第三章外伝 記憶読み取り装置1
お待たせしました、本日二作目を投稿します。
明日は9000PVオーバーを記念して、連続投稿を行います。
早朝から行いますが、どうかお付き合いの程を。
投稿内容は三章の外伝が主で、その後、新章に移ります。
お楽しみに。
昭弥は、重要人物である。
ルテティア王国に突然現れ新技術で鉄道を国中に建設。国力をあっという間に数倍に跳躍させた偉人、生ける伝説となっていた。
出自は東方の扶桑という事になっているが、事実は異世界から召還した鉄オタ高校生であり、頭の中には異世界の技術や知識が詰まっている。
そのため、狙われて、誘拐されても仕方が無い。
「何してくれるんですかジャネットさん」
誘拐犯に向かって昭弥は尋ねた。
「一寸協力して貰おうと思って」
「誘拐して監禁した上、拘束してですか」
変な椅子に拘束されながらジト目で尋ねた。
誘拐し拘束したのは、首席宮廷魔術師のジャネット師。
自称永遠の一九才で、その類い希なる魔力と魔法に関する知識から、五代前の国王より半世紀以上、首席宮廷魔術師を務めている。
欠点は、膨大な魔力にものを言わせて実験するため、暴走爆発事故が多くよく長期入院する。また魔法の発展のために他を顧みず、巻き込む事が多い。
昭弥がこの世界に来たのも彼女の魔法実験の暴走によるものだ。
この行動と経歴でどんだけ危険な人物か分かるだろう。
「しかし、無防備ね。仮にも公爵で大臣で社長なんだから、もう少し警戒した方が良いわよ」
「王城の中で誘拐されるとは思いませんでしたよ」
一応、誘拐されて経験があるため、以後警護を増やすなどして警備を固めていた。
だが、絶対安全が保証されている王城で誘拐されるとは思わなかった。
第一武装した護衛を連れていたら、反乱容疑で捕らえられてしまう。
「一体何をする気ですか」
「いや、このところ研究が進まなくてね」
全部失敗していたらね、と口に出そうと思ったが、黙った。
「前は色々、アイディアが出て即実行していたんだけど、これぞというものが出てこなくなったんだよ」
それは良かった、と昭弥は思った。これで暴走に巻き込まれることはない。
「それでどうして私が拘束されているのです」
「君、異世界の出身だよね」
「ええ、あなたに連れてこられたので」
「だから異世界の有用な知識を持っている。その証拠に鉄道を国中に敷設して、国を栄えさせたよね」
「運良く」
「謙遜しないで、本当に大きい功績なんだから」
「それが何です?」
「けど、思ったことは無い? もっと上手く使えないかって」
「うっ」
ジャネットの指摘は正しかった。確かに昭弥は豊富な知識を持っている。だが、その知識を十全に生かしているか、と常に自問自答していた。もっと他に良い手段があったのではないか、他に手段があり、そちらの方がより発展したのでは無いか。
鉄道に限らず日常生活でもそうだが、この方法で本当に良いのか、不安になることは誰にでもある。だが、時間が限られているため、その時点で最善最良と思われる手段を取らざるを得ない。後日、もっと良い手段が見つかって後悔することになろうとも。
「そこでこのジャネット様が手伝って上げようと」
「何をする気だ」
「あなたの知識と私の魔法の知識を融合させて新しい魔法を作り出し、活用しましょう」
「ご免被る」
昭弥は即答した。
確かに、魔法と科学が融合したら凄い事になると思う。この世界は昭弥のいた世界より科学と技術が遅れているため、どうしても解決できないことが多い。だが、そこに魔法を補佐や調整などで使えることが出来れば、多くが解決できるだろう。
だが、昭弥は断った。
このジャネットに知識を渡したら、どんな破滅的な魔法実験を行うか分かったものじゃないからだ。
「まあ、予想していたんだけどね」
そう言うと、ジャネットは昭弥の後ろに回り込み、兜のような物を被せた。
「……なんですか」
「これは、頭の中の記憶を読み取る装置だよ」
「研究中じゃ」
確か前、マイヤーさんがユリアさんに殺された反逆者達から情報を得るための研究をしていると聞いていたが、中断しているはずじゃ。
「まあ、死体から抜き出すのは、天才である私でも難しくてね。あんまし進んでいないんだ」
「なら」
「けど、生きている人間からなら、この装置で吸い出せるようになったわ」
「作らないで! ってこれ動くんですか」
「既に十数人を使って実験済み。今のところ記憶の四割だけど、記憶違いとかあって低いけど、実験前に記憶させたもの限定なら、九割越えるわ」
とんでもない物を作ってくれた、と昭弥は恨みがましく思った。
「爆発しないでしょうね」
「初期に一回だけよ、ここ最近十回ほどは大丈夫」
「不安だ。副作用は」
昭弥の問いにジャネットは目を逸らした。
「あるんですね」
「大丈夫よ。命に別状は無いから」
「他は危険と!」
「さあ、小さな事は忘れて国の発展の為に、魔法の発展の為に、やりましょう」
「絶対、後半の為ですよね! やめて!」
大声で叫ぶがジャネットはやめない。
だが、突如扉が開かれ、一団が入って来た。




