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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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予約センター

3/29 誤字修正

「近頃王国の連中は予約という制度を設けているそうだな」


 帝国鉄道の担当者を呼んだ皇帝フロリアヌスは尋ねた。


「はい」


「我々もしてはどうか?」


「既にしてありますが」


 帝国鉄道では予約というシステムは確かに存在する。ただそれは出発駅に行き予約を行い出発時に確実に座れる、あるいは部屋が取れると言うことでしか無い。


「そのような物では無く。途中駅からでも予約が出来る様にするのだ」


「それもいたしておりますが」


「前日に予約が出来る様にしておくのだ」


「そ、それは」


 確かに途中駅からの乗降も可能だが、搭乗日の二週間前に切っている。何故なら、列車の予約を行うのに、鉄道で座席に空きがあるか否かやりとりする必要があるからだ。確実に用意できるのが二週間前で、定員を満たすのにギリギリの調整を行っている。

 やけに冗長に見えるが、これでも精一杯頑張っている。


「試しにやってみよ」


「は、はあ。しかし連絡に時間が」


「魔術師を使った連絡網があるだろう。それを使え」


「しかし、列車管理だけで魔術師は手一杯でして」


「増員すれば良かろう。直ちに行え」


 そこで担当者は、魔術師を増員して、各地での予約受付を始めたが、直ぐにパンクした。

 あちらこちらから担当となった駅に予約が殺到した。しかも、乗換駅で予約が取れなかった場合、キャンセルが行われるなどの作業が追加されることが多く疲労気味だった。

 以上の事を担当者は皇帝に報告する。


「何故そのような事になる」


「やはり列車の予約管理を出発駅で管理しているため、連絡を行いがたく」


「王国鉄道の連中はどうやっているんだ?」


「予約センターを設けてそこで全ての予約を引き受けているようです。乗り換え便の予約だけで無く、帰りの予約も纏めて出来る上、ホテルの予約も行っているようです」


「ならば我らも一箇所に集めよ」


「しかしそれではえらく広い作業場所が必要に……」


「兎に角行え」


 皇帝の一言により、早速帝都に帝国鉄道予約センターが設けられたが、こちらも直ぐにパンクした。魔術師の数が増えて予約照会を行うのだが、その後予約の書類を取り出しに棚に向かう。その行き来がしんどい。更に魔術師との間でやりとり、出先の駅員とのやりとり、その間に発生する聞き間違いや伝達ミス。それにより予約の混乱が発生していた。

 さらに魔術師がいることで余計な経費が掛かる。

 帝国の予約システムは混乱に陥った。




「何だこれは」


 それを見たセバスチャンと獣人秘書達が一斉に身構える。

 中央にある円筒形の物体がぐるぐる回り、その周りに囲うように机が、更に何人もの職員が対面していた。


「タダの円筒形の棚だよ、電気モーターで回っているだけ」


 昭弥が説明するが、内心しょうが無いと思っていた。

 NHKのプロジェクト〇の記録映像を初めて見たとき魔法装置かと疑ったぐらいだからだ。ジャネットがまた変な魔法装置を作って稼働させていると思い込んでもしょうが無い。


「何ですかこれ」


「予約センターのキモだよ。アレに予約台帳があってそこに記入するんだ」


「どうして回っているんですか」


「その周りにいる職員が取りやすくするためだよ」


 マルスシステム、JRが使っているコンピューター予約システムの総称でありみどりの窓口の端末から中央のコンピューターで処理し発行している。

 そのシステムが出来る前の人力による予約システムを参考に昭弥が作り出したシステムの根幹が、あの円筒形の回転本棚だ

 各地の予約係が電話を掛けてきて職員が受け取る。予約内容を聞いた職員が目的の予約台帳が回ってくるのを待って取りだし、すぐさま空きがあるか確認。乗り換えがあるならその乗り換えの列車にも予約の空きがあるか確認する。

 ホテルの必要があるならホテルの予約も行う。鉄道系列のホテルの予約も受けているから問題なしだ。

 都合が良く、お客様が予約を了承したのなら予約係に切符の発行を許可して発行させ、職員は予約台帳に記入。電話を切った後、予約台帳を所定の位置に戻し、新たな予約の電話を受ける。

 そうした事を繰り返していた。


「こうやって、前日までの分を予約しているんだ」


「何日前までの分ですか」


「あれは七日前からの分、七日日前から一四日前の分は隣、それ以上の前の予約や団体は別の場所で受け取る」


「どうしてあんなに大きな円筒形の本棚を設けて回しているんですか。普通に本棚に入れて取りに行かせた方が良いのでは?」


「それだと本棚との往復で脚が疲れる。それに何人もの職員が入り乱れて混乱しやすいしね」


 狭い図書館で何人もの生徒が宿題のために資料を集めまくるようなものだ。絶対に渋滞したりぶつかったりして収拾がつかなくなる。


「だったら本棚の方から回ってきてもらうのだ」


「なるほど」


 回転寿司と同じ考え方だが、スピードはまるっきり違う、毎秒四センチの回転寿司に対してこの円筒の本棚部分の回転速度は秒速四〇センチ。これでもマルスシステム以前の装置の半分程度の速度だが十分早い。

 だが職員達は正確に予約台帳を取りだし記入するときちんと所定の位置に戻している。

 まさしく職人芸で、一メートル離れた場所に投げて戻している職員もいる。

 国鉄職員の技を短期間で習得し実戦するとは、侮りがたい人々だ。


「凄まじいですね」


「まあね」


「けど、六日前から十日前の掛けての予約はどうするんですか?」


「予め、あそこの回転テーブルで取ってから隣に移す。それになるべく一週間前の予約が入るようにしている」


「どうやって?」


「予約割引きを行っているんだ。一月前なら一割引、団体なら更に一割引ってね。なるべく負担が回転テーブルの方に行かないように気を遣っている」


「あ、なるほど」


「それ以前の切符に関しては旅行会社でとっておいて、事前に抑えるようにしている。なるべく負担が少なくなるように配慮しているんだよ。他にも政府や大企業に事前指定席を用意している」


「何ですかそれ?」


「予め決まった車両、席、部屋を指定しておく。その日になって使うのであれば、指摘切符を発行して座って貰う。いなければ車掌に預けて他の乗客に乗って貰う。いくらか割り引いているけど、必ず支払って貰う。そういう制度だよ。これなら確実に料金が取れるし、政府や会社も出張などで社員を送るときに確実に座らせることが出来るだろう。うちの会社でも使っているよ」


「それは良いですね」

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