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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部第四章 サービス戦争
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ユリアとエリザベスの追跡

 昭弥の元に派遣されたメイドであるロザリンド。

 彼女は日々、昭弥に仕えながら、その行状を女王であるユリアに報告する任務がある。

 その報告は直に会っての直接報告。それだけ彼女の任務が重要である事を物語っている。

 だが、彼女は命令には無い手紙による報告を行っていたと報告した。


「あの女王陛下から手紙で報告するようにとの命令書が来たのですが……」


「いつ?」


「派遣されて直ぐです」


「私は出した覚えは無いわ。エリザベス、あなたはどう?」


 側に仕えているエリザベスに尋ねる。ユリアに代わって命令書や手紙などを代筆することがあるのだ。


「いえ、陛下に言われない限り、書くことはございません」


「でも来たのは確かです」


「その命令書は?」


「読了後、焼却処分せよと書いてありましたので」


「燃やしたのね」


 完全消去して証拠を消滅させるとは犯人は、中々やる。


「一体どんな手紙の内容を書いていましたか?」


「その日の昭弥様の行動と、発言です。陛下に伝えている内容と同じです」


「いつからどれくらいの頻度で?」


「昭弥様の元に行って二日後に、ほぼ毎日です」


 かなり長期にわたって情報が流れていると言うことか。

 エリザベスとユリアは、冷や汗が流れた。


「誰が何処に流したか、確認する必要があるわね」




 翌日、いつも通りロザリンドは鉄道会社本社に行き、昭弥のお世話を行うと共に一日中監視し、誰とどんな風に過ごしたかをつぶさに見て記憶する。そして、三時前に報告の手紙を書くと、外に出て行く。

 昭弥の計らいで、三時前に休憩となり、近くのケーキ屋さんか喫茶店に行ってお菓子を食べるのがロザリンドの日課だった。

 その際、手紙を王城から来たという使いに渡すことも行っていた。

 この日もロザリンドは、いつも通りに手紙を持って喫茶店に向かった。

 だが、今日持っているのは予めユリアとエリザベスがロザリンドと話し合って、書き記した偽の手紙だった。

 主に昭弥の事とか、会社の業務内容をぼかして書いてある。

 それを手にしてロザリンドはいつもの喫茶店に入っていった。


「こんにちはなのです」


「やあ、ロザリンドさん」


 店のオーナーがロザリンドを迎える。


「今日は新作のケーキがありますよ」


「本当なのですか。わーい」


 このところ、遠隔地の商品の多くが王都にもたらされるため、日々新製品が登場する。


「今日は、アクスムのカカオという植物から作ったチョコレートケーキだ。いつものケーキにチョコレートを垂らしてあるんだ。少し苦いけど甘いよ」


「わー、たのしみなのです」


「そうそう、いつもの人が待っているよ」


「は、はいなのです」


 そう言ってロザリンドは、いつものケーキと紅茶のセットを貰うと若い男性の座る席に向かった。


「お、お待たせしましたのですう」


「いえいえ、今来たところです。少し声が硬いようですが」


「だ、大丈夫なのです。平気なのです」


「激務ですからね。甘い物でも食べて元気になって下さい。それと陛下へのお手紙の方は」


「は、はい。ここにあるのです」


 そう言ってロザリンドは、手紙を取り出して男に渡した。


「ありがとうございます。昭弥様やロザリンドさんの手を煩わせないようにこうして使いとなっているのですが、余計な負担になっているようですが」


「だ、大丈夫なのです。外に出てケーキを食べられるので……」


「そう言っていただけると助かります。では、ケーキをお楽しみに。あ、支払いは済ませてあります。ごゆっくり」


 それだけ言うと手紙を受け取った男は喫茶店を出て行った。

 その直後ケーキ屋の入り口近くに居たドレス姿の女性二人が後を追うように出て行く。


「ロザリンドの方は大丈夫ですか」


「このまま、本社に帰るよう言ってあります」


 追いかけたのは変装したユリアとエリザベスだった。

 昭弥の様子を監視する為に送り込んだロザリンドが、スパイ行為に荷担させられ、王国鉄道の情報を抜かれた可能性が高い。

 そんなのは絶対に許さない。

 自ら鉄槌を下さなければ。

 案の定、男は歩いて行くが、王城とは別の方向に向かっている。どうも、駅に付属する商店街の中、居酒屋やパブが多くひしめき合う区画に入り始めた。

 早じまいした職人や作業員達、夜の営業に備えて食材の仕入れや飲み物の補充を行っており、通りはカオス状態となっている。

 そのため、男から離れないようにするだけで二人は精一杯で、半ば強引に通ろうとする。


「うわっ」


「きゃっ」


 そのためユリアが店への食材を一輪車で運ぶ丁稚にぶつかってしまった。


「気を付けて下さいよ」


 落ちた箱を回収しながら丁稚は二人に文句を言う。


「ご、ごめんなさい」


 その間にも男は離れて行き、追いつけるかと二人は気が気では無い。

 男が曲がり角を曲がるのを見て二人は決意して追いかけることにした。


「これで許して」


 そう言って金貨一枚を丁稚に握らせて追いかける。

 曲がり角をまがったとき、男の後ろ姿を確認してホッとした二人は追跡を再開した。そして入り組む路地の奥へ追跡をして行き、人気の無い場所に入り込んで見失う。


「何処行ったのかしら?」


 二人が男の姿を探しているとき、突然エリザベスが背後から伸びてきた手に引っ張られて物陰に引きずり込まれた。


「エリザベス!」


 引きずり込まれたエリザベスを追ってユリアが剣を引き抜きながら突入する。


「動くな!」


 エリザベスの首元にナイフが突きつけられているのを見てユリアは止まった。

 下手に動けばエリザベスが傷つく。犯人を消し炭にするのは、簡単だがエリザベスも怪我を負ってしまう。

 そうして、膠着状態になったとき背後から、意外な人物が現れた。

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