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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第三章 車両戦争
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第三章外伝 記憶読み取り装置2

「そこまでです!」


 入って来たのは昭弥の獣人秘書達だった。


「ご主人様への乱暴狼藉は許しません。直ちに解放しなさい」


「でないと痛い目に遭いますよ」


 フィーネとティナが先頭を切って啖呵を切る。

 いくら魔力が豊富でも、無詠唱では威力が落ちる。詠唱すればその隙に攻撃される。まして、この人数では取り押さえられてしまう。

 しかも獣人は人間より身体能力が高い。


「あら、見上げた忠誠心ね」


 しかし、ジャネットは悠然としていた。


「解放して上げても良いわよ」


「なら……」


「でも、本当に良いの」


「どういう意味だ!」


 激昂する彼女達にジャネットは小声で話しかけた。そのため、昭弥には聞こえなかった。

 話し終えると、彼女たちの目の色が変わった。

 そのまま、無言で昭弥に近づくと、身体をすり寄せてきた。


「ご主人様、ジャネット様の実験にご協力下さい」


「大丈夫ですよ」


「これからのためにご協力を」


「って何でジャネットに協力するの!」


 先ほどの態度とは打って変わって、ジャネットに協力する秘書達。

 魔法にでもかけられたのか、何というかどす黒い邪悪な思念が瞳に宿っている。何かを吹き込まれたのか。


「頼む助けて!」


「大丈夫ですよ」


「すぐに良くなりますから」


「ジャネット様、何か必要なことは」


 助けるどころか、何故か積極的に協力しようとしている。一体どんな魔法を使ったんだ。


「精神的に無防備になると記憶が取り出しやすいから、色々刺激してみて」


「具体的には?」


「ボディタッチ」


「喜んで」


「やめて!」


 だが、昭弥が止めるのも聞かず、彼女たちは次々と接触して行く。

 次々と身体を押しつけ、昭弥の身体を刺激して行く。その度に若いエネルギーがほとばしり、昭弥の理性が揺さぶられ、頭が真っ白になる。


「どうですか」


「お、吸い出しやすくなった。もっとやって」


「はーい」


「誰か助けて!」


 昭弥が天に向かって、叫び助けを求めた。

 願いが通じたのか、ドアが吹き飛ばされ新たな人物が入って来た。


「何をしているのです!」


 入って来たのはユリアだった。

 昭弥が王城内で消えたと聞いて自ら捜索していたのだ。

 そして地下からの悲鳴を聞きつけて駆けつけてきたのだ。


「ああ、ユリアさん、助けて」


 絶望的な状況の中、やって来た救いの手に昭弥は感謝した。心なしか、ユリアが輝いて見える。流石勇者の血を引くだけのことはある。

 頼りない女王だと自嘲しているが、彼女は確かに人々を助けてくれる勇者だ。

 昭弥は彼女が勇者であることに感謝した。

 だが、次の瞬間、ユリアは青筋を立てて、昭弥を睨み付ける。


「ひっ」


 あまりの剣幕に、まるで魔王を睨むかのようで、昭弥は少しチビってしまった。

 そんな風に怒りながらユリアは昭弥を詰問した。


「何をしているのですか……」


「何って……誘拐されて捕まっているのですが」


「それの何処が!」


「何処がって……」


 いきなり捕まってこの部屋に監禁され拘束されているのが、これまで昭弥の辿った経緯だ。

 だが、今の状況はどうだ。

 部屋の中で、拘束されて、複数の女性に身体をすり寄せられて喜んでいるようにしか、見えない。

 単純にこの場を見ただけでは変態プレイをしているだけだ。


「……心配してきてみれば、そ、そんな、破廉恥なことを」


「違う!」


 思いっきり否定した。

 そんな性癖でもないし、嬉しくも無い。誤解が残ったまま殺されるのは厭、そもそも殺されるのが厭なので助命を懇願した。


「問答無用!」


 だが、昭弥の願いをユリアは聞き入れなかった。

 大剣を頭上に振りかぶって大技を繰り出そうとしている。

 一撃で全てを滅ぼすために。


「お待ち下さい陛下」


