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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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昭弥の説明

 昨日3/24第四回ネット小説大賞一次選考候補になりました。

 また一日一万PV突破、総合評価一〇〇〇点突破を記念して、本日3/25は朝昼夕の投稿を行います。

 これからも鉄道英雄伝説を宜しくお願いします。

「ええと、一寸整理させて貰うわね」


「はい」


 鉄道会社本社の社長執務室で昭弥から重大な話しを聞いたユリアは、こめかみを押さえながら尋ねた。


「えーと、ロザリンドに手紙を出すように私の名を騙って偽の指令を出していた男がいた」


「はい」


 ユリアの質問に昭弥は淡々と、正直に答える。


「その男は帝国の諜報員の手先で書いた手紙、昭弥の様子や王国鉄道の情報が書いてある手紙は帝国に渡っていた」


「はい」


「それを知っていて昭弥は帝国に情報を流した」


「はい」


「何でよ!」


 激昂してユリアは昭弥を問い詰めた。


「昭弥! あなたは情報がどれだけ重要か理解しているの! 情報の優劣で兵力の劣勢さえ覆すことさえ可能なのよ!」


「陛下、落ち着いて下さい」


「うぐっ」


 エリザベスに促されてユリアは一旦、落ち着きを取り戻した。


「どうしてそのような事をしたのですか?」


 だが、エリザベスは昭弥への疑惑の目を向けていた。ユリアを抑えたのは話しを聞くためであり、追求する気持ちはユリアに劣っていなかった。

 義妹若しくは義姉の彼女の問いかけに昭弥は、落ち着いて答えた。


「簡単に言えば、帝国鉄道により充実して貰いたかったんです」


「どうして!」


 ユリアが起こるのをエリザベスが宥めつつ、昭弥に話すよう促す。


「帝国鉄道は余りに運用や設備などが稚拙なのです。それも王国に被害が出るくらいに」


 実際、帝国鉄道のレベルは酷い物だった。レールが折れるわ、列車は脱線するわ、ダイヤはメチャクチャだわ、レールと車両があるだけの存在だった。

 王国鉄道も輪を掛けて酷かったが、昭弥のお陰で大発展した。

 だが、帝国鉄道はそのままだった。


「そこで色々とレールや車両や器械を売却して支援を行っていました」


「それも最近はルテティア産は使わないとか言って、別の会社から購入するようになってきたじゃない」


「まあ、それは別に宜しいんですが」


「いいの!」


「ええ、重要なのは帝国鉄道が、まともになって王国に広がることですから」


「どうしてそんなこと許すの」


「二つあります。一つは帝国法により、王国がそれを阻む事が出来ないからです」


「むっ」


 昭弥の言っていることにユリアは黙り込んだ。確かに、昭弥の言うとおり宗主国である帝国の法律に従えば帝国鉄道の建設を王国に拒絶する権利など無い。


「ならば敷いて貰った方が良いでしょう」


「でも情報を渡すなんて」


「良い事の二つ目は王国が豊かになるからです」


「どうして、帝国鉄道のせいで王国はメチャクチャになりかけたのよ」


 かつて王都に帝国鉄道が延びたことで、大量に帝国本土から安い製品が入って来て、王国の産業が崩壊しそうになった。

 昭弥が王国鉄道を改良してくれなかったら、王国は崩壊していたかもしれない。


「なのにどうして帝国鉄道が豊かにしてくれるの」


「それは、帝国鉄道の輸送力が低かったからです。帝国本土からの荷物を運ぶので手一杯だったからです。ですが今は、王国の荷物を運ばなくてはなりません」


「どうして?」


「セント・ベルナルドの容量が不足しています。王国中に広がった帝国鉄道ですが、帝国と王国を結ぶ列車を増やそうにも、セント・ベルナルドが狭すぎて無理です。ですが広げた路線を維持しようとなると王国内で運転する必要が出てきます」


「けど帝国が持って行くんでしょう」


「しかし、王国の民に寄り添わなくてはなりません」


「どうして?」


 ユリアには解らなかった。帝国が作った鉄道なのにどうして王国の国民に寄り添わなくてはならないのか。これまでの所行を考えるととても信じられなかった。


「一寸、考えて見ましょう。例えば王都に電車が出来ました。非常に便利です。で利用するのは誰でしょう」


「? 王都の民でしょう?」


「その通りです。では、オスティアの民は利用しますか? 帝都の民は利用しますか? それも日常的に」


「それは無いでしょう。旅や商用で王都に訪れるならともかく、毎日王都の電車を利用することなんて出来やしないわ」


「それです。鉄道は沿線の人間が利用する物です。帝国鉄道も同じ事です。王国内に作ったからには王国の人間に利用して貰わなければ収入が増えません。そのため、王国民のためにひいては王国の為に運用する必要があります」


 大手私鉄の多くが沿線開発に力を入れる理由の一つに沿線人口の増加がある人口が増えることで鉄道の利用者を増やしている。各地の地方にあった鉄道も元は、林業の開発だったり鉱山の開発の為に敷設された物であり始発点と終点であっても沿線の為に作られた。

 それに利用者は近くの鉄道を利用するものだ、幾ら運賃が安くても歩いて一時間も掛かる駅まで行くより高くても近い鉄道を使う。千葉の余りに高すぎる鉄道は別問題だが。


「本当なの?」


「ええ、これについては王立銀行総裁のほうが詳しいでしょう」


 そう言ってこの場にいたシャイロックに説明を求めた。


「昭弥卿の言っていることは事実です。帝国鉄道沿線の経済活動が活発化しており、かなりの税収増加が期待できます」


「どうして」


「単純に取引量が増えたのです。王国鉄道より増加の割合は低いですが、増えているのは確かです」


 ユリアはシャイロックの言葉を噛みしめるように反芻した。


「……つまり、帝国は王国の為に鉄道をドンドン延ばしてくれている」


「はい」


 ユリアの問いに昭弥は正直に答えた。


「そしてお陰で王国は豊かになり始めている」


「はい」


「それも帝国の力とお金で、王国は一銭も払うことなく寧ろ金を落として貰っている」


「はい」


 昭弥の答えを聞いてユリアは次の瞬間、大爆笑した。


「あははははっ、何よそれ。いい気味じゃ無い。自分たちのお金で私たちの為に鉄道を敷いてくれるなんて。感謝状でも送って上げたいわ」


 その場にいた一同は女王の姿に驚いた。

 何回か見たことのあるエリザベスや昭弥は驚いてはいなかったが、女王が大笑いする姿を見て固まった。


「うっ」


 その姿を見られていることに気が付いたユリアは固まり、咳払いをしてから話しを再開した。


「コホン、つまりそのために帝国鉄道へ情報を流して帝国鉄道の経営や運営を改善したと」


「はい」


「確かに王国は豊かになりますが、帝国鉄道に、ひいては帝国に乗っ取られるというのことになるのでは?」


 実際、地域唯一の大量輸送機関という事を利用して不当に運賃をつり上げて暴利を貪るという例は、世界各地にあった。

 単一の輸送機関というのは、独占企業となり好き勝手に料金をつり上げることが出来る。


「しかし競合相手として我々、王国鉄道がおりますので不当に運賃を上げることは出来ないでしょう」


「では王国鉄道は厳しい戦いを強いられるのでは」


「あの程度の鉄道に負けると思いますか」


 昭弥はユリアの言葉に真顔で応えた。


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