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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第三章 車両戦争
184/763

基本型

本日はありがとうございます。

明日からはまた18時台に一本投稿する予定です。


3/17 誤字修正

 それは、高速線を建設していたある日の事だった。

 昭弥はいつも通り、工事現場を視察して問題が無いかどうか見ていた。

 食料は十分か、足りなければ運んでくるし、娯楽施設が無ければサルーン車、バーが入った車両を送り、作業員達をねぎらった。


「いつも、作業員に気を遣っていますね」


 お供をしていたセバスチャンが、昭弥に尋ねた。


「彼らが実際に作ってくれるからね。彼らがいないと作ることが出来ないよ」


 働くのは下、上は下が働きやすくするのが使命。

 それが昭弥の組織哲学であり、命じる者の使命だと考えていた。

 工事現場に行くと、相変わらず音楽に合わせて巨人族の人達が思い岩を背負いながらタップダンスを刻んでいた。彼らのお陰で盛り土が固まるのだが、何度見てもシュールだ。

 巨人族は他にも、機材の輸送、盛り土の運搬などを行ってくれている。

 何しろ大きいと貨車ごと持ち上げて土を捨ててくれるので、効率が凄く良いのだ。

 そして昭弥は気が付いた。


「そういえば彼らはどこからどうやって来たんだ?」


 この近くに巨人族の居住区はない。

 巨人族の居住地の多くはアルプスの麓や、北方の森だ。


「え? 歩いてですけど」


 セバスチャンが何を言っているんだという雰囲気で答えた。


「鉄道を使っていないのか?」


「この巨体が入ると思いますか?」


 当たり前の事を言われて昭弥は衝撃を受けた。

 鉄道の多くは人間用の馬車を元に改造して作られている。

 つまり、車両は人間に合わせて作られており、巨人を乗せることを考慮していない。

 そして、昭弥も現代日本に巨人がいなかったこともあって、人間サイズを想定して車両を作っていた。


「なんてことを……」


 昭弥は頭を抱えた。

 いつもお世話になっている巨人族の皆さんに使って貰えない。

 これは不義では無いか。


「まて、巨人族だけじゃ無いぞ」


 電気が出来るまで灯りとなってくれた妖精族や身長が低いドワーフ族も利用して居る。

 彼らは小さくて人間用だと使いにくいのでは無いか。


「直ぐに戻るぞ!」


 昭弥はそう宣言すると鉄道会社本社に戻った。




「巨人族用の車両を設計するんですか?」


「そうだ」


 昭弥の提案に、取締役が驚いた。


「いや、そんなことより、帝国鉄道対策を考えないと。連中、路線を伸ばし、車両を増やしてきていてこちらのシェア、客や貨物を奪いつつあるんやけど」


 恐る恐るサラが反対意見を述べる。一度火が付いて突進する昭弥を止める事は不可能に近い。何かしら材料が必要なのだが、今放った、旅客と貨物の鈍化という材料は不発だった。


