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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第三章 車両戦争
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電気開発

 次に昭弥が訪れたのは電気研究所だ。

 ここも先の石油化学研究所同様、赤字を出している。

 石油化学研究所より赤字額が少ないのは、実験経費が少なくて済んでいるからだ。

 だが、成果を上げていないのは石油化学研究所と同じだった。


「成果はどうだい?」


「ダメです。どうしても弱い磁石しか出来ません」


 研究員であるトマスは申し訳なさそうに言った。


「やっぱり、電気が弱いか。電池だとろくに上げられないからな」


 最大のネックは発電機が作れないことだ。

 発電機は永久磁石とコイルを組み合わせ回転させることで電気を生み出す。電磁石で出来る発電機もあるが昭弥が詳しい構造を覚えていないため、製造を諦めていた。

 永久磁石を使って発電機を作りたいのだが、その永久磁石の磁力が弱くて、使い物にならなかった。

 永久磁石は事態となる金属、鉄やコバルト、ニッケルなどを元にした金属の棒にコイルを巻き付けて強い電気を掛けると出来る。

 これが発電機の元になるのだが、強い電気が出来ないため強い永久磁石が出来ない。

 堂々巡りが続いて居る。

 小型の電池を繋いで作ろうにも、電流が弱くて意味が無い。

 何とか使用と錬金術師達が行っているが、成功していない。


「何とか強力な電流があれば良いのですが」


「そのためには強力な磁石を持った発電機が必要……だめだループに入っている」


 トマスと昭弥は揃って溜息を付いた。


「どうしたものかな」


 昭弥としては何としても作り出したいと思っているのだが、強力な永久磁石を作ることが出来ないのでは仕方が無い。

 稀少金属、レアアースを使えれば良いのだが、何処にあるか分からない。


「そんなに根を詰めると良くないわよ」


 と言って後ろから抱き寄せてきたのは狐人族の秘書フィーネだ。

 事あるごとに後ろから抱きしめてくるので、少々ウンザリしている。ティーベとオーレリーが来てからは特にだ。何があったんだろう、と思う昭弥だ。


「ちょっと、何をしているんですか」


 そう言って抗議の声を上げたのは虎人族の秘書ティナだ。


「社長が迷惑しています!」


「そう? 喜んでいると思うけど」


 そのまま両手で自分の胸に抱き寄せる。昭弥は声を上げようとするとふさふさの尻尾で口を塞いだ上に、更に絡めてくる。

 その動きを見たティナは怒りを更に上げる。


「止めなさい!」


 そう言って突然毛を逆立てさせたと思うと、周囲に稲光を放ちはじめた。

 そして両手の中に小さな黄色い弾を作り出すとフィーネに向かって放った。

 フィーネは昭弥を抱いたまま飛び上がって避ける。黄色い光球はそのまま飛んで行き机の上の実験装置にあたった。

 激しい稲光を放って吹き飛んだ。


「危ないじゃ無いの!」


 フィーネが叫んでティナを叱った。


「破廉恥ですよ」


「社長に当たったらどうするの」


「猥褻な物を当てているあなたに言われたくはありません」


 そのまま言い争いを続けようとしたとき


「ああああああああああああああっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ」


 昭弥が大声で叫んだ。

 二人がギョッとする中、昭弥は机の上の実験装置に飛びついた。

 そして、装置の中にあった鉄片を取り出して注視した。


「あ、あの昭弥」


 それを見たティナは恐る恐る言った。


「も、もしかして、壊しちゃった。なら、謝ります、できる限りの償いを」


「ティナアアアアアアアッ!」


「は、はい」


 突然振り返ってきた昭弥に思わずティナは背筋を伸ばした。強く叱責されると思ったからだ。


「ありがとう!」


 しかし、昭弥怒るどころか自らティナに抱きついて感謝の言葉を言った。


「あ、あの、どうして」


 突然両腕で抱きしめられてティナは混乱する中、昭弥に尋ねた。


「磁石だよ! 磁石! 永久磁石が出来たんだ!」


 そういって、鉄片にくっつくネジをさして言った。


「さっきの魔法、雷を飛ばす魔法」


「サ、サンダーですか? 私、虎人族の中でサンダータイガーという種族でサンダーを飛ばす能力があるんです」


「そうだったんだ……」


 そのため、まだ能力が不充分で雷を暴走させやすい子供や、その子達と接する親や教師役は、感電防止にゴムの服を着ていた。


「でもそのお陰で、磁石が出来た! これで発電機が出来る! 高い電力が生み出せてより強力な磁石も出来る! 電車も発電所も出来る!」


 前の世界で走っていた電車を動かすことが出来る。他にも様々な、物を開発することが出来る。

 だから、昭弥は喜んだ。


「やったよ! やったよ!」

 昭弥は再びティナを抱きしめ、彼女ごと抱えて飛び跳ねた。ティナは、突然の昭弥の力強い抱擁で嬉しさと恥ずかしさで混乱したまま、受け入れた。

 昭弥の腕が、臀部だとか胸部に触れていたが、何も言わずティナはされるがままだった。


「何か欲しいものはあるかい?」


 嬉しさのあまり、感謝のプレゼントを渡すつもりで、何を要求されても渡すつもりで昭弥はティナに尋ねた。


「き、キス」


「キスだね」


 そう言うとすぐさま昭弥はティナにキスをした。口を覆うような不器用なものだが確かに口と口は塞がった。


「これでいい?」


「し、した」


「あ、舌も入れるんだ」


 そう言うと再びキスして今度は口の中に舌を入れてナイフのようにティナの口中を切り刻んだ。


「これでいい?」


「し、下の口にも」


 と言ったところでフィーネがティナの後頭部を叩いて黙らせた。


「何をするんだ」


「一寸やり過ぎよ二人とも。昭弥落ち着きなさい」


「落ち着いてなんかいられないよ。兎に角、試作品を作成する!」


 と言って、直ぐに出来た永久磁石を使って発電機の開発を始めた。




 こうして作られた発電機は強力な電気を作ることに成功し、新たな永久磁石を作り、更に強力にすることに成功した。

 発電機は次々と生産され、電化に一役買うことになった。

 ちなみに、電気部門の飛躍に貢献したティナの功績をたたえて電気部門の優秀な研究に与えられる賞にティナの名前を入れたティナ記念賞が創設され、トロフィーとしてティナの全身像を模ったトロフィーが贈られることになった。

 流石にティナが恥ずかしがって、止めようかと思ったが、研究者達の強固な反対運動によって毎年継続されることになった。

 ただこのことに関して昭弥はティナに謝っていたのだが、どのような謝罪を行ったのかに関しては記録にない。




 更に、この一件はロザリンドによってユリアに報告され、昭弥の周囲に本物の雷が多数落ちたという、話しが伝わっている。


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