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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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旅行会社

「よお、トム久しぶりだな」


 カンザス駅に来たガブリエルがトムに話しかけた。


「おう、今会いに行こうと思っていたんだ」


「ここ数日、いなかったからどうしたのかと思ったぞ」


「ああ、会社が慰安旅行をプレゼントしてくれてね。リビエラに行っていたんだ」


「ホントか」


「本当だよ。ほら、証拠のお土産」


 干した牡蠣と魚に貝殻を使ったアクセサリー。リビエラの特産品だった。


「本当なんだな」


「ああ、お陰で焼けたよ」


 そう言って南洋の日差しに焼かれた肌を見せ、ガブリエルをうらやましがらせた。


「いいなーっ」


「だったら、お前も行けよ」


「そうだ、そのことで来たんだ。俺たちもリビエラに行きたいんだ」


「家族旅行に行きたいのか?」


「それも含むな。農協の方で旅行に行かないかと企画が上がって、相談に来たんだ」


「それなら歓迎だ。何処か希望はあるか?」


「王都かリビエラという話しが出てきている。そのどちらかに行きたいんだが。この前のニュースでリビエラへ陛下が休暇に言ったことを事細かに伝えていただろう。それを聞いた組員が話題にして俺たちもリビエラで休暇を取ろうと口々に言うようになってさ。行きたいんだよ。リビエラが第一候補で王都が次だな」


「リビエラは、ここからだと王都経由になるから、王都まで行ってそこからオスティア、リビエラチェニスと回るコースはどうだ?」


「そんなのあるのかよ」


「ああ、鉄道会社の系列に旅行会社が出来てね。そこでパックツアーってのがある」


「なんだそれ?」


「予め予定されたコースに従って動くんだそうだ。人数が多い分料金が安くなる。自由行動の時間もあるが、効率的に有名どころを回るなら便利だ。自由時間を増やすとか観光とのバランスは時間と金と相談してくれ」


「ちゃっかりしているな」


「まあな」


「ここから出発できるのか?」


「大半は王都発着だから、ここから王都に行って参加することになる。まあ、この駅から出る列車の手配も行うから実質上は、この駅から出発だな。王都までの移動と滞在の一日を含めて七日間のコースになるがどうだ?」


「そうか良かった。それにする」


「人数は?」


「三〇人くらいと思っている」


「少なくないか? 農協の組合員はもっと居るだろう」


「全員で出ていく訳にもいかないだろう。畑や家畜の世話もあるのに」


「なら、三回くらいに分けて行けば良い」


「分ける?」


「ああ、三組に分かれて一組が旅行に出ている間に、残りの二組が行っている人達の畑や家畜を世話する。帰ってきたら別の組みが旅行に行く。そういう方法はどうかな?」


「ああ、そうかそれなら大丈夫だな。でも平気なのか。そんな手間が掛かるようなこと」


「いや、会社が元から企画していることだし、問題無い」


「本当に至れり尽くせりだな」


「だが便利だろう。行ってみないか?」


「勿論行くよ」


 その時、ガブリエルが思い出したように言った。


「ところで水着の貸し出しもやっているか?」


「ああ、やっているけど。ツアーにも組み込まれている」


「女達が、陛下と同じ水着を着たいって言っているんだけど、頼めるか?」




「旅行の企画は成功です。購入者が増えています」


 旅行会社の契約数を報告しに来たオーレリーが書類を差し出しつつ答える。


「良かった。増え始めたのはいつからだい?」


「やはり陛下のリビエラでの休暇が大きいでしょう。放送日から契約数が増えています」


「やっぱり、放送したのが良かったな」


 ユリアの休暇について有線放送のニュースで逐一、出していた。

 何処で何をしたか、どんな風景を見たか、何を食べたか。

 それらが放送され、人々の耳に入った。

 そして、聞いた人々は思った。


 俺たち、私たちも行きたい。


 ほんの十分の一が、そう思って実行しただけでも大きい。

 そして、行った人間がその事を旅行先の事を言いふらしたらどうだろう。スネ〇の自慢を聞いた、のび〇のように羨ましいと言う人が出てくる事は確実だ。

 だから、慰安旅行と言うことで各地の駅員、車掌にリゾート地への旅行をプレゼントしたのだ。

 駅員、車掌は多くの乗客と接する。

 その彼らからリゾート地の話しを聞いて、じゃあ俺たちも、と言う流れに持って行けば増える。


「しかし、農協や工場のために三回に分けて同じルートというのも」


「なにか不満かい?」


「一度に済ませた方が楽じゃ無いですか?」


「確かにね。けど農作業を放棄させる訳にはいかないからね」


「そうですけど」


「あと会社としても助かるんだ」


「どういう事です?」


「一度に大量に来られるとホテルとかがパンクするからね。お客さんが多すぎて対応しきれない。で、帰ったら急に暇になる。けど、分散すれば一回当たりの対応は楽だ。しかも次が来るまでの間休むことが出来るし、三回も予定されているのだから長期的な安定収入になる」


「なるほど。しかし、人が一杯来ると大変じゃ無いですか。席を取るとか。満員で列車に乗れないという人が増えるのでは?」


「席に関しては十分に考えてあるよ」


「そうですか。それと、水着の注文が多くなっていますね。陛下が着たスク水でしたっけ。来たいって言う女性が多いです」


「……欲しいなら生産して渡して上げて」


 ウンザリした気分で昭弥は答えた。


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