行きやすくなっている。

 その意味では、本当に鉄道の恩恵を受けている一人と言えた。

 列車の設備も良くなった、寝台車で横になって眠りながら行くことが可能。夜眠って朝起きたら目的地だったという事もあり、移動時間の短縮に便利だ。

 今日も、寝台車に乗ってルテティア王国を横断することになっている。翌日の昼には九龍王国の首都西京に着くはずだ。

 個室で資料の確認を行い早めに食堂車で食事を摂ってから、個室に戻って早々に眠った。

 だが、熟睡している最中、車掌によってたたき起こされた。


「起きて下さい」


「……どうしたんだ?」


 完全に熟睡していた状況で起こされ瞼を擦りながらヘンリーは尋ねた。


「乗り換えです。お願いします」


「西京まで行くはずじゃ無かったのか?」


「いまルテティア王都です。ここでルビコンを渡るための連絡船に乗り換えて貰います」


「朝まで寝かせてくれないか?」


「接続の列車は次の連絡船が到着した直後に出発します。お急ぎを」


「全く」


 そう言われてヘンリーは寝間着から旅の服に着替えて荷物を旅行カバンに収めると、直ぐに部屋を出て列車を降りると連絡船に向かって歩き始めた。

 埠頭には蒸気船が待機しており、次々と乗客が乗り込んでいく。

 あてがわれた部屋に入ったヘンリーは、そこにカバンを置くと備え付けられたベットの上に横になった。先ほどから睡魔が襲いかかって来て眠かった。

 熟睡の中、たたき起こされて、中断された眠りを再開させようとしていた。

 その心地よい睡魔にはあがなうことは出来ずいつの間にか寝てしまった。


「お客様済みません」


 しかし、直ぐに船員に起こされてしまった。


「到着しました、接続列車が待っております」


「……わかったよ」


 不機嫌そうにヘンリーは答えた。ここで怒ってもしょうが無い。もしここで寝てしまったら接続列車に乗れず、朝まで待つことになってしまう。


「直ぐに行くよ」


 旅着の皺を伸ばしてカバンを持って船から下りて列車に向かう。既に接続列車は待っており、ヘンリーは乗り込むと部屋に直行、着ていた旅着を放り投げ、寝間着に着替えると、ベットに入って眠ろうとした。

 眠気が覚めつつあったが、瞼を閉じて必死に眠ろうとする。


 ピイイイイイイイッ ガコン


 しかし、出発の号笛の音と発射時のショックで完全にヘンリーは目覚めてしまい、終点まで眠ることは無かった。




「睡眠不足になる乗客の方が多いようです」


 情報を集めていたセバスチャンが報告した。


「だろうね。連絡船乗り換えなのに最短時間で結ぶことを考えたらそういうことになるよ」


 実際アメリカの鉄道開発の初期では開業しても橋の完成が間に合わず、渡し船で移動して貰っていた。

 それが、複数箇所の場合、夜中に何度も起こされて乗り換えをするはめになっていた。


「うちは少ないですよね。その手の苦情が」


「列車ごと船に乗せているからな。眠ったままお客様を列車ごと船に乗せて乗り換えの手間を省いている。たたき起こす必要も無いしね。まあ、これもルビコン川に掛かる大橋が完成するまでの間だ」


 現在王都周辺では完成した橋以外にもルビコン川にかかる橋の建設を急ピッチで進めている。

 その数四つ。

 殆どが完成間近だった。

 更にオスティアやイリノイ、フレデリクスバーグなど各所でルビコン川を渡る橋の建設を行っていた。


「これで連絡船を使う必要も無く時間短縮になるな」


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