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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
208/763

冷蔵輸送

ごめんなさい、投稿時間が遅れてしまいました。

明日は八時に投稿予定です。

これからも御愛読宜しくお願いします


4/1 誤字修正

「よお、トム」


「やあ、ガブリエル」


 農協役員のガブリエルが、駅長のトムに話しかけた。


「どうだ。準備の方は?」


「こちらは車両の手配も出来ている。後は出荷するだけだ」


 カンザスの駅で準備が進んでいたのは、新たな設備、生乳輸送施設だ。

 各牧場と農場にある牛舎から集めた牛乳を一旦ここに集めて、冷蔵保管。。やって来た生乳輸送列車に詰め込んで消費地に運んで行くのだ。


「農協で設備投資するのは大変だったけどな」


 軽便鉄道で各農場を結ぶのは勿論、牛舎にレールを延ばして、タンクから運び出せるようにした。

 更に冷蔵施設の建設も大変だった。

 冷凍機を作って、氷を製造してタンク内に通したパイプを使って冷水を循環させ冷やすのだ。

 また冷蔵前に低温で殺菌し、安全管理を行う為の設備も作られている。

 全体の動きをスムーズに行う為に火力発電所も併設され、電力と低温殺菌用の熱水を供給している。また温排水は、近隣の栽培用温室に提供したり大浴場に使われたりする。

 また冷凍庫や冷蔵庫を作り野菜や肉を運ぶのに使える。


「お陰で便利になったけど、本当に売れるのか? 王都にも牛乳はあるだろう」


 心配そうにガブリエルが尋ねた。


「王都の牛乳は不味いそうだ。だから農場の牛乳は簡単に売れる見込みが高いと社長は言っている」


「本当かよ」


「社長曰く残飯を煮込んだ後の煮汁のような味だそうだ」


「……飲む気が一気に失せるな」


「まあ、そういう偏見があるから最初は上手く行かない可能性も有るが、徐々に浸透して行くだろうとのことだ」


「そうなると良いな」


 二人が話す間に、タンクへの牛乳充填が完了。更に冷蔵用のパイプへ冷水を供給するサブタンクに氷と水を入れて冷蔵の準備も完了。

 出発態勢が整った。

 最終確認を終えて一番列車は出発していった。




「牛乳の出荷は進んでいます」


 報告書を持ってきたセバスチャンが報告した。


「売り上げの方は?」


「安くなったことで少しですが売れ始めています。ホットミルクで売り出しているのも良いみたいです」


「そのうち、フルーツ牛乳やコーヒー牛乳を駅の浴場などで冷たい奴を販売してみるか」


「しかし本当に美味しいですね」


「最初に飲んだ牛乳が酷すぎたからな」


 王都の牛乳はハッキリ言って飲めたものではない。

 残飯に牛乳を入れて煮込んで、その煮汁を飲んでいるようなもの、と昭弥は表現していたが当たらずとも遠からずだ。

 一般に王都の牛乳の生産は、建物の地下に乳牛を飼ってそこから得ている。

 狭い地下で買われているので衛生状態も悪いが、問題は餌だ。

 牧場では飼料や干し草を食べさせるのだが、町中にそんな物が手に入るはずも無い。なので、周辺の住宅などから出てくる残飯を与えていた。

 そのため、出てくる牛乳も味が悪くなり、残飯のような匂いと味になる。

 小中と学校給食で牛乳を飲み、代わり映えせず同じような味を毎日飲んで飽きていた昭弥だったが、不味い牛を飲んでから、給食の牛乳の品質の高さに改めて感銘を受けていた。


「絶対に成功させるぞ」


 ご飯味噌汁に牛乳はどうかと思うし、特に美味しいとは思わないが、飲みやすい牛乳という物を提供するべきだと昭弥は思っていた。


「しかし、牛乳の施設を作るのにえらく予算がかかりましたね」


「併設する施設が多かったしね」


 温水や冷水を供給したり、冷蔵施設や冷凍施設を作っている。すべて発電所を中心に出てくる熱水や電力を使った物だ。


「しかし発電所が壊れると周辺への被害も大きくありませんか?」


「そうだよ。まあボイラーを三つ以上作ってあるけどね」


「けど一箇所に集めすぎて非効率では」


「いや、纏めて置いた方が効率が良いんだ」


 冷凍施設と冷蔵施設に熱水、温水、浴場、温室栽培施設と、一見冷熱が真逆の施設が多くて非効率のように見えるが、寧ろ効率が良い。

 一般にクーラーや冷蔵庫は冷気を作って流しているように見えるが、実際は部屋や庫内の空気を吸い込みそこから熱を奪い取って、送り返しているだけだ。

 で、奪い取った熱は外に出している訳だ。夏に室外機の近くにいると余計に熱いのは部屋の中の熱がそこから捨てられているため。こうやって熱が外に放出されるため、ヒートアイランドとなる。

 昭弥は出ていく熱を使って熱水や温水にして浴場に使ったり温室栽培の熱源に使っていた。


「兎に角、プロトタイプが出来たんだから、後はこれらを全国に広めるんだ。沿岸部なんかにも増やす」


「沿岸部で送り出す物があるんでしょうか?」


「魚や魚介類もあるし、それらを冷凍したり、養殖と言って陸で魚を稚魚から育てて出荷したりする」


「色々便利そうですね」


「ああ、冷蔵車も用意してある。まあ機械式のクーラーを作れないのが悲しいが」


 蒸気機関車の蒸気を利用した蒸気吸熱式か、氷を入れた水槽を使って冷気を送る方式のどちらかだが無いよりマシだろう。


「肉の輸送コストも安くなるはずだ」


「どうしてですか?」


「今までは生きた牛を運んでいたが、これからは現地で解体した後、冷凍したり冷蔵したりして運び込むことが出来る」


「冷凍冷蔵のコストで更に高くなるような」


「あー、確かにその部分でコストは高くなるけど、売れる部分だけを運ぶ事が出来るようになるんだ」


 生きた牛を運ぼうとすると、互いにぶつからないようにスペースを設けないといけないし、生きているので、餌や水も必要になる。何より生きているが、売り物にならない内臓や脚、頭、皮なども輸送する必要がある。その分の料金も掛かるからコストが売れる肉に上乗せされる。

 だが、確実に売れる肉のみを冷蔵若しくは冷凍して運ぶ事が出来るので生きた牛を運ぶときより、何倍も多くの肉を運ぶ事が出来る。


「これで牛肉の値段も安く出来る。まあ、収入を維持するために余り安くするのは危険だけどね」


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