「そんな雑事はほっておいて」


「雑事って……空の貨車がチラホラ出始めて居るんやけど」


「つまり、線路に余裕が出始めて、新しい列車を走らせる余裕が出てきたと言うことだろう」


「まあ、そうやけど」


「だから巨人族の皆さんに乗って貰える巨大車両を作る。そして、ドワーフさんや妖精用の車両も作ろう」


「手間が掛かるな」


「大丈夫、考えはある!」


 昭弥にそこまで宣言されると、取締役達は誰も逆らうことは出来ず、昭弥の提案はそのまま通ることになった。




 巨人族は簡単に言えば人間より大きな人達の事で、身長が人間の倍くらい、三メートルを越す人々の事を言う。

 多くの氏族がいて、平均身長はそれぞれ違い、中には一八メートルに届くという人もいる。

 一部は王国の戦争に敗れ隷属しているが、多くは盟約関係、事実上の属国となって生き延びている。

 そのため、下に見られる事が多い。

 肉体的には大きく、身体能力も高いが、器用さという点では人間に劣っている上、個体数も少なく、特に銃器を持ち始めた人間には敵わず、負けることが多い。

 そのため使役される事が多かった。

 昭弥は、それを改めて、彼らに作業員としての給料を支給して働きに応じてボーナスを出すようにしていた。

 そのため、彼らとの関係は良好で建設現場や貨物駅での荷下ろしに活躍してくれているが、そんな彼らが鉄道を利用できないのは残念だった。


「でも、そんな大きな車両あるんですか?」


「あるね」


 昭弥が言ったのは、高速線用に作り上げた、スーパーライナー規格の車両だ。

 アメリカの全二階建ての客車で、車両限界の高さが四.九メートルという、新幹線より更に五〇センチ高い化け物のような車両だ。セガー〇主演の暴走特〇で主人公が乗った車両と言えばおわかりになるだろう。


「この高規格を改造して、作り上げる」


「まあ、出来そうですけど」


 時間が掛かるなとセバスチャンは思った。

 何しろ、車両の設計には安全などを考えて設計したり、試作して実験する必要があり、シングな他は時間が掛かる。投入には一年くらい必要だろう。

 だが、セバスチャンの予想は大きく覆された。

 僅か三日で設計を完了し、翌日には試作開始、一週間で試作車両が完成し、試験を開始。二週間で、とりあえず使える車両にしてしまった。


「はやっ」


 あまりの速さにセバスチャンは驚いた。


「どうだセバスチャン。早いだろう」


「……というか手抜きじゃ無いでしょうね。安全なんですか? 床抜けませんか」


「そんな手抜きする訳無いだろう。安全だよ」


「どうしてこんなに早く作ることが出来るんですか?」


「簡単、はじめから改造することを前提に、車両を設計していたからね」


「え?」


「車両の設計で時間が掛かるのは、構造計算と耐久力の確認。つまり頑丈に出来ているかどうか調べる必要がある。それをいちいちやっていたら時間が掛かってしょうが無い。そこで、予め基本となる型を作っておいて、それを改造することを前提に作ったんだ」


「どういう事です?」


「頑丈な、がらんどうの家を作っておいて、内部のレイアウトを変更して作り上げるようにしてあるんだ。ば枠だけ作って、あとから壁や床を作って、更に内壁を加え客室の装飾や、椅子などの装備を取り付ける。あとから自由に内装を改造できるように予め考えてあるんだよ」

 基本の型を作っておき、必要な要求に合わせて内装を追加したり改良したりする事をレーディーメイドと呼ぶ。完全に一から設計して要求にフィットさせるオーダーメイドより、完成度は劣るが、時間とコストが削減されるため、近年の車輌製造では良く使われる。昭弥はその手を使っていた。

 何より、旧国鉄及びJR九州をはじめとするJRグループは改造車両が得意で、旧式の電車を改造して、ジョイフルトレインを作り出して運用することなど日常茶飯事だ。

 それを行いやすいように昭弥は予め設計してあったのだ。


「でも、早すぎませんか?」


「いきなり運用しようとは思わないよ。まずはこれで実験して上手く行くか見るんだ」




 結論から言って、昭弥の計画は一部成功し、失敗した。

 巨人族の多くは三メートルから四メートルの人達が多く、彼らに合わせて作った物は、左右に一列ずつの一階建て客車となり、好評となったが、それ以上の身長を持つ巨人族は、乗車不可能だった。

 無蓋貨車に寝転がって、エヴァンゲリオ〇のように運ぶ事がやっとであり、流石に旅客を行う事は無理だった。

 だが、巨人族からは車両を喜ばれたし、高速で移動する事が出来るようになって喜んでいる人達も多く鉄道会社に協力する巨人族が増えたのも事実だった。

 そして、このことが昭弥に更なる計画を決意させることになるが、それはまた後の話しだ。




 ドワーフなど背が少し小さめの種族に関しては、カシオペアのソロやシングルのような階段のある個室方式にして提供することにした。昭弥達には少し狭いがドワーフたちには丁度良かったので、無事に提供できた。

 一方、妖精の方は専用の区画を作ったが利用は殆ど無かった。調査で解ったことだが列車の隙間に勝手に忍び込み、無賃乗車を繰り返していることが判明。どう対応するか、隙間を塞ぐか、そもそも料金を取るべきかなどを決めるべく連日取締役と協議をしている。

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