 だが、それを止めたのは、ジャネットだった。

 彼女はユリアの前に出て説得を始めた。


「これは故あってのことです」


「ジャネット、あなたなのね。何でこんなことをしたの」


「国と魔法の発展の為に」


「魔法の発展の為でしょう! どうして昭弥をあんなことにするの」


「は、ご説明いたしましょう」


 そしてジャネットはユリアに小声で話した。

 説明が終わった時、ユリアの表情と目つきが変わった。

 ユリアの瞳には秘書達と同じようにどす黒い邪悪な思念が宿っていた。

 ユリアはそのまま昭弥に近づくと、身体に跨がり顔を近づけて甘い声で囁いた。


「大丈夫よ昭弥。これは素晴らしい実験なのよ」


「なんでジャネットに付いたんですか!」


 思わぬ豹変に昭弥は再び狼狽し叫ぶ。


「呪いでもかけられたんですか! 勇者の力で防御できないんですか! 勇者が悪に屈して良いんですか」


「酷い言われようだな」


 ジャネットは呟いたが、直ぐに装置の操作に戻り追求しなかった。

 実験は順調に進んでいるのだから、悪口など取るに足らないことだ。

 しかも、この上ない協力者も現れたのだから文句など無い。

 彼女たちのお陰で記憶が吸い出しやすくなり、万々歳だ。

 ちなみにジャネットは彼女たちに魔法も呪いもかけていない。

 ただ一言言っただけだ。


 昭弥の全ての記憶を吸い出せば、誰に好意を持っているか分かる。それどころか、趣味嗜好が分かり、好意を得やすくなる。協力してくれれば記憶の一部を提供する。


 それで彼女たちは、協力しているのだ。

 昭弥の好みを知り、好意を得るために。そのために、ジャネットに協力する事にしたのだ。

 彼女たちの協力と強力な接触のために昭弥の頭の中の情報がドンドン吸い出されて、記憶結晶に蓄積され行く。


「あ、今のプレイ。快感だったみたいですよ。もう少しやってあげて下さい」


「はーい」


「ぐはっ」


 時折煽るのも忘れない。

 暫く吸い出しは順調に進んでいたが、やがて吸い出せなくなってきた。


「強固に思い出そうとしない部分がありますね」


「もっと刺激しましょうか」


「やめて!」


 昭弥の叫びも虚しく、

 彼女たちは接触をやめない。だが、それでも昭弥は思い出そうとしない。


「あー、これは結構多いんですよね。強固に防御する記憶の奥。重要な秘密とか持っていると頑として思い出そうとしない部分があるんです」


 何人もの被験者を相手にしてきたジャネットが説明する。


「無理にやるのはどうかと」


 大人しいティナが穏健な意見を言うが


「好みの嗜好とか好きな事を隠していることが多いのよね、こういう部分に」


「どうすれば見られるの良いの?」


 直ぐに撤回して思い出させようとする。


「一寸魔法圧力かけて強引にこじ開けますか」


「や、やめろ!」


 強く昭弥が止めようとしたが、ジャネットは強引に装置の圧力を高めてこじ開けた。


「あああああああああ」


 断末魔の悲鳴を上げた直後、昭弥から前進の力が抜けてガタガタと震えだした。


「昭弥?」


 様子がおかしいことにユリアが気が付いて話しかけるが、昭弥はの瞳は焦点が合わず、瞳孔も収縮したままだ。


「昭弥!」


「あああ」


 声を掛けられたが返事が無い。それどころか、拘束を解こうともがいている。

 あまりの異常事態に昭弥の身を案じたユリアは彼の拘束を力任せに引き千切り、解放した。


「うわあああ」


 拘束が外れると、昭弥は装置から降りて部屋の片隅に縮こまって震えている。


「どういう事……」


「ああ、やっぱりこうなったか」


 ジャネットはやっぱりな、という表情で答えた。


「……どういう事です?」


「強固な記憶、奥深い記憶を引き出すとこうなることがあったんですよ。どうも思い出したくない記憶みたいで。取り出すと発狂したり、こんな風に怯えてしまうんですよね。中には、自殺した奴も。まあ、目的である記憶を取り出せるので良いんですけ、どっ」


 言い終える前にジャネットはユリアの鉄拳を喰らい壁に叩き付けられ、ボロ雑巾となった。続いて秘書達が次々と暴力をふるっていった。